〈11〉準備-3
こんばんは
授業開始5分前を知らせる予鈴が鳴る。そして目の前を通り過ぎようとした倉庫がガタガタいっている。このまま見て見ぬ振りすれば授業に間に合う。しかし好奇心や怖いもの見たさの気持ちを優先すれば完全に遅刻ではあるがスッキリする。気持ち的に。
(開けるか、)
手動スライド式の古めかしい倉庫の扉に手をかける。さび付いているのと同時にどうやらコツがいるらしい。どこかが凹んだり突っ張ったりしていて一筋縄にはいかない。
渾身の力を振り絞って一気に開けることにしよう。中にヒロインとかいませんように。特にイケメンと一緒とかやめてください。その場合...
(悪役令嬢まっしぐらの可能性UP)
「よし、3.2.1.... 開いた!!」
ゲ...最悪な事態が今目の前で起こっております。私は見てません、いったん閉めて記憶から抹消しよう。で、教室に急がなくっちゃ!今ならまだ間に合うはず。
「シツレイシマシタ」
「よかった!って美麗、どこ行くんだよ!?」
「あっ、烏野さん。よかった~ありがとう!」
なんか後ろでごちゃごちゃ言っている人達がいそうですが私の空耳ですね!あー嫌なもの見た。まあ叶野も思春期だもんね。しかもヒロインは超可愛いし彼が人知れず思いを寄せていたと考えるのも難しくない。
(絶対、イベントだアレ...)
烏野美麗。忙しいし炎天下という最悪な状況で自分の人生に大きくかかわるかもしれない歴史の一片に直面いたしました。神様、ぜひとも私の記憶と彼らの記憶からこの出来事、私が鉢合わせたというところだけを抹消してください。
美麗は教室に向かう廊下を走りながら天に向かって合掌し、切実に願った。
「コラ、烏野!廊下は走るな」
そしてその姿を、ひょっこり教室から顔を出した浪岡先生に見つかり叱られた。確かに私が悪い...けど今の状況を鑑みれば泣きっ面に蜂としか言いようがない。
(もう嫌いー!!)
もともと苦手だった浪岡先生のことがさらに苦手になった美麗であった。
◇◆◇ー一方そのころ
「本当に最悪だ」
「何がですか?」
「すみませんが僕、行かないといけないので。もう足の傷大丈夫そうですね、一応あとで保健室でも寄ってください。では失礼します」
「っ、チョ」
倉庫を急ぎ足で出て校舎に向かう。道中、つかまれた右腕に残る感触を拭い去るように左手で箇所を払ってみる。パーソナルスペースがきっちりしている彼にとって無遠慮に触られたのも嫌だったが、最も最悪だったのは
(絶対誤解してる)
美麗に見られたことである。どう誤解を解くか頭を悩ませる思春期男子であった。
森羅君に何があったのか書けるといいな~。




