〈9〉準備
こんばんは。
ちょっと遅刻…スミマセン
「そろそろ体育祭の時期だね、烏野ちゃん?」
「あぁーそうですね長瀬会長。はい、これ明日の資料です。大丈夫そうであれば今日中に印刷します」
「ありがとう。烏野ちゃんは仕事丁寧だし早くて助かってるよ~じゅあ印刷よろしく」
「わかりました」
印刷機をパソコンとつなぎ、60部印刷する。待っている間は仕事はいったん休み。そして美麗は引き出しを開け、中にストックしてある焼き菓子を頬張った。
(あーやめたい)
さっき長瀬会長が言っていた通り体育祭が近いんだよ。でね、とにかく忙しい。
放課後だけ本道春翔の手伝いをすれば十分という話だったのでは!?勝手にそう思っていたら最近朝、昼、放課後、全部本道とセットで呼び出される。しかも全校放送で!!!!!
本当に生徒会頭おかしいって!なんで一個前の仕事終わりに次の予定を共有しないの?おかげでクラスのみんなからは最近変な目で見られるし...『なんで烏野さんが?』的な感じで。しかもさらに面倒くさいのがね、
「ただいま戻りました!」
「ただいまー。レイ、なにしてるの?」
「長瀬会長、器具の確認終わりました」
「うん。ありがとう森羅兄弟、冬斗」
静かだった生徒会室は一気に騒がしくなった。いつもポーカーフェイスの森羅叶野、いつも明るくて笑顔な森羅叉紗。そして本道冬斗がそれぞれの仕事を終えて帰ってきた。1人はしっかり会長に進捗報告、1人はリラックスした様子でソファーにダイビング。最後の一人は、
「ねえレイってば~」
「休憩中。ていうか体重かけないでよ重い。」
「レイの髪、いい匂いだね~」
私の髪の毛をさりげなく嗅ぐ変人。しかも机に置いているフィナンシェをさりげなく食べている。
(それ、私のなんですけど?)
「冬斗先輩、少し確認したいことがあるのでいいですか?」
「どうしたの叶野?」
ナイスタイミングで叶野君が冬斗に声をかけてくれたことで美麗は解放された。
(ありがとう)
ふと目が合った叶野に満面の笑みで口パクでお礼を言っておく。これで私の少ない休みが守られたぞ!!
「いただきま〜す」
「いいの食べてるな?」
(げ…)
俺のは?というように右手を当たり前のように出して来る本道春翔に思いっきり顰めっ面をお見舞いしながら渋々一つ差し出す。
「ありがとう、の一つでも言ったらどうですか?」
そう簡単に渡すものか!せめてお礼ぐらい言えお坊ちゃま!!
「サンキュ」
くそ〜!!ちょっとニコってするのやめてよ。一応イケメンだから庶民からすると不覚にもキュンと…
「あんま好きじゃないな、」
(あー殴りたい)
誰がキュンとするかクソ野郎!お前が欲しいって言ったんじゃんか。余計ストレス。
「セーンパイ!チョコいりますか?」
「いる!!やっぱり持つべきは優しい幼馴染だよね!!」
今にも爆発しそうな美麗の表情をみかねてか叉紗が、ピョコピョコと駆け寄ってきた。美麗は叉紗が差し出したチョコを彼の手ごと、両手で包んだ。
「手、冷たくない?外暑いのに…大丈夫?」
気温と体温の差に驚きながら美麗は叉紗の顔をのぞき込んだ。
(なんか顔、赤くない?)
「えっと…大丈夫?」
「…うん。恥ずかしいと言うかなんというか…」
「ご、ごめん!握るの強かったよね、痛かった?」
反省、反省。握力23の女が言うのもあれかもだけど、疲れすぎて加減できなかったかも。
微妙な空気感が二人のあいだで流れること5秒。そろそろ気まずくなってきた。
「美麗先輩、こっち来てもらっていいですか?」
「んー?今行く。ありがとう叉紗君」
叶野に呼ばれ「待ってました!」とばかりに、美麗はチョコを右手に席を立った。一応、再度お礼を笑顔で叉紗に伝える。
正直、面倒くさそうな仕事が増えそうな予感が拭えない。
(やるか、)
そう思いながらも叶野、冬斗、春翔、長瀬会長が集まる席へと60部のプリントを手に向かった。
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