〈5〉屋上の鍵
「おはよう春翔君!!」
「おはようございます星野さん」
教室に入って早々、ヒロインが頑張っているのが目に入った。
知ってるよ私!明るく見えて本当はヒロインちゃんの心は不安で埋め尽くされてるんだよね…それを表に見せない彼女、健気に能面男に話しかける姿。応援せずにはいられない!
(がんばれ綺羅ちゃん!)
美麗は入り口でクラスメートの登校の邪魔になっていた。
「昨日はありがとう。見送ってくれて!」
「いえ。昇降口までだったので大したことしてません。」
少し遅れてやって来た莉栗が後ろから覆い被さる様にして美麗の顔を覗き込んだ。最近ぐんぐん身長が伸びてきており今は美麗と頭一個分差がある状態である。周りから黄色い声が聞こえるのは気のせいだろう。
「レイ、中はいらないの?」
「あっゴメン」
莉栗に促され入った瞬間、本道春翔と目が合った。しかし依然として星野綺羅は春翔に話しかけている。
「それでもありがとう!そういえば私、桜がよく見える場所知ってるんだけど今度いっ――」
「おはようございます烏野さん」
「…ハイ?」
「昨日の件でお話があります。ついてきてください。」
「レイ、何かしたの?」
「ちょっとね、」
「早くしてください」
美麗は春翔に手を引かれ半ば引きずられるように今来たばかりの教室を後にした。美麗にとって初めての身内以外の男性と手をつなぐというイベントが不本意な形で発生したのだった。そして
(えっ)
連れていかれる中、一瞬見えた綺羅は美麗を睨んでいた。




