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夢喰い獏と陰陽師の末裔  作者: 真綾


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9話

誤字脱字がございましたら大変申し訳ございません。

 懐かしい匂いを嗅いで久々に夢を見た。

 幼いころに良く遊んでくれた少女の夢。


 本家に閉じ込められていたのに、どこからか屋敷に入り混んでいた少女。食事を運んできてくれる老婆に聞いたら変な顔をされた。特別な友人がご入用でしたら相談しますと。







 おじい様が亡くなって間もなく私は本家に引き取られた。引き取られたとはずなのに、暗い部屋に閉じ込められて部屋の外には出してもらえなかった。


「結萌様、本日のお食事をお持ちいたしました」


 着物姿の老母が時折連れてくる人。それを食べるよりもごはんが欲しかったのに、老母は私に人としての食事はあまり持ってきてくれなかった。


 怯えた人もいれば嬉しそうな人もいて、私の部屋で連れてこられた人は眠り、私が夢を食べる生活。美味しい夢じゃない。悪夢もあれば、夢と呼ぶには育っていない小さな願いのものもあった。


「ありがとう」


「これで悪夢を視なくなるわ」


 心が作り出している悪夢の人は私が食べたところできっとまた同じ夢を見る。伝えてあげた方がいいのか分からなかった。

 ただ、空が視たいと思っていたから。





「やっと見つけた」


太陽みたいな人が現れたのはそれからどれくらいの月日が経ってからか。狐を連れたその人は私のことを抱きかかえ上げ、優しく包み込んでくれた。


「迎えに来るのが遅くなってすまない。早くここからでよう」


 連れ出してくれた人の顔を覚えていない、優しい匂いがしたの。傍にいられるとうれしくなったのに、五楼と五楼の守護である朱千たちと暮らすようになった。

 助け出してくれた人とはそれきり会っていない。






「ねぇ遊びましょう」


 蔵の入り口は重く、老婆が入ってくるときにカチカチと音を立てるので、厳重に鍵をかけているのかもしれない。


 聞きなれない可愛い少女の声に私は惹きつけられる。

 空を視たくてもその青さが心をすり抜けていく。牢獄のような蔵に閉じ込められ、小さな窓がポツンと一つ。そこから見える外の景色。山を駆けずり回っていた頃に戻りたい。




 老婆が連れてくる人の夢を食べまくった。食べないで最初居たら連れてこられた人が怒られていた。『むやみに夢を食べてはいけないよ。その夢がその人の一部かもしれない。亡くなっていいものと、小さくても抱えていないといけないものとがあるんだよ』とおじい様が言っていた。大抵のものはそれほど重要ではないと思ってしまう。人が感情をもって考えて選択して生きている証を奪ってはいけないと。苦しくても無くてはならない感情かもしれない。


「ねぇ、遊びましょうよ」


 カチャリと音がして、扉が開く。久しぶりの外の景色が眩しく、私は目を細める。

 空色のワンピースを着ている女の子。二つ縛りが風に揺れている。


「貴方は誰」


「◇◇っていうの。私が遊んであげる」


「いい」


 人と距離を保っていた方がいいとおじい様が言っていたのを覚えている。悪食をさせられ、久しぶりのかすかな希望の香りに胸が高鳴る。きっと食べたらおいしいんだろうな。その子の心を支えるような暖かな夢。


「人が一人でいて寂しくない訳ないんだから。文句は言わない。ほら行くよ」


 敵意は感じない。純粋に私を遊びに誘っている。

 無理やり引っ張られるようにして走り出した。


 夕焼けの空を二人で視た。

 近くの河原で石投げをした。


 山で暮らしていた時に知らない遊びを沢山教えてくれた。女の子と遊びに行っているのに老婆は気が付いていないみたいだった。




 季節が二つくらい回ったくらい。春の花が枯れ、木々の色が朱く染まったころに、女の子はいつもと違うお別れの挨拶をしてきた。


「もうさよならしなきゃ」


「どうして」


 毎日のように遊びに来てくれていた◇◇。初めてできた友達。毎日のように遊んでくれていたはずなのに、名前を思い出せない。


「遠くにね、引っ越すことになったの」


「そうか」


 半分流れる異形の血は人ならざる者を自然とこの目に移すことがある。

 ◇◇が人でない血が流れているのは分かる。人の姿を取るほどの能力があるので上位の妖なのかな。フワフワと形が定まらないので、もしかしたら幽霊なのかもしれない。


「ずっと遠くに行っちゃうの」


 私の頭を撫でる◇◇。誰にも気が付かれずに屋敷に近づけ、私の場所にたどりつけた女の子は、私の事を心配している。


「夢は繋がっているのを知ってる」


 女の子の手が止まり明るい声のトーンから低くなる。

 私は夢が繋がっているのをどうして知っているのか聞こうと口を開こうとしたよりも先に女の子は私の継いだ名を初めて読んだ。


「大丈夫。結萌ちゃんなら」


 私は名をいつ伝えた?思い出せない。私は女の子と仲良くなったのは、どうして?


「思い残している夢があるんじゃないの」


 悪夢を食べることだけが私の出来ることじゃない。死んでしまった人の心残りという名の夢を食べることもできるし、力を貸すことも可能である自在に夢を操ることが出来るから久々に生まれた先祖返り。


『夢』に明確な形も細かな定義も何も存在していない。曖昧だからこそ、形を具現化したいと行動を取る。諦めきれずに心に残す人もいる。


「私がいつか叶えてあげられたら叶えるから」


「もう、お願いしてあるから大丈夫」


 初めて会った時よりも姿が段々と薄くなってきているのは時間が過ぎて来たから。


「せっかく仲良くなれたのに、ごめんね」


「遊んでくれてありがとう」


 同年代の子と遊んだことがあまり無かったので、私にはとても新鮮だった。


「わたしの夢は食べてもらえるのかな」


「食べられないわ」


 食べたら極上の味なのかもしれないけど率先して食べたいと思えなかった。


「食べてもらえないか」


 残念そうに◇◇はクルリと私に背を向ける。


「必要がないから。心の支えを無くしてしまうと希望がなくなっちゃうでしょう」


 陰陽師との盟約でいちばん大切にされているところ。夢があるだけで幸福感にもつながり、抱いていることが重要な忌がある。無くとも、流し歩むことがその人のためになることもあるのだから。


「一緒に遊べて楽しかった」


 ◇◇は私の顔を見ようとしていない。私に興味を無くしたみたい。


「いろんなこと教えてもらえた」


 一人遊びはしてきたけど誰かと遊ぶ、貴重な体験。私は◇◇に出会えなかったら誰かと遊ぶことが楽しいと知れなかった。


「もしまた会うことがあったら遊んでもらえる」


 私の問いに◇◇が少し考えるように空を仰ぐ。初めて会った時と同じように青く澄み切った空。この空の色以外の時も二人で手を繋いで走り回った、楽しい記憶。


「うん、遊ぼう」


 ふわりと風が吹いたと思ったら◇◇の姿はなかった。


ちなみに○○と◇◇は別の人物です。かき分けが下手で申し訳ありません。


誤字脱字がございましたら大変申し訳ございません。

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