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夢喰い獏と陰陽師の末裔  作者: 真綾


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6話

誤字脱字がございましたら大変申し訳ございません。

一話ごとの文字数に差があり読みにくいかもしれません!!

 朱千が消えて行った暗闇を数分間見つめてしまった。学生の間はできれば本格的な獏としての能力を使わないようにさえたかったのだが、そうもいかないようだ。本人が望まずとも、定めに飲み込まれていく。


「さて、たまには本業をしますか」


 家に帰らなくてもいいように、式神に情報を持たせている。俺は自分の後ろに向かって声をかける。


「亞緒」


「主はどういて朱千が居る時においらを呼ばない」


 そっぽを向きながら姿を現したのを感じ取る。


「お前がいると話がややこしくなるからな」


「そんなことない」


 式の中で護りと伝達を得意なものを結萌につけ、俺は攻撃を得意としている亞緒を共にしていた。二人はどこにいてもお互いを感じ取ることが出来るためとても役に立つ。


「主の護りをしていないと朱千に怒られるからな」


「俺の言うことよりも朱千のことの方が聞くんだな」


「そりゃ、伴侶の言い分は一番大切ですからね」


 嬉しそうにくっくっくと笑う声がする。俺が生まれるより何百年も前に二人は対になった。


「それはそうと、数年前の依頼の時が来たと思うのは気のせいかな」


「自分が好きな子を落とせないからってすねないでくださいよ」


 そう言いながらどこからか一本の巻物が宙に浮く。俺の契約書は依頼内容と名前とを書き記している。解決している要件には二重線で決してある。二十年位前に受けた依頼は時が来るまで放置しているはずだった。


「おいらが言う前に思い出すだなんて意外だったぜ」


「お前ら二人は主に対して物言いがなっていない」


「どれほどの時を一緒に過ごしてきたと思っている。遠慮も何もないだろうが」


 代々当主に使えてきているが、自分たちが認めた者のみである。力のない主に使える気はなく、ここ数百年はどの当主にも使えていなかった。俺の父親ですら認めなかったのに、なぜだか俺には使えてくれている。


 一族を守護してくれているので、頼りになる反面、怒らせてはいけない。俺がもし機嫌を悪くさせてしまったら、一族が滅ぶこともあり得る。年々力のない人間が生まれていく可能性が高くなってきていると言っていた。


「本業を疎かにしていたらまずいからね」


 小説家を本業にしたい今日この頃なのだが、口が裂けても言えない。


「このご時世あまりお前の力が役に立つのも視たくない」


 陰陽師として人を呪うこともしばしばある。科学が発展した今、昔ほど表立って恨まれごとをしていない。寧ろ占いの方が人気がある。


 俺は数十年前に父親が受けていた一族に来た依頼が気になりだした。


『陰陽師の勘は些細なものでもないがしろにしないで、気にしなさい』と父親に良く言われてた。


 依頼内容は、大切な人物が困ったときに助けて欲しいという願い。前払いで代金は頂いているため、時が満ちるのを待っていた。


 巻物にひょいと顔を近づける亜緒。『あぁ、あの時の』と呟くと俺の目をまっすぐ見つめる。


「主は人が悪い」


 当時を思い出しているのか、亜緒が俺の周りをクルクル回り始める。


「大切な人物を助けて欲しいと言ってきた子は今の主よりも年下だった」


「依頼を受けたのは親父だ。俺じゃない」


「当主になった時に、全部一度は目を通しているはず」


 常に傍にいる亜緒は知っている。引き継ぐのは当主としての名だけではなく、責務全てであると。父親にも言われていた。依頼を受ける瞬間を間違えてはいけない。一度きりだけの手助けの依頼などは慎重に請け負うことと。簡単に助けてしまっては、本当に助けなければならない時に、手を差し伸べられない、と。


「簡単に摘み取れることだったはずだった。」


「依頼主の願いを届けられるのは一度きりだった。摘み取った後に異なる不安が芽吹くこともある。根源を絶やすには一度大きく育てる必要もあるだろうに」


 依頼を保留にしていたのは俺ではなく父親。現役を引退したわけではないので、父親も本業をこなしている。父親はまだその時ではないと思っているのだろう。


「亜緒、対象人物の現在を至急調べてきてくれないか」


 警鐘がなっている。俺を主と定めた亜緒が俺の前にピタリと座る。


「対象人物が危険だった場合は?」


「命の危険が有るか無いかで、判断を任せる」


 朱千が結萌は悪夢に迷い込んだが、原因を知っていると言っていた。俺の記憶が正しければ、以前の依頼の人物と結萌との接点があったはずだ。


 絡み合わない運命だと思っていたことが、目の前で絡もうとしている気配がする。


「近しい人の悪夢を食べた獏の心を知っているか」


 歴代の結萌の名を継いできた子を知っているのか、亜緒が険しい顔をしている。


 俺の行動力の源はあの子の存在。めんどくさい当主の座に就いたのもあの子を守るため。守りたいと思いながらも、利用するようなことはしたくないのだが、俺が陰陽師で彼女が今代の夢喰いなら俺の願いは叶わないかもしれない。


「先祖返りの力を持っているんだ。結萌が望まなくても巻き込まれることはある」


 年相応の少女の生き方を覚えて欲しい。


 ただ、血を残すためにご先祖様が選んだ道に、唯々、偶然、呑まれてしまっただけだから。夢喰い獏、本家からの預かりもの。力が使いこなせるようになったら今のように俺がそばに居なくてもいい。自力で生きれる力を持ってほしい。


 亜緒が不敵に口の端を上げる。


「攫ってしまえばいい」


 好いている。感情の答えを俺は知らない。俺も人として生まれたが、力が大きすぎてどこかズレている。


「俺の片思いだ」


 人として壊れずに居られただけでも奇跡に近い。本家に幽閉されていたと聞いたときは驚いたが、結萌は回復した。出会った時も腐りきっていなかった。


「俺は俺のやり方で守ると誓った」


 彼女は知らない。独りよがりだと言われようと、心に決めた、ただ一人の少女。


「孫の顔を楽しみにしている」


「亜緒?」


「主と定めた人物の子孫を守るのが生きがいなん」


「初めて聞いた」


「初めて言ったからな。失望させないでくれよ」


 亜緒の体が一瞬燃え上がったかと思うと、姿が消えていた。


「杞憂であってくれ」


ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。

感想などを頂けると励みになります。


申し訳ありません!

続きは明日以降にあげます

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