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夢喰い獏と陰陽師の末裔  作者: 真綾


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13/16

13話

読みにくいかもしれません。大変申し訳ありません。

 街灯だけの明かりで街が照らされている。


 子どもが一人歩いている。素足のままどこに向かうあてもなくただ街の中を探検しているように。白いワンピースに櫛を通しただけの髪。鼻歌交じりでどこかに向かっている。とても楽しそうに。


「子どもがこんな夜更けに一人で危ないよ」


 俺は一族に伝統的に伝わっている紺色の狩衣に着替えていた。烏帽子は邪魔なのでつけていない。髪を後ろで束ね、影には亜緒が控えている。俺の声に少女は足を止めた。


「貴女私が分かるの。誰も何も言って来てくれなくて寂しかったの」


 瞳の色が日本人の物とは違う気がした。暗闇の中でも、昼間のように視ることができる術をかけていた。


 フランス人形のようなハッキリした顔立ち。


「どこに向かっている」


 少女が歩きだすので俺も一緒に亜足を進める。夜の街。誰一人として歩いていないのは、夢の中だからかもしれない。いつの間に夢の中に取り込まれたか気が付かないくらいスムーズにかつ、絡みついてくる。


「独りは寂しいの。ずっとそばに居てくれる」


「俺は心に決めた人がいるからな。他をあたってくれ」


 彼女に乞われれば俺は一族全員を敵に回してでも、連れ去る。彼女がそれを望んでいないから俺は我慢している。タイムリミットがある中で、少しでも楽しく生活できるように。


「貴女は駄目な人」


 影が伸びる。少女の伸びた影が俺の方に向かってくる。


「独りが嫌なら行くべきところがある」


 輪廻転生から外れている人はいない。結萌のように他種族の血が混ざっている場合でも、人である限り、外れるはずがない。


 少女の雰囲気から、完全に怪異ではないはず。どこか人間らしい匂いがする。

 数百年前に交ざった怪異の血は薄れるはずなのに、俺もまた先祖返りに近いくらいに力を持っている。


「独りは嫌なの」


 叫ぶ少女の影を俺は祓いのけると、少女の姿がふわりと消える。


 亜緒がひょっこり俺の影から頭を出す。


「五楼珍しいな取り逃がすなんて」


 周囲を警戒しながら亜緒は顔だけを見せる。


「小さいとはいえ夢が一人歩きを始めてしまった」


「お前じゃ役不足だな」


 怪異に関しては得意分野の筈だがただ、祓うだけでなく、夢を成仏させることを得意としているのは獏一族。


「独りが嫌だと泣いていたな」


 逃げられる予想はしていた。取り逃がしてしまえば、結萌に来てもらわなければならなくなることも。


「好きで一人でいる人間なんてどこにいる」


 人が好きで、気に入った当主と契約をしてくれる亜緒と朱千。俺よりも断然人間らしさを知っている。結萌に言える立場じゃないが、俺もどこか人とずれているのかもしれない。


「助けるためには本人に会う必要があるのか」


 今夜は結萌には外に出るなといった。今夜中に決着がつけられれば、俺だけの力で何とかできるかと思ったのに。


「結萌の力も借りないと」


 亜緒は少女の消えた場所を眺めていた。





 女の子が泣いている。うずくまって一人は嫌だと。馴染みのある夢の中。うずくまる少女に私は寄り添う。


「大丈夫」


「独りは嫌だよ」


 独りは怖い。誰も傍にいない闇の中は夢に馴染みのある私でも怖い。


「私が側にいるは」


「皆どうして私をいじめるの。私何か悪いことしたの」


 仲良くしたかっただけなのに。手を差し伸べてくれた親友を裏切った。


「信じたかったのに、信じられなかったの」


 私が悪いのは重々承知している。彼女のことは悲しい事故だと皆言っている。私の机の奥底から出てきた○○の文字の「助けて」にもっと早く気が付いていたらこんなことにはならなかった。


 力のない私が何をしたところで助けになるはずがない。


「もういやだよ」


 いっそ私がいなくなってしまえばよかったのに。あのとき出会わなければ〇〇の手を握らなければ良かったのよ。



「行かなきゃ」


 ポタポタと涙が頬を伝う。引きずられる。


 寂しい、悲しい、辛い。


 これは私の感情じゃない。


「根が深いな、これは」


 五楼が私の部屋に入ってくる。パジャマ姿のままで、泣きじゃくる私を抱きしめる。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


 謝ることしかできなくて。私はどうして生きているの。親友を助けられなくて。


「結萌」


 力強い五楼の声。私の目を真っすぐ見つめる瞳に、私は動きを止める。


「泣く必要がなぜある、結萌」


「ゆ、め・・・」


 私は結萌と呼ばれる存在。


 夢喰い獏の一族。悪夢から人々を救うことができる力を司る。


 人々を苦しめる夢を無くすことができる。


「ごろ、う」


「そう、俺は五楼」


 息を整えていく。五楼は私を抱きしめていた腕をほどく。安心する腕の中。


「あれは事故だった」


 死のうとしていたのは事実だけど、思いとどまった。


 なのに、時間が止まってしまった。知らないはずなのに、知っている。連れてしまった。


「後藤先生は信じていない」


「後悔の念と誤解とが入り混じっている」


 五楼の目つきが鋭くなる。雰囲気が陰陽師のそれに変わる。


「人の感情は一つには縛り切れないからな」


 立ち上がる五楼は私に手を差し伸べる。


「先生を助けたいのなら、早く行こう」


 差し出された手を握り立ち上がる。


「結萌、二日眠っていた」


 眠っていた記憶がない。夢喰いの私が取り込まれてしまっていたのか。


「先生悪夢に取り殺される」


 油断していたからにしても、朱千の結界を擦り抜けて私が取り込まれた。力の暴走以外理由が浮かばない。


「私が何とかする」


 しなければいけない。力を持って生まれた私の力が役に立たないでいつ使う。


「まずは学校で話してみるとしよう」


ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。


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