1話
コンテスト用作品のため、一度にアップします。
誤字脱字がございましたらごめんなさい!!
魑魅魍魎が蔓延る時代が終わり、闇をも照らす光が生れた。
そんな時代の中で私が生きていていいのだろうか。
生まれてすぐに父様が交通事故で死んだと聞き、四歳の時に母様が風邪をこじらせて亡くなった。親戚に助けを求めることもせず、一人で私を育ててくれたおじい様も、目の前で息絶えようとしている七歳の春。
人ならざる者の血が流れているのは、ご先祖様が、生存をかけて人と交わることを選んだからだとおじい様が教えてくれた。人間の中にも力を持った奴がたまに生まれることがある。
同じように人と交わることを選んだ他種族の血が流れているからかもしれないとおじい様が言っていた。私は“夢喰い獏”の力を受け継ぐ一族。
私は親戚とあったことがないのだけど、親戚の中でも普通の人の方が多くなってきているから隠れるとおじい様が言っていた。隠れて暮らしている理由を教えてもらっていない。
日に日に弱っているおじい様。今はほとんどを布団の上で生活をしている。
口調だけはまだ、しっかり話してくれている。
「特別な力に翻弄されることが起こるかもしれない」
おじい様が力の制御を教えてくれた。母様には力をもって生まれなかったので、少しだけ獏の能力を継いで生まれていたおじい様。私は数十年ぶりに生まれた“完成形・先祖返り”。獏の姿になることができる。
人とは違うから隠れて暮らしているのか、生きていていいのか。
「おじい様」
段々と私より小さくなっていくおじい様は、いつも笑顔で私の頭をなでてくれていた。人里離れた山の中に家を構え、人は訪ねてこない。おじい様と二人暮らしも寂しい。
「夢を、大切にしている人もいれば夢を進化させて目標とし、叶えている人物もいる。わしの願いは、夢を重荷に感じている人の夢を食べ、少しでも楽にすることを選んで欲しい」
私よりも能力のないおじい様は味の違いを分かっていない。美味しい夢はフワフワのマシュマロみたいな感触で、食べたときに幸せな気持ちが伝染してくる。逆に憎しみに近い夢は不思議な触感。食べられないわけじゃないけど、食べなくていいなら、食べたくない。
「おじい様が望むなら」
力を持て余している訳ではない。使い道が分からないのだ。夢を食らうことは私にとっては本能に従う行為。食事をすることが悪いことなの?
「夢に苦しみ生きることを投げ出す人がいたら、容赦なく食べてしまっていい」
力のこもったおじい様の言葉。
獏一族の唯一無二の掟が“夢に苦しむ人の夢を食べ尽くすこと”。夢を食べられてしまったとしても人は新たに夢を造る。大小様々な夢を瞬間的に生み出す。
夢喰い獏にとって楽しい夢が美味しいし、力がみなぎる。獏の主食は夢。
「本家に連絡をした。陰陽師が迎えに来るだろうがちゃんとあいさつはするんだよ」
「おじい様と一緒に居られないのですか?」
力が衰えているのを感じていた。灯が消え入りそうなのも感じている。
「一族の掟から守るつもりだった。静かに暮らしていたかった」
おじい様の瞳に力が宿る。山を下りることも、家族以外と接することもおじい様は禁じていた。
「すまない。守れなかった」
「離れたくありません」
獏の力が無ければ普通の女の子として生きて行くことが出来たのにと泣いていたのを知っている。人の中に居られないから、人里離れた場所で滅多に人が来ない場所で生活をしている。
「夢は繋がっている」
力なく私に手を差し伸べるおじい様。布団の上からもう起き上がる力さえ残っていない。
「伊兎、ごめんな。ごめんな」
握る手に力が入る。
「私は夢喰い獏。寂しくなったら会いに行くから」
母様と父様には会いに行ってもいいのか分からないから行っていない。
「幸せに、なって欲しかったんだ。それだけなんだ……」
おじい様の手は私にパタリとその場に力なく倒れた。
ここまで読んでいただきまして誠にありがとうございます。まだまだ続きます!!
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