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童話集

王様とガマガエルの王妃様


 昔々ある王国に、美男美女の王様と王妃がいました。その王様と王妃は、皆に理想の夫婦めおとと言われるほどに、いつも幸せそうに微笑みあい、仲睦まじくしていました。


 そんなある日のこと。王妃が熱で倒れ、目覚めなくなった。原因不明の、発熱だった。


 王妃が倒れると、王様は王妃の傍に寄り添い、付きっきりで看病した。それは、王様の側近らが、病床に伏せっている王妃以上に王様のことが心配になるくらいだった。


「…王様、少しはお休みください。王妃様がご心配なのはわかりますが…このままですと、王様まで倒れてしまいます」


「私は大丈夫だ。今夜も私はここで王妃を見ている。お前たちはもう休め」


「ですが…」


「これは、王の命令だ。休んでろ」


「…承知致しました」


 そう、側近に言い、王様は夜も眠らずに王妃の傍に居ることにした。

 けど、王妃が発熱して3日目。王様はその間一度も眠らずに、王妃の傍で看病していた。

 不安や不眠などの疲労が、王様の体を襲い─そして。


「王妃…私の愛するマチルダ…早く良くなってくれ。私は君が居ないと─…」


 その晩。王妃の手を握りながら、王様は倒れてしまった。





「…うっ」


 王様が倒れて2日目、王様は目覚めた。


「王妃は!?マチルダの容態は!?」


 目覚めてすぐ、王様は王妃のことを心配し慌てた。すると。


「王妃様でしたら、ちょうど先ほど目覚めました。ですが…」


 王様の側近はそう言って、表情を曇らせた。


「…王妃がどうした?」


「それが…その…」


 王様の側近は言いにくそうにしていた。


「…マチルダっ!」


 王様はふらつく体を無理矢理に動かし、王妃の部屋に急いだ。





「マチルダ、私だ!入るぞ!」


 王様が王妃の部屋に入ろうと、扉に手を掛けた瞬間。


「来ないで下さい!」


 王妃の部屋から、そんな声が聞こえてきた。


「どうしてだ、マチルダ?」


「申し訳ないですけど…今、王様にお会いしたくないです。いえ、見られたくない…です」


 扉の向こうから、王妃の涙声が聞こえてきた。どうやら王妃は泣いているよう…だった。


「泣いているのか、マチルダ。まだどこか痛むのか?」


「…身体はもう元気です。でも…」


「…何だ?一体何があったんだ?頼むから、少しだけでも顔を見せてくれ」


 王様はそう言いながら、王妃の部屋の扉を開けた。



 そこには──────……



「マチ…ルダ…なのか?」


 ベッドに上半身を起こし、泣きじゃくる王妃が…いや、ごつごつとした大きなガマガエルがいた。


「…見ないで下さい。こんな醜い姿を…誰にも…王様には一番見られたくない…です」


 大きなガマガエルは、寝具で姿を隠しながら涙声でそう言った。

 どこからどう見ても、巨大なガマガエル。だけど、声は王妃のものだった。それに、そのガマガエルは、王妃のお気に入りのピンクの寝巻きを着ていた。



 どうやら本当に、そのガマガエルは王妃のよう…だった。





「これは…ガマガエル病という奇病です」


 医者はそう言った。


「ガマガエル…病?それで、王妃は元に戻れるのか?」


「申し訳ございませんが…今のところ、この病を治す方法がまだ見つかっておらず…」


「そんな…」


 それを聴いた王様は、がくりと肩を落とした。すると。


「…王様。どうか、私と破婚して下さい」


 ガマガエル姿の王妃が突然、小さな声でそう言った。悲しげな表情かおをしながら…


「マチルダ…」


「私のようなバケモノと共に居たら、王様の名まで汚れてしまいます。だから私を…捨てて下さい」


 ガマガエル姿の王妃は、手で顔を覆い、涙を溢した。

 

 すると。



 ────ぎゅっ。



 王様は、王妃の体をやさしく抱き寄せ…そして。



 …チュッ。



 ガマガエル姿の王妃の大きな口に、王様は口づけした。


「…!王様、だめです!こんなことしたら、王様の身が汚れてしまいます!」


 ガマガエル姿の王妃が、抱きしめる王様の体から離れようとしたが、王様はさらに王妃をふかく抱きしめ、そして。


「汚れぬ!…汚れるわけがないだろ。君は王妃である前に、私の命よりも大切な妻だ。たとえ、ガマガエルになろうと…君が私の愛する妻に、かわりはない」


「ですが…こんなバケモノ…国民が許すかどうか…」


「なんてことはない。以前よりも、私たちのアツアツなところを国民に見せつければいい。そしたら、誰もなにも言わなくなるだろう。まあ…そんなものはどうとでもなるさ。…君が傍にいるなら。君が私の傍に居てくれるなら、私は何でもするよ」


 王様は胸の中の王妃にそう言って、やさしく微笑んだ。


「王様…」


「どんな姿になっても、君は君だ。愛してるよ…マチルダ」


 そう言って王様は、王妃の大きな口にやさしくキスした。





 それから、王様と王妃は以前と変わりなく─いや、以前にも増して、仲睦まじくした。

 初め、ガマガエル姿の王妃を見た国民は、ざわざわと騒いだが、以前より更に仲睦まじくしている王様と王妃を何度か見ているうちに、誰もなにも言わなくなった。

 寧ろ以前よりも、王様と王妃の好感度が上がり、2人の永久とわの幸福を願うものが増えた。


 王妃のガマガエル姿が戻ることはなかったが、王様は王妃を深くふかく愛した。



 王様とガマガエルの王妃様。



 2人は皆に愛され、いつまでも幸せに暮らしたのでした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 童話のように優しく素敵なお話でした(*´꒳`*) 王様のマチルダさんへの愛は真実なのですね……! 幸せな気持ちで今日も一日頑張れそうです(*´∇`*)
2022/10/19 06:56 退会済み
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