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サウジアラビア 1回目 後編

 サウジアラビア後編スタートです。


 無事、試運転終了!

 え!? もう帰るだけ? なんで前後編に分けたの?

 はい! 約1ヶ月で試運転は終了しましたが、水を溜める水槽が出来上がりません。

 お客さんが造らなければならないのですが、まあ、予定通り行かないのが海外です。

 水槽が出来ないと長時間の運転確認が出来ません。


「水槽ができるまでまっててね」

「良いですけど、どれくらいですか?」

「ん~、そんなにかからないよ」


 いやいや、すでにこの時点で予定から数週間遅れてますけど……。

 ちゃんと予定を立ててくださいよ。上司にも報告しなければならないんだから。

 そんなの認められるわけないじゃないですか。

 みぱぱははっきりお客に言いました。


「分かりました! なるべく早くお願いします!」


 みぱぱはにっこりと了承しました。

 日本にいる上司に連絡します。


「そうか、しょうがないな。わかった。しかし、二人もいてもしようが無いだろう。帰ってこい」

「アイアイサー!」

「お前じゃないよ、森谷さんだよ」

「え! 私は?」

「現場で待機!」


 みぱぱは人質で、いやいや運転確認のため、一人サウジアラビアに残されました。

 ちなみにこの頃には、バス通勤は不便なのでやめて、軽自動車を借りています。

 自動車を借りるときに注意事項がありました。


「公道ではないけど、スピードを出しすぎないように。プラント内警察が来るぞ」

「制限速度はどれくらいなんですか?」

「……砂埃が上がらないくらいだよ。砂埃を見つけて警察が飛んでくるから」


 何のゲームですか? ここは。

 さて、砂埃でスピード違反になるなら、風が強い日はどうなるか?

 スピード出し放題!!

 竜巻が舞い上がる砂漠を爆走! そしてハンドルを切りながらサイドブレーキを引く。

 ズササササー!!!

 スピーン!


「超楽し~い!!」


 そして、竜巻の真ん中ってどうなっているのか気になって、竜巻に向かって一直線。

 周りに砂嵐が吹き荒れるが、大して楽しくない。


「さあ、キャンプに戻るか」


 キャンプに戻るとき、道路じゃないところをショートカットしているタイヤの跡が複数。

 道路は定期的に水をまいて、ローラーで堅くしています。それ以外の所は元々の砂漠のため、どんな状態になっているか分かりません。

 でも、何台も走った跡がある。


「お! 行けるんじゃね」


 アホなみぱぱは2WDのまま、そこに突っ込んでいきました。

 案の定、スタック!!!

 まずい! どうやって4WDに切り替えるんだ?

 焦る、みぱぱ!

 空回りするタイヤ。

 ますます焦る、みぱぱ。

 ここで死んでしまうのでしょうか!?

 まあ、そんな訳ありません。百メートルほど先にキャンプの門番がいました。


「へるぷ、みー!!!」


 みぱぱは助けを求めました。

 つるっぱげにねじりはちまきで上半身裸の男が一度、後ろを向いて、振り向きざまに言いました。


「な~にぃ~!? やっちまったなぁー!!」


 それに合わせて赤い前掛けの男が合いの手を入れる。


「男は黙って」

「段ボール!」

「男は黙って」

「段ボール!」


 ぺっちゃんこにした段ボールをタイヤと砂の間に差し込んで、ふたり組の男が後ろから押してくれました。

 そして、無事脱出しました。


「ありがとうございました!」

「良いって事よ! べらぼうめい」


 さて、そんなことをしながら水槽の完成を待っているみぱぱにも休日があります。


「へい! そこの彼氏、海に行かない?」

「行きます!」


 車はまっすぐペルシャ湾へ。

 そこには彼らの別荘がありました。

 海沿いの別荘。

 暑いサウジアラビアに海!

 ジャブジャブ泳いで気がつきました。

 沈まない。

 もともと海に近いところ生まれのみぱぱは普通に泳げます。潜るのも好きなのですが、潜れません。

 普通の約1.5倍の海水濃度。仰向けになって力を抜いてもぷかぷか浮かびます。

 ここで、みぱぱの悪い癖が出ます。

 思わず、気持ちが良すぎで寝てしまいました。

 寝てた時間は数分ですが、波に流されて陸が遠くに見えます。

 慌てて、泳いで戻るみぱぱ。


「えらく、遠くまで行ってたな」

「ええ、久しぶりの海ではしゃいでしましました」


 危うく遭難するとこでしたとは言い出せないみぱぱは、笑ってノンアルコールを飲みました。


 他の休日ではレバノンから来ているドライバーのおじさんと仲良くなって、晩ご飯を食べに街に行こうって事になりました。

 夕方にキャンプを出て、街へ行きました。

 駐車場に車を出て、歩いてレストランへ。

 男性は真っ白な服トーブに身を包み、女性は真っ黒な服、アバヤで街を歩いていました。


「女性はまじまじと見たら、捕まるぞ」


 日本でそう、教えられたみぱぱはなるべく女性を見ないようにして、レバノンおじさんの後ろをついて行きます。


「ひゅ~! みぱぱ、いまの女性を見たか? 美人だったな」

「え!?」


 よく見てなかったが、見えてた所って目の周りだけだろう。何をどうやって美人と判別してるしているんだろうか? 中東の人間には透視能力が備わっているのだろうか? その能力ください!

 日本の話やレバノンやサウジの話をしながら、食事をしたあと、レバノンおじさんは言いました。


「日本には|BaskinRobbinsバスキンロビンズあるか?」

「バ、ス……何だって? 知らない」

「よし、食後のデザートに行こうか!」


 はい、みぱぱさん、大恥をかきました。

 ヒントはデザート。

 日本にもありますが、呼び方が違います。

 日本の呼び方で知らない人はいないと思います。

 さてみなさん、分かりましたか?















 それでは答えをどうぞ!


「あー! サーティワンアイスクリームじゃないか!」


 確かに日本でもサーティワンアイスクリームとカタカナで書いてある上にBaskinRobbinsって書いてあります。


「好き好き! 大好き!」


 甘党でお酒好きのみぱぱさん。サウジに来てお酒が飲めないので、甘い物が楽しみです。

 ちなみにアイスクリームの名称はアラビア語で書かれているのでさっぱり分かりません。


「みぱぱはどうする?」

「チョコレート」


 万国共通、失敗がない最高の素材。鉄板メニュー。


「じゃあ、俺はこれだ」


 レバノンおじさんは緑色のアイスクリームとコーヒーを頼みました。


「サウジに抹茶アイスがあるの!? そっちにすれば良かった!」

「なんだ、みぱぱ。こっちが良かったのか? 少し食べてみるか?」


 サウジアラビアの街で、おじさんがスプーンであーんとしてくれました。

 おっさんずラブの世界のまま、アイスクリームを一口食べてみます。

 ん? 抹茶じゃない。当たり前だですね。


「これは何の味ですか?」

「これか? ピスタチオだよ」

「ピスタチオ? あのすぐ白目むく?」

「そうそう、それって、そんな訳あるか! 豆のピスタチオだよ。これにアラビックコーヒーが合うんだよ」


 ピスタチオと言われれば、ピスタチオの甘みが美味しい。

 レバノンおじさんはアイスクリームを一口食べて、おちょこくらいの大きさに入った超真っ黒なコーヒーを一口、美味しそうに飲みました。

 アラビックコーヒーは鍋でコーヒー豆を煮立てる。超濃いコーヒー。コーヒー豆は下に沈殿させたまま上澄みだけを飲みます。

 一日に二杯飲むと寝られなくなるそうですが、コーヒーの飲めないみぱぱにはただの濃い泥水にしか見えません。


「ピスタチオアイス美味しい! これは日本に無いね」

「そうか、良い思い出が出来たな」


 そんなこんなで、遊んでばかりいるようなみぱぱですが、一応、この暇な時間を利用して仕事をしようと頑張ります。

 今回はプラントが大きいので他の国のプラントメーカーも来ています。カタログを持って営業に行きます。

 みんな、砂漠のど真ん中で娯楽がないので、良い話し相手だとばかりに、話を聞いてくれますが、装置のことよりも雑談がほとんどでした。


「よう、ジャパニーズは皆、空手をやっているって本当か!?」

「本当ですぜ、旦那。ですから日本人を怒らせると怖いですよ~」

「でもお前らチビじゃんか」

「じゃあ、ちょっと演舞見せますね」


 ハイキックを含んだ型を見せると、大喜びのおじさんたち。


「おお! ワンダフル! さすが日本人、侍、忍者、最高ね!」

「実は私は忍者なんですよ」


 うん、格闘技をかじっていて良かった。

 そんなの事をしながら、長いのサウジアラビアの旅も終わり、帰国しました。

 約二ヶ月ぶりのアパートについたのは夜の7時過ぎでした。

 タクシーでアパートについた時、電気屋の車とすれ違いました。

 どこかトラブルがあったのかな?

 疲れたみぱぱはそんなことを考えながら、お風呂に入って今日はさっさと眠ってしまおうと部屋の電気をつけます。

 つかない。なんで? 電気代は給料が入るところから自動で引き落としだから、二ヶ月いなくても滞納にはならないはず。

 あたりを見ても電気がついているため、停電でもない。

 パニックのみぱぱは少し落ち着いて、電気屋に電話をして、アパート名と部屋番号を告げるとびっくりされました。


「あれ? その部屋は空き部屋って聞いてますが?」


 いちイラ。


「誰がそんなことを言ったのですか? 大家ですか?」

「あなたの部屋の上の方です。ちょうどその方の部屋のブレーカーが壊れて伺ったのですが、あなたの部屋は空き部屋になっていると聞いたので、さっき、ブレーカーを取り替えたところでした」


 にイラ。


「大家でもない、住人が勝手に言ったことをそのまま信じたんですか? 確かに長期出張に行っていましたが、電気代はちゃんと払っていますよ。そちらの記録を確認すれば、空き部屋かどうかすぐ分かりますよね」

「ああ、そちらは確認していませんでした」


 さんイラ。


「冷蔵庫もあるんですから、今すぐに修理に来てください!!!!!」

「すみませんでした!」


 帰ってきたときにすれ違ったくらいのジャストタイミングだったので助かりましたが、帰国が数日遅れていたら冷凍していた物が全部駄目になって、大変なことになっていました。


 行きも帰りもトラブルに見舞われたサウジアラビアの旅でした。

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