0.舞台裏
いわゆる華のJK……と呼ばれる年代になった私は今、早くも高校3年目の最後の春。
彼氏のかの字もいませんが、遂に私にも幸せが訪れます!
そう、ここは部活紹介のためのステージの舞台袖。
そして舞台袖から講堂を一瞥すると、目の前に広がるのは後輩だけの楽園の海!
もう私は、見ているだけで幸せです。
はい、最高。
あ、鼻血が出てきました。
「みや、何しとるん?」
「あのね、ななこちゃん、私は今どこまでも続く川が見えています。ここを渡れば、更なる幸せが…」
「ちょいちょいちょい待て待て!それ渡っちゃダメなやつちゃうか!?」
「川の水が冷たくて気持ちいいです。」
「みやちゃん、戻って!リターンするんだよ。バックでもいいから、戻っておいで!」
近くで焦った声が聞こえます。
なぜか、頭もぐらぐらしてきました。
「……しょうがない。奥の手使うか。」
ななこちゃんの気配が耳元に近づいてきている気がします。
「待望の後輩ちゃんたちが、私たちの部活を見に来てくれるのを、見んくていいんか?」
見ます!
絶対、見ます!
会いに来てくれた後輩を愛でたいです!!
いっそ、舐め回したいくらいです!
ふと気が付くと、目の前にさらさらな黒髪を一つに束ねた我が部の副部長兼、友人の顔が呆れた顔でこちらを見ています。
「いくら興奮したってな、鼻血は出さんとってや。腐っても女の子やろ。」
「すみません。興奮が抑えきれず…」
「まぁええから、とりあえずそろそろ出番なんやから、シャキッとしてや?我が、何でも屋部の部長さん。ほな。みや、そろそろ行くで。」
「そうですね!我が部の未来の後輩たちに会いに行きましょう!!!」
私を激励叱咤する副部長は、本当に頼りがいのある友人です。
1つにまとめた黒髪を靡かせ、耳から赤いピアスを覗かせている私の友人は、世界一かっこいいのです。
そんな風に考えながら、私は友人の後ろを追いかけ、ステージに向かいました。