8話
「それにしても、ここどこなんだろうな?」
と蓮は歩きながら言った。
「ああ、そこがわからないんだよな。ここが施設だとすると国が絡んでいないと無理だと思うんだよな。」
「昔、都市伝説なんかで国がシェルターを作っていたなんて事見たことあったけど。」
沙紀が思い出したかのように言った。
「それだと、人が消えた事の説明ができないね。秘密裏に開発された装置があるなら別だけど。」
僕がそう言うと蓮が何か話し始めた。
「あー、漫画でさあ、人が消えたり、現れたりする魔法があったぜ。きっとそれじゃないか?!」
「おまえなあ、、魔法がそもそもないだろ、、」
「わからないぜ。魔法なら全て解決するぜ?」
「なら、ここから出してくれよ。その『魔法』でさあ。』
「だめだなあ。俺戦士系だから魔法無理だわ。」
「そうだな。脳筋の蓮には魔法無理だよな、、」
「うっせー。おまえ帰ったらオンラインゲームでボコボコにしてやるよ。」
沙紀さんは僕らの漫才を慣れたように真顔で見ていた。
「あなた達こんな状況でよく、そんな冗談いえるわね。」
「いや、冗談じゃなくて本気なんだけど?」
蓮が言った。
「なら、どこかネジが取れてるのかしら。クスクス。」
「ああ、ここでネジを落としてきたからな。」
偉そうにする蓮がいた。馬鹿だな。
そんな時、僕らの前に薄い何かが見えた。
それは最初、形を成さず空間を歪めてたが地面の緑は見えていた。
しばらくすると、緑は消え、黒い服をきた大人が横たわった姿で現れた。黒い長髪の後ろをゴムで縛っており、髭が顎からもみあげに繋がっていた。整ったその髭は自然だった。
「おいおい、まじかよ。俺『魔法』なんて使ってないからな。』
と蓮は言った。骨の髄まで馬鹿だ。
「いったいなんなのこれは、、」
沙紀は少し声を震わせていた。
「死ぬときと同じ感じだね。」
僕は少し慣れたように話していた。
「どうする?」
不安げに沙紀が僕に言った。
「なんとなくだけど、悪い人じゃない気がする。」
「また、おまえの勘か?」
「ああ。時間がもったいない。悪いけど起こそうか。何かあったら蓮頼む。まだ、腕は鈍ってないだろ?」
「しばらくサボってるからな。」
「えっ?何が?」
沙紀が僕に言った。
「こいつ、空手やってるんだよ。脳筋がその理由さ。」
「そうだったんだ。無駄に大きいわけじゃなかったんだね。」
そう言って沙紀は蓮を見た。
「なんだ沙紀、雄馬みたいになってないか?まあ、いいや。いつでも準備はいいぜ。」
「じゃあ、起こすから沙紀さんは離れていて。」
僕はその男の体を思いっきり揺さぶった。