5話
しばらく歩き人影はなくなった。
安心した僕はみんなに話した。
「疲れたな。少し休憩しようか?」
「ああ、ここなら大丈夫だろうしな。」
蓮は座り込みながら言った。
「あたし達どうなるんだろう。」
「ここから出てやるさ!そして、こんなとこに連れて来たやつをぶん殴ってやる。」
と僕は言った。
「そんな非力な腕でか?」
蓮はこっちを向いていた。
「ああ、こんな非力な腕でも殴ることはできるさ。
必ずぶん殴る。」
「じゃあ、俺も混ぜてもらうぜ。」
「じゃあ、あたしも!」
僕と蓮は驚いた顔で沙紀を見た。
「あたしだって殴れるわよ。多分、、」
「沙紀さんは蹴りの方がいいよ。手が痛くなるから。」
と僕は言った。
「じゃあ、そうする!」
沙紀は立ち上がり、上がらない片足を上げて沙紀はそう言った。
僕と蓮はその低い高さの蹴りを見て笑った。
「何がおかしいのよ!」
「そのすごい蹴り捌きに驚いて笑ったんだよ。」
僕は心にも無いことを言った。
「そうだな。クスクス。」
蓮は無理矢理に相槌を打った。
「嫌な二人。」
その沙紀の言葉が嫌な二人の笑いをさらに誘った。
僕は笑うことを堪えながら話した。
「さて、真面目にここから抜け出す方法を考えよう。今僕達がわかっている事は、壁にあった
『壁ヲ越エレバ道ハアル』
『壁ハイツモソコニアル』
という文字。さらに、ここで死ぬと人は消える。飛び散った血などは残るってことだな。でも、地面には残っていなかったから、他の人に飛び散った血だけが残ったと言えるな。壁に着いた血は消えたんだろうか。動揺してて見てなかったな。でも、壁に黒い色が付いてたから、壁に血は残るのかもな。」
「さっぱりわからないぜ。」
蓮は諦め気味だ。
「やっぱり壁にあったあの文字がヒントなのかな。」
沙紀は首を傾げた。
僕は答えた。
「そうだね。他にも文字がないかな。」
「よく見たらあっちの方になんか文字ぽいのが壁に見えるぜ。」
「行ってみよう。」
僕には見えないが、蓮が言うならそうだろう。こいつの目は鷹の目のように見える。視力が3.0を越えてるなんて自慢してたしな。
僕達は立ち上がりその文字を目指し歩いた。
何も変化がない青い空は不気味でしかなかった。
どれだけ歩こうとも変化がない。自然な空とは違う、作られた空なのは明らかだった。
それでも、歩くしかない。
それにしても、ここはなんだ。実験設備か?軍の秘密基地か?大富豪の道楽か?
さっぱりだ。人が消える時点でありえない。
大きな組織が絡んでいるのか?国?
国だとしたら、中国、アメリカ、ロシア、日本あたりか。
ああ、、全くわからないな。
今は脱出する事だけに集中しよう。
「見えたぜ。雄馬、見てみろよ。」
『14番目の
虚数で
得るのは?』
と黄色の文字で書かれていた。