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  作者: 劉水明
3/12

3話

一人壁を向き佇む若い男がそこにはいた。


この肩の広さ、身長、坊主頭。

僕の悪友にそっくりだな。まさかな。


「あのー、すみません。」

僕は坊主頭に声をかけた。


振り返ったその姿は悪友の山本蓮だった。

僕はつまらない言葉で話しかけた。


「なんだ、おまえか。」

「それはこっちのセリフだ。」

「で、おまえ何でここにいる?」

「さあ。家でTV見ながら寝てたら、ここにいたんだよ。どこだよここ?」

「こっちが聞きたいくらいだよ。」

「で、おまえいつから彼女ができたんだ?」

「おまえなあ、彼女をよくみて見ろよ。」

そう言って蓮は沙紀を見た。


「あー、クラスメイトの佐藤か。」

こいつ、クラスメイトの女の子の名前は全て暗記している。勉強しない脳筋な癖に。


「蓮くんもこの場所にいたんだね。なんか安心したわ。」

と彼女は言った。


「ああ、俺がいたら何の心配もない。任せろよ。」

彼女に偉そうにする蓮に、呆れた声で話した。

「おまえがいたら、心配だらけだよ。」

「あー?」

「火がなければ自分で火を起こし、周りに巻き散らすのがおまえだろ?」

「おまえはその火にいつも油を注ぐだろ?」


クスクスっと彼女が笑っていた。


「二人とも本当に面白い。まるで兄弟みたい。」


「んなわけないだろ。」

と同時に僕と蓮が叫んだ。

「ほら、息もぴったし。」

僕と蓮は火花が出るくらい睨み合った。


僕は蓮に勝ちを譲ってやり、一度冷静になって話した。

「さて、どうするかな。救助がくればいいが、来ないような気がするな。」


「そういえば、壁になんか書いてあるぜ。」


『壁ヲ越エレバ道ハアル』

『壁ハイツモソコニアル』


ん?さっき見た言葉より多い。

そうか、壁が破損してたせいか。


「なんだろうな。確かに壁はここにあるけど。」

と僕は言った。

「よくわからんなあ。登るか。」

と蓮が上を見た。

「やめとけ、落ちたら死ぬぞ。さっき、誰か落ちて目の前で死んだぞ。ほら、これがその血だ。」


僕は蓮に手を見せた。

「うわ。真っ赤じゃねーか。」

「ああ、だけどその死体は消えたんだよ。」

「そんなことありえるのか?」

「普通はありえないだろ。だけど消えたんだよ。でも、この手の血は消えなかった。だから俺たちは大人から距離を置いたんだよ。」

「どうして?」

「食糧も水もないだろ。可能性があるんだよ。」

少し蓮は考えた。

「・・・まさか、そんな事ありえないだろ。」

「絶対ないと言えるか?」

「…………………………。勘か?」

「ああ、いつもの嫌な予感だよ。」

「そうか。なら、そうなるかもな。」

沙紀だけは理解できずにいた。


蓮は僕の事をよく知っている。昔から、僕の悪い予感が当たる事を。

この悪い予感は、苦い物を食べた後にくる気持ち悪さとよく似ている。

なかなか、頭から離れない。


「でも、これからどうするの?」

沙紀が心配そうな声で話した。

「予定通りまた、一人の人を探そう。あと、壁も見てみたい。何か手掛かりがあるかもしれないし。」


僕たちはこの異様な光景の中を再び歩きだした。

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