12話
みんな壁や地面を擦るように歩いていた。
何もない壁と地面は僕らを同化するかのようだった。
この世界にきて、半日は経っただろうか。時間の感覚すらなく、いつ終わるともしれないこの世界は
まるで監獄のようだ。
誰が何の目的で作ったかしれないが、
ひどい世界だ。
ここに比べれば普段の生活が幸せに感じる。
知らない男がいつも家におり、母親とは口も聞かない。そんな生活でも、ここよりはマシに感じるから不思議だ。
人間なんていい加減にできているんだな。
不幸な場所にいると、前が不幸な場所でもそこに帰りたくなる。
そうやって不幸な場所も幸せに変わるんだろうな。
蓮は親父と二人暮らしだったなあ。蓮も親父とはうまくいってなかったけど似たような事考えてるんだろうか?
こんな世界にいると普段考えない事を考えてしまう。
この世界は、そんな事を考える場所なのか?
馬鹿馬鹿しい。
今は帰る事だけに集中しよう。
「喉乾いたな、、今冷えたコーラを片手に一気に飲んだら美味いだろうな。」
蓮は指を曲げてボトルを掴むように手を口に寄せた。僕はその姿を横目に言った。
「いいなあ、それ。」
「あたしも、氷で水滴がついた透明なコップに冷えた蜂蜜入りのレモネードが飲みたい。」
沙紀を見ながら直樹さんも続いた。
「私はビールだね。一気に飲んだ時に喉をシュワシュワと刺激するあの感覚がたまらないね。」
そんな事を聞いていたら、喉が乾いた僕は
唾液を口に溜めて何かを飲むかのようにゴクリ
と音を鳴らした。
何も味はしない。
「かえりたいな。」
僕は口からそんな言葉が漏れていた。
「あぁ。」
蓮は前を見ながらそう言った。




