まともな令嬢は居ないようだ
誰の視点でしょうか??
Side ??
今日の茶会は凄まじいものだった。
事の発端はオクレール公爵令嬢のオリバー嬢の言葉からだった。
確かに彼女とは従兄妹にあたるが、接点があるかと言われれば、ない。
私の母と彼女の母が姉妹で、血縁関係にあるといえばある。
「あんな女が血縁とはね」
はあ、とため息を漏らせば、弟は小さく笑った。
ステファン・オーウェン。
二つ年下の第二王子たる彼は異母兄弟であるが、私の母は彼の事も気に入っている。
彼の母親の事もいたく気に入っていたが、彼の母親が産後の肥立ちが悪く、若くして身罷った。
それからは、母は弟を私と同等に我が子同然に育てた。
「兄上、あの女になんて言われたの?めちゃくちゃ怒っていたじゃん」
「ああ、俺の婚約者にマグリット嬢はふさわしくないと叫んで、な」
「だけどマグリット嬢もそこで叫ぶように反論しているようじゃ駄目だよね。あれじゃあ王妃は務まらない」
そう言いながら弟は笑った。
マグリット嬢はマグリット・フェントス。公爵家の令嬢だ。
「笑っちゃうよね、マグリット嬢は『婚約者筆頭』であって『婚約者』ではないのにね。そんな態度だから父上も義母上もマグリット嬢を正式な婚約者にできない。」
「ああ。あと妙齢な公爵令嬢となるとオクレール公爵家のオリバー嬢の妹二人だが、姉があんな調子だ、期待はできないな。」
「それに血縁濃すぎでしょ。義母上の妹の子供なんでしょ?」
「いや、一番下はロジェ子爵の血縁になるから血の繋がりはない。だが、噂によればオリバー嬢の妹はどちらも出来が悪いらしい。まったく、わが国の公爵令嬢でまともなものはいないのか……。」
そんなため息を吐いた。
現在18歳になったアレックス・オーウェン。
オーウェン王国の第一王子であり、王太子である。
そんな彼の悩みは、高位の令嬢の中に王妃が務まる人間がいないのだ。
「とりあえず、オクレール公爵令嬢の様子を見てから、侯爵家、ダメなら伯爵家を見繕おう。まあ、オクレール公爵令嬢はダメだろうがな」
諦めに似たため息を吐いた。
この時、噂というものがどれほど当てにならないか、ということを知る由もなかった。