君さえいれば
──その場所からは、遙か遠くの景色までがよく見渡せた。
俺はいつものように、強く吹きつけてくる風に対抗させるようにぴんと耳を立てたまま、崖のすぐ手前に後ろ脚を折って座り込んでいた。
風に乗って、人間たちの声が届く。この山のふもとには小さな里があるから、そこに住んでいるやつらのものだろう。俺はよほど食糧事情が悪くならなければ下まで降りることはないので、そこでどんな連中がどんな暮らしをしているのかは、よく知らなかった。
俺が普段ねぐらにしているのは、山の中の小さな洞穴だ。この山は湧き水もあれば、食べられる実もよく成る。餌にするための小動物も多くいるので、あまり食い物には不自由しない。わざわざ人間たちの目を盗んで里に忍び込み、畑などを掘り返す必要もなかった。
犬の中には、人間たちと馴れ合い、または媚びて、食い物をねだるようなやつもいるようだが、まったく気が知れない、と俺は思っている。あんな連中と付き合ったところで、良いことなんて何ひとつないだろうに。
人間は、平気で同胞を傷つけ、殺し、互いの屍肉を貪り合うような、浅ましく欲深い生き物だ。
そうでなければ、どうしてこんなにもあちこちで無為な戦いを繰り広げる必要がある? 縄張り争いをするのなら、ただ相手を追い出すだけでいい。人間以外の動物は、みんなそうしている。自分が生きていくために必要な時以外は、わざわざ血を流そうとは思わない。
人間同士が武器を持って殺し合い、数多の亡骸を量産していくのは、あいつらがそういうことを好む、根っから残虐な性質を持っているからだ。
ほんのちょっと鼻をうごめかせば、どこからかまた死臭が漂ってくる。耳を澄ませば、刀と刀が勢いよく交錯する甲高い音が聞こえる。人の肉が腐っていくその上で、勝鬨を上げる喜悦に満ちた笑い声が響く。
ほら、あっちでも、こっちでも。あいつらはきっと、楽しくてやっているんだ。戦って、傷つけて、殺しまくることに快感を覚えている。そうとでも思わなければ、まったく理解しようがないではないか。せっかく言葉を話せるのに、こんな手段をとることしか出来ないなんて。
人間こそが、血に飢えた猛獣そのものだ。
……戦国の世、と連中はそう呼ぶらしい。
バカバカしいね、と俺は思う。
あんな狂ったやつらと関わり合いになるなんて、真っ平御免だ。
***
「……あれ、犬だ」
ガサガサと茂みをかき分けて俺の目の前に現れたのは、手足が棒きれみたいに細く、薄汚れた貧相な子供だった。
ここは山の中腹にあるとはいえ、辿り着くためには、険しく難儀な道ならぬ道を通って登ってこなければならない。だから今まで人間なんて一度も姿を見かけたことがなかったのに、そこをこいつはどうやってか、入り込んできたらしい。
背中にかかるボサボサの黒髪に葉っぱや小枝を絡ませて、全身は汗だく、やっと膝が隠れるくらいの丈の短い着物はそこら中が土で汚れている。おそらく、山の中で道に迷い、うろうろと彷徨った挙句に、ここまでやって来てしまったのだろう。
崖の手前で座ったまま、俺は顔だけを振り向かせてその子供をじっと見た。
俺がその時、そこから立ち上がらなかったのも、牙を剥きだして唸り威嚇しなかったのも、そいつがあまりにもひ弱でちっぽけで、野ウサギにも劣るようなつまらない存在でしかなかったからだ。
そこらを飛び回る虫相手に、羽音がうるさいからと、本気で怒ったりするか? ただ放っておけばいいだけの話だ。
子供はひいふうと息を乱しながら、怯える様子もなくトコトコとこちらに歩み寄ってきた。
「ここ、あんたの場所? ちょっと休ませてもらってもいい?」
上体を屈めて俺の顔を覗き込み、荒い息の合間にそんなことを言う。俺はもちろん相手にはせずに、ぷいっとまた前を向いた。正直、人間が自分の傍にいるのはイヤだったが、こんなやつのために自分が移動するのも気に食わない。
まあ、人間の中には、俺の姿を見るだけで、こちらが何もしなくても石を投げつけてくるようなのもいるから、それよりはまだマシかもしれない。
子供は、ふーと大きな息を零して、俺の隣に腰を下ろした。「わあー、いい風」と弾んだ声を出す。
図々しいやつだな、と俺は呆れた。人間の子供というのは、みんなこんな風に頭が悪いものなのだろうか。俺がその気になれば、こんな細っこい首、あっという間に噛みちぎってやることだって可能なのだが。いやしないけど、面倒だし。
「ここはいい眺めだねえ。あーんな向こうの山までが見えるよ」
ちんまりと折った足を両手で抱え込み、子供は感嘆するように言った。
この場所は山の中ほどに位置しているが、崖が前方に張り出していて、周囲がよく見渡せるのだ。眼下には、山稜に囲まれた窪地に小さな里がある。子供もあそこから来たのだろう。
冬になれば大雪がすべてを閉じ込めて孤立するし、街道もろくに通じていないような辺鄙な場所だ。だからこそ、あちこちで起きている戦の飛び火からも逃れて、ここはまだ平穏さを保っていられるのかもしれないが。
毎日毎日が澱んだ川のように静かで退屈な暮らしをしていると、こんな能天気な子供が出来上がるのかね──と思いながらちらりと隣の子供に目をやって、俺は気づいた。
子供の身体は、あちこちに、大きな痣や打撲の跡がある。どう見ても、獣道を這いずり回っている時に木の枝や石でこさえたものではなかった。
もしかして、この山の中へはうっかり迷い込んできたのではなく、何者かから逃げてきたのかもしれない。
「ここはあんたのお気に入りの場所なの?」
子供はにこにこした顔を俺に向けてそう言った。それにしても、さっきからこいつは一体何のために、べらべらと一人で喋っているのだろう。ひょっとして、俺に話しかけているつもりなのか。
「ここ、気持ちいいもんね。だーれもいないし、涼しいし」
そう、ここは俺以外の誰も来ない、お気に入りの場所だった。ついさっきまで。
「それにしても、あんた、変な模様だね。黒地に白いブチがいくつも散ってさ」
口を動かしながら、子供の手が俺に向かって伸びてきた。一瞬、ぴくっと身を固くしたが、避けるのもなんとなく忌々しかったので、その場から動かずじっとしていた。
小さな手が俺の身体に触れる。
最初はそっと背中を撫でるだけだったのに、俺が何も反応しないのをいいことに、次第に子供の無遠慮な掌は俺の身体をまさぐるように動きはじめた。くすぐったい。こそばゆい。だから人間というのはイヤなのだ。こんな風にいきなり相手との距離を詰めてきてべたべたと触りまくる、警戒心皆無な動物は他にいないぞ。
「ひい、ふう、みい……七つ、白い斑点があるね。夜空に浮かぶ、お星さまみたい」
子供が嬉しそうに笑った。
「じゃあ、あんたの名前は、『七星』にしよう」
安易な名づけをして、さらにきゃっきゃと喜ぶ。ななほし、と呼ぶ声に、一気に親しみが増した。俺がうんともすんとも言わなくても、お構いなしだ。勝手にしろ、と思うしかない。
「七星」
目を細めた子供の口から出るそれは、俺の「名前」なんだってさ。
バカバカしいね。
俺は大きく口を開けて欠伸をし、ゆっくりと四肢を折り曲げて、その場に蹲った。
──ああ、もう、なんか、どうでもいいや。
***
子供は、それから何度も同じ場所にやって来るようになった。
息を切らして山道を登ってきては、崖の手前の定位置に座っている俺を見つけて、「七星」と目を輝かせ駆け寄ってくる。
多少は知恵がつくようになったのか、途中で木の実を見つけて、景色を眺めながらもぐもぐと食べていることもあった。「七星も食べる?」と差し出されたが、俺はそれをきっぱり無視した。野ウサギから餌を分け与えてもらうほど、俺は落ちぶれちゃいない。
子供は相変わらず痩せていた。きっと、ろくに食っていないのだろう。子供が見つけてくる木の実は決して旨いと思うようなものではないはずだが、それでも急いで腹の中に詰め込むようにしてぐいぐいと口に押し込んでいる。味の良し悪しになんて関わっていられないほど、切実だということだ。
痣も、殴られたような跡も、一向に減っていく気配がない。着物の袖や裾から出る手足についたそれは、誰の目からも一目瞭然のはずなのに、里の中では子供に対する暴力は容認されているらしかった。
「あたし、『ゆき』っていうんだよ」
子供はそう名乗ったが、犬の俺がそれを口にして呼べるはずもない。無言でただ座っているだけなのに、ゆきはへへへと照れ臭そうに笑って、ぴったりと俺に寄り添った。
里では、誰もこいつのその名前を呼んでやらないのだろうか。連中はいくらでも、それが出来るのに。
ゆきは俺を相手にしてよく喋り、よく笑った。俺は犬だから、もちろん、それに何も返すことはない。それでも気にする様子がなかった。ゆきにとっては、「自分以外の生き物」が隣にいる、ということだけが重要だったのだろう。
誰かと一緒にいて、誰かと話をし、誰かと笑い合う。
しんどい思いをしてこんな山の中までやって来るのは、たぶん、里でのゆきが、そういう機会にまったく恵まれていないからだ。
時間の合間を縫って、俺に会いにやって来るゆき。
雨の日は来なかったが、十日ばかり長雨が続いた後には、握り飯を携えて急いで山を登ってきた。自分が食べるためではなく、どうやら、雨のせいで獲物が取れなかった俺のために、わざわざ持ってきたらしい。
そんなもんを平気でぺろりと食べてしまえるほど、俺の面の皮は厚くない。半分だけ齧って、あとの半分は、ゆきのほうに鼻で押しやった。ゆきのぺったんこの腹からは、ぐうぐうと虫が大合唱している。これだけの飯をこっそり工面するのも、きっと大変だっただろう。
「半分こだね」
くすくす笑うゆきは、ちょっと嬉しそうだった。
「ねえ七星、あの山の向こうには、何があるんだろうねえ」
ゆきはたまに、眼前に広がる山々を見ながら、そんなことを言った。
山の向こうにはまた山があるんだろう、としか俺は思いようがない。俺にとって、「世界」というのは、おもに山と小さな里だけで構築されている。人間たちの話の中には、煌びやかな都や、大きな城や、そこに住むお殿様などが出てくることもあったが、見たことのないものは想像しようもなかった。
ただ、戦場というものは見たことがある。この山を自分の住処として決める前、あちこちを放浪していた時のことだ。あれは酷いものだった。
無数の屍の上を風だけが吹き渡る、荒涼たる眺め。赤く染まった夕焼け空を、黒いカラスの大群がギャアギャアとしゃがれた声で鳴き、肉を啄みながら舞い飛んでいた。あたり一面には鉄と血の強烈な臭いが混じり合って広がり、しばらく鼻が利かなくなってしまったほどだ。
俺はその光景を見て、心から思ったね。あそこで転がってるやつらだって、これまで精一杯働いて頑張って生きてきたんだろうにさ、死ぬのはあっという間、馬鹿みたいに呆気ないものなんだ。本人たちだって、死の直前、きっとそう思ったに違いない。
まるで、これまでの人生を、死ぬために進んできたようじゃないか。
──生とは、なんて、虚しいものか。
「海のずっと向こうには、常世の国っていうのがあるんだって。だったらあの山のずっと向こうにも、同じものがあるんじゃないかなあ」
ゆきはうっとりと夢見るような目をしていた。
「そこではね、みんな、不老不死なんだって。年をとっても、若返るんだって。戦もなくて、たくさん食べ物もあって、みんなが笑っていて、ずうっと平和で楽しいところなんだって」
この時、もしも俺にそんな才能があったなら、きっと鼻で笑っていただろう。残念ながら無理だったので、ふんと鼻息を出しただけだったが、それでも多少は通じたらしく、ゆきはぷっと頬を膨らませて俺を見た。
「信じてないね、七星。だけど、わからないじゃない。だって、里の誰もあの山の向こうまでは行ったことないんだもの。……あたしさ、もっと大きくなったら、行ってみたいと思ってるんだあ」
行ってみたいのは、常世の国か、山の向こうの未知の世界か、俺にはよく判らなかった。
「いつか、里を出て、行ってみたい。──そこでなら、きっと」
ゆきはそこで口を噤んだ。続けようとして呑み込まれた言葉は、俺にもなんなく想像がついた。
そこでなら、きっと、自分も受け入れてもらえる。
戦がなくて、たくさん食べ物があって、みんなが笑っていて、平和で楽しいところ。
そんな世界を夢のように思い浮かべずにはいられないほど、今のゆきはそれらのうちの一つだって手に入れられない、ということなのだろう。
本当だったら、それはもっと容易く実現する夢のはずではないのか。誰かがちょっとだけ、ゆきに手を差し伸べてくれたなら。ほんの少し時間を作って、ゆきの他愛ない話に耳を傾けてくれたなら。
「ゆき」と名を呼んで、この小さな頭を撫でてくれたなら。
俺には逆立ちしたって出来ないそれらのことを、里の人間たちは簡単にやれるのに。
もっと、ゆきを嬉しそうに笑わせてやれるのに。
……まったく、人間なんてくだらない。
俺は折った前足に自分の顎を乗せた。ゆきの細い手が、俺の頭を優しく撫でる。ゆきと違って、俺はもうとっくに大人なんだがな、と思いながらも、不快な気分にはならなかったので、撫でられるに任せて目を閉じた。
「七星、気持ちいい?」
まあな。
「だったら、ちょっとくらい尻尾でも振ればいいのに」
やなこった。
「もー、不愛想なんだから」
ゆきが楽しそうに笑う。俺は目を閉じたまま知らんぷりしていた。
頭上を、風と一緒に、ゆきの笑い声が通過していく。
……うん、まあ、気持ちいい。
***
ゆきは俺を相手にして、ぽつぽつと自分の境遇も語った。
それは決して楽しい内容ではなかったが、前方の山に目を向けて口を動かすゆきの表情は、さほど悲愴さを伴っていなかった。自分を憐れんだり悲しんだりする段階はもうとうに通り過ぎてしまったのか、そこにはただ、疲労感だけがあった。
ゆきは自分のことを十二歳だと言ったが、その横顔には、子供の持つ稚さがほとんど見えない。
話を聞いているうち、里の中で、ゆきがどのような立場に置かれているのか、少しずつ判ってきた。
両親は、ゆきが幼い頃に、流行り病で揃ってぽっくり逝ってしまったらしい。他に縁者のいなかったゆきは、里長のところで育てられることになったが、そこはあまり居心地のいい場所ではなかったようだ。
そもそも貧しい里である。戦に巻き込まれる心配はあまりないといったって、日々の糧はとても足りているとは言い難い。男も女も老人も、身を粉にして働いてやっとかつかつ、という状態の中、身寄りのない子供なんてのが厄介者としてしか映らないのも無理はないことだったのだろう。
ゆきは、物心がつきはじめた時にはもう頑張って働いていた。掃除も洗濯も、言いつけられれば必死でやった。幼い子供なのだから、足りない部分があったとしても、しょうがない。それは本人の責任ではないはずだ。
里長はそれでも、「力でねじ伏せようとしない」という点で、まだ優しいほうだったらしい。問題はその女房で、こちらは自分の三人の子供ばかりを可愛がり、ゆきのことはやたらと敵視していた、
小さな手にあかぎれを作り、一日足を棒のようにして動き回っても、女房には、「このただ飯食いが」と白い目で見られる。おそらく、余裕のない日々の中で、庇護者のいないゆきは、格好の鬱憤のはけ口でしかなかったのだろう。少しでも失敗をすれば容赦なく打ち据えられ、飯を抜かれ、家の外に出されることも日常茶飯事だったそうだ。
里の中で、長は絶対権力者であるから、里人たちも敢えてその女房の意に反するようなことはしない。結果、ゆきは味方も得られず、孤立した。そういうことに敏感な子供らは、こぞってゆきを苛めるようになる。大人たちは誰もそれを咎めないと知っているからだ。
特に、里長のところの三人の餓鬼がその筆頭であったらしい。底意地の悪さは母親に似たのだろう。陰に陽に悪質な嫌がらせを繰り返す。里長の家に住まわせてもらっているゆきにとって、安住の地はどこにもないも同然だ。
ゆきに救いの手を伸ばしてくれる者は、誰もいなかった。
***
……しかし、そんなことを続けていれば、当然、他の人間に不審を抱かれる。
ゆきが頻繁に里からひっそりと姿を消すことに気づいた里長の子供たちは、ある日、山の中へと分け入っていくゆきの後をひそかに尾けた。おそらく、母親の指示もあったのだろう。
獣道を進む途中のゆきがそれに気がついて走り出すと、かえって勢いづいて囃し声をあげながら追いかけてきた。
林立する木々の中を逃げ回るゆきは、どんなに怖かっただろう。弱者を力で押さえつけることに娯楽性を見出して喜ぶようなやつらは、一度歯止めがかからなくなると、何をしでかすか判らない。走っても走っても相手は諦めず、笑いながら、追い詰め、回り込み、執拗に手を伸ばしてくる。
そして、とうとう捕まった。
いつものように崖のところで待っていた俺は、ゆきのか細い悲鳴を聞いた。
ぱっと立ち上がり、地面を蹴って、走り出す。
木の根を飛び越え、葉を散らし、枝をはねのけて、風のように疾走した。
ようやく見つけたゆきは、暗い山の中で、泥にまみれ、泣いていた。
「こいつ、仕事をさぼって、こんなところで遊んでやがったのか」
「生意気なやつには、お仕置きしてやんねえと」
「おまえなんて、里のお荷物のくせに」
地面に這いつくばったゆきを、一人が足で思いきり蹴りつけた。悲鳴を上げて転がったゆきの身体を、別の一人が強引に持ち上げて、後ろから羽交い絞めにした。さらにもう一人が、ゆきの涙に濡れた頬をひっぱたく。
三人の子供たちは、陰湿な顔つきでゆきを囲み、距離を縮めた。子供といっても、もう十分な悪党だ。身体もそこそこ大きいし、力もある。
舌なめずりしそうな表情で、一人がゆきの着物の合わせ目に手をかけた。
「……ここなら、大きな声出しても、誰にも聞こえねえな」
「うん」
あとの二人も、息を詰めるようにして同意した。いたぶることは出来ても、母親の監視の元では出来なかった類の悪さをすることに、三人揃って暗黙の了解を交わしたらしい。下劣な好奇心に満ちた視線が、一斉にゆきの剥き出しの足に向かった。
俺は吼え猛り、一気に跳躍した。
いきなり獣に飛びかかられて、悪童たちは心底仰天した。蜘蛛の子を散らすようにゆきから離れたが、俺は容赦しなかった。
腰を抜かした三人に次々に襲いかかり、その腕に、肩に、足に牙を食い込ませた。飛沫を上げて赤い血が噴き出したが、それでも許さなかった。首を狙わなかったのが、唯一の慈悲だ。本当は、どいつもこいつも喉笛を噛み砕いてやりたかったくらいだが。
しかし俺がつけた傷は、この先も一生残り続けるだろう。
それを見るたび、この時の恐怖を思い出すがいい。
血だらけになった三人は、青い顔で泣き叫び、足を引きずりながら、這う這うの体で山を下っていった。
逃げていく三人の後ろ姿を、グルルルと唸り声を発しながら睨みつける。こんなに攻撃的な気分になったのは、生まれてはじめてだ。他の犬と戦った時でさえ、ここまで気を昂らせたりしなかった。
「……な、七星」
震えた声を出し、ゆきが俺に手を伸ばしてくる。
しがみつくように俺を抱いて、ゆきは大声を上げてわあわあ泣いた。今まで溜まっていたものが噴出したかのように、思いきり。
「も、もう、いやだよう……あたし、もう、里には戻りたくない」
それがいいさ、と思いながら、俺は鼻面をゆきの顔にくっつけた。
***
俺はゆきを自分がねぐらにしている洞窟へと連れて行った。
雌犬だってここには連れ込んだことがないんだぞ。狭い穴の中は、俺とゆきが入ったら、それでもういっぱいという状態になった。自分の寝場所に、自分以外の匂いが充満する。変な気分だ。
これからゆきは、ここで俺と一緒に暮らせばいい。俺は里の連中のように、ゆきをこき使ったり、殴ったりしない。話し相手にだっていつでもなってやる。聞くだけだけど。
そのガリガリな身体に肉がつくように、食い物も俺が用意しよう。こう見えて、狩りは得意だ。
早速洞窟から出て、獲物を仕留め、勇んで持ち帰ると、ゆきはそれを見下ろして複雑そうな顔をした。
「……七星、気持ちは嬉しいんだけど、あたし、死んだネズミはちょっと……」
なんだ、我儘なやつだな。
好き嫌いを言っている場合じゃないんだがな、と思いながら、しょうがないからまた穴を出て、次の食糧を調達してきた。
ゆきの前に、口に咥えたそれを、ポトリと落とす。ゆきは一瞬、「ひっ」と小さく息を呑んだが、引き攣った顔でぴくぴくと唇を上げた。
「あ……ありがとう、七星。ヘビ……は、食べられるらしいもんね。な、生のままではどうなのか、ちょっと、よく、わかんないけど……」
もごもごと呟くその口許は笑っているのだが、眉は下がってなんだか泣きそうだ。どうやらこれも気に入らないらしい。じゃあ他に何か、ともう一度外に出ようとしたら、ゆきに止められた。
「あ、ま、待って、七星。ご飯はいいから、ここにいて。一人になったら寂しいよ」
俺は振り返り、少し迷ってから、結局洞穴に戻ってゆきの隣に蹲った。
ゆきがぺたりと凭れ、俺の身体に腕を廻す。
「七星、ありがとう。このまま、あたしと一緒にいてね」
小さな声が耳元で囁かれて、くすぐったい。ほとんど身動きも出来ないくらいに狭苦しいが、あまり気にならなかった。こうして寄り添っていると、ゆきの息遣いがすぐ間近に感じられて、ほっとする。
ゆきはそれから、少しだけくすんくすんと泣いてから、俺に抱きついたまま眠ってしまった。
首を捩ってその泣き顔に、ふんふんと鼻を寄せる。子供っていうのは、こうしてくっついていると、えらくあったかいものだな。ゆきの薄い皮膚だと、この洞窟の地面はちょっと冷たく感じるかもしれないから、もっと俺の上に乗っかってもいいくらいだ。
安らかな寝息に誘われて、俺も大きな欠伸をした。
これから、ゆきは俺とずっと一緒だ。たくさん食べさせてやらないと。起きたら、今度は何を獲ってこようか……
肉体的にも精神的にも疲れていたのか、ゆきはそれから結構長いこと眠った。
寝ている間、俺はずっとゆきの傍にいた。この間に食い物を見つけに行こうかと迷ったが、憔悴したように眠り込んでいるゆきを見たら、とてもではないが一人で置いていく気にはなれなかった。
ここは山の中だし、何があるか判らない。他の獣が寄ってくるかもしれないし、里のやつらがやって来てゆきを連れ帰ってしまうかもしれない。俺がゆきを守ってやらなければ。
ゆきが目覚めたのは、とっぷりと夜も更けた頃だ。もう周囲は闇に包まれ、月明かりだけがぼんやりと景色を浮かび上がらせている。ゆきは目を開けてしばらく、状況が摑めないようにぼうっとしていたが、ようやくここに至った過程を思い出したらしく、しょんぼりと両肩を縮めた。
「……あたし、これから、どうしよう」
小さく折り畳んだ両足を、両腕で抱え込んで、途方に暮れたように呟く。
なに言ってんだよ。ゆきはこのまま、ここにいればいいんだよ。心配しなくても、ちゃんと俺が面倒見てやるよ。
俺はゆきの正面に座って、そう答えてやりたかった。元気づけて、励まして、安心させてやりたかった。また笑わせてやりたかった。だけど、言葉の出せない俺には、そのやり方が判らない。鼻を寄せても、前脚を腕に乗せてやっても、ゆきの心細そうな表情は変わらなかった。俺こそ途方に暮れた。
こんな時、どうすればいいんだ?
そこで、ひとつ思いついた。
そういえば、以前──
が、それを試してみようと思った寸前、俺の耳がぴんと立った。
かすかな音を捉えたのだ。まだ遠いが、確かに聞こえる。ガサガサと茂みをかき分け、地面に落ちた枯葉を踏みしめる音。
誰かが歩いている。獣ではない、人間だ。しかも複数いるらしい。ぼそぼそと小声で喋りながら、こちらに近づいてくる。
俺が毛を逆立ててグルルと唸りはじめたので、ゆきは目に見えておろおろした。「なあに?」と押し殺した声で問う。
「さ……里の誰かが来たの?」
いいや違う。里人ではない。俺の鋭い嗅覚は、もっと嫌な臭いを嗅ぎつけていた。
鉄と血の臭い。
ガシャンという重そうな金属の音もする。
穴から頭だけを出して窺うと、木立の向こうに、ぽわんと明るい松明の炎が見えた。そこにいるのは五人。いずれも大柄な男だった。
闇の中に浮かび上がる男たちの人相は、里の悪たれたちなどとは比べ物にならないほど、醜悪かつ凶暴そうだった。俺がかつて戦場で見たような鎧や具足を身に着け、腰には刀を差している。あそこでは、これと同じ格好をした雑兵が、たくさん死んでいたっけ。
「──小さい里だが……」
男たちは歩きながら、ひそひそと何事かを相談していた。こんな山の中だというのに、何かを憚るように押さえつけた声が、かろうじて風に乗って流れてくる。
「窪地になっているし、近くには他の里もない。多少暴れたって構やしねえ」
「なに、食い物と酒とがあって、若い女さえいれば、それでいいんだから……」
「寝静まっている今のうちに、一気に襲えばいい」
「あとは火を点けて……」
俺の近くで耳をそばだてていたゆきが、かたかたと小刻みに震え出した。
男たちは、俺とゆきに気づかなかった。まさかこんなところに、犬はともかく女の子がいるとは思いもしなかっただろう。一通り打ち合わせをして話をまとめると、下卑た笑い声を立ててふもとへの道を辿って行った。
「な、な、七星」
男たちが去っていくと、ゆきがぎゅっと俺の毛皮にしがみついた。月明かりに照らされて、その顔色は真っ白になっていた。
「あ、あいつらきっと、野武士くずれの野盗だよ。里を襲って、略奪していくつもりなんだ。野盗は冷酷で、やる時は徹底的にやるって聞いた。み、みんな、殺されちゃう」
泣き声になってそう言うと、ゆきは震える足で立ち上がった。
「里長に、知らせないと。あ、あいつらよりも先に行って、みんなに教えてあげないと。近道を通っていけば、間に合うかも」
里の方角に顔を向けて、一歩を踏み出す。
俺はゆきの着物の袖の端を咥えて、止めた。
「七星?」
ゆきが驚いた表情で振り返る。俺は袖を離さず、ぐいっと引っ張った。
行くな。
なぜ、ゆきがそんなことをする必要がある? 里の連中はどいつもこいつもゆきを助けちゃくれなかったのに、どうしてゆきが危険を冒してまでやつらを助けなければいけない? ただでさえこの夜道だ、明かりもなしで無事に山を下っていくことは難しい。間に合ったとしても、里の連中が、ゆきの言葉をすぐに信じてくれるとは限らない。下手をしたら、ゆきまで襲撃の巻き添えになってしまう。
くだらない。人間は人間同士、勝手に争って死んでいけばいいんだ。
ゆきは、ここで俺と暮らす。
「一緒にいて」って、そう言ったのは、ゆきだっただろう?
「……ご、ごめんね、七星」
ゆきは両眉を下げ、顔をくしゃくしゃにして、謝った。
「あいつら、里に火を点けるって、言ってた。このままじゃ、里がぜんぶ燃えちゃう。あたしの帰る場所が、なくなっちゃう……!」
悲痛な声で迸るように出されたその言葉を聞いて、強く噛み合わせていた牙から、力が抜けた。
するりと、俺の尖った口からゆきの着物の袖が外れる。ゆきは目に涙をいっぱいに溜めて、俺を見返していた。
……そうか。
ああ、そうか。
ゆきも結局、「人間」なんだな。
人は人としか、暮らせない。どんなに仲間外れにされても、どんなに弾かれても。
人と犬とでは、どうやったって、心を通わせることなんて、無理だったんだ。
ゆきの帰る場所は、ここじゃない。
「ごめんね、七星!」
泣き叫ぶようにそう言って、ゆきはくるりと背中を向けた。
駆けていく足音が、遠ざかる。
俺はじっと闇を見つめていた。
***
崖の上からは、立ち昇る黒煙がよく見えた。
さっきまで響いていた里人たちの混乱した喚き声、怒声、悲鳴が、徐々に小さくなっていく。
結局、ゆきは間に合わなかったか。いいやあるいは、間に合ったとしても、ゆきの懸命な忠告に、まともに耳を貸す人間がどれだけいたのか疑問だ。散々これまで虐待してきた子供が自分たちを助けるような真似をするなんて、そもそも後ろ暗いところのある里人たちに、信じられるわけがない。
邪悪な心持ちの人間は、他の人間だって邪悪だと思うものだ。自分が清廉さを持ち合わせないから、他人の中にあるそれも見えない。犯した罪は、そういう形で、本人の元へと返っていくのだ。
ゆきはそれでも、里中を走り回って、叫んだだろうか。危ない、逃げてと。野盗が来るよと。あの小さな身体で、細い手足で、声を嗄らし、力を振り絞って。
その結果が、これだ。
俺は四つ脚で立ち上がり、歩き出した。
バチバチと炎の爆ぜる音がする。
野盗たちは、手当たり次第に火を放っていったらしい。闇の中に、長い舌を伸ばす炎が里の家々を燃やし、周囲を赤く染め上げていた。
狂ったように炎が踊り、火の粉を吐き出し、おびただしい黒煙を上げる。しかしもはや、人の声はどこからも聞こえない。里人たちは野盗に斬り殺され、あるいは逃げ出し、あるいは火に巻かれ、その場所にはもの言わぬ無数の亡骸が転がっているだけだった。
熱気が風に吹かれて渦巻く中を、俺は進んでいった。
死人の中には、年寄りもいれば、赤ん坊もいる。崩れた家の下敷きになって絶命している者もいたし、血溜まりに横たわっている者もいた。どの顔も、自分に起きたことが信じられないかのように、大きく目を見開き、口を半開きにしていた。
ちょっと前までは、安楽な眠りを貪り、平和な夢でも見ていたのだろう。ぽっかりと虚空を見据える目は、天に向かって訴えかけているようにも見えた。
……命とは、こんなにも脆いものかと。
覚えのある匂いがすると思ったら、ゆきを取り囲んで乱暴狼藉を働いた里長のところの三人の子供が、固まって倒れていた。死ぬ時でさえも、一人では行動できなかったか。とすると、その三人をかき抱くようにして倒れているのが、性格の悪い里長の女房だな。嫌なやつだが、一応それでも、血の繋がった子供に対しては母親としての情があったらしい。
俺は少し匂いを嗅いだだけで、すぐにその場を離れた。
火炎は勢いを増し、激しくなっていく一方だ。ここは周囲を山に抱かれた窪地になっているから、一度火が点けばもうお終いだろう。このまますべてが灰燼に帰すまで、まるごと蒸し焼きになっていくしかない。
充満する煙の切れ間に、ようやく、俺は見つけた。
小さな家の陰に、うつぶせになって倒れている子供。
ゆきは背中を斜めに斬りつけられていた。
みすぼらしい着物は刃物によって裁断され、そこから赤い血が流れだしている。逃げ出す里人だって多かっただろうに、ゆきはきっと、精一杯踏ん張って、野盗たちの無法行為を少しでも食い止めようと奮闘していたのだ。
俺はそこに近寄って行って、ふんふんと音をさせ、汚れた顔に鼻をくっつけた。
ぴく、と指の先が震え、緩慢な動きで小さな頭が揺れた。
「な……なな、ほし……?」
そうだよ、俺だよ。
「来て、くれたの……ご、ごめん、ね、あたし、やっぱり、間に合わなかっ……」
いいんだ、ゆきはよくやった。よく頑張った。里の誰よりも、勇敢だったよ。
「……ごめん……」
薄っすらと開かれていた目は、次第に焦点を失いつつある。
俺はくるりと廻って、ゆきに自分の背中を向けた。
「なな……」
もうあまり呂律も回らなくなってきた声で、俺に呼びかけようとしていたゆきは、俺がその顔のすぐ前に自分の尻を向けて座ったことに気づき、口を閉じた。
バサ、と俺は自分の尻尾を振った。
パタパタパタ、と力の限り思いきり振り続ける。もしかしたら、ゆきの目にはもうあまり見えないかもしれないから、顔に尻尾が当たるようにして振った。せめて感触で、気づいてくれるといいのだが。
ゆきの手が、もうほとんど動かす力も残っていないだろう小さな手が、ぶるぶると震えながら、そっと俺の尻尾に触れた。よかった。判ってくれたらしい。
以前、ちょっとくらい尻尾でも振ればいいのに、って言っていたからな。
──これで、笑ってくれるか? ゆき。
「……ふ……ふふ……」
ゆきは笑った。目を細め、嬉しそうに。
炎の照り返しを浴びて、頬を伝う涙がきらきらとした輝きを放っている。
「七星──あ、ありが、と」
俺に触れていた手が、ぱたりと地面に落ちた。俺は自分の鼻をゆきの顔に寄せた。黒い目はまだこちらを向いているのに、ゆきはもう、俺を見てはいなかった。俺の名を呼ぶことも、俺を撫でてくれることもない。口元だけは未だ、笑いの形を残しているけれど。
目を開けながら寝るなんて、困ったやつだ。
しょうがねえなあ。
やっぱり、ゆきは俺がずっと傍にいて、面倒を見てやらないと。
俺はゆきの顔をべろりと舌で舐めた。
血と涙でぐちゃぐちゃになった頬っぺたを、遠慮会釈なくべろべろと舐める。ざらざらした舌はくすぐったいかもしれないけど、ゆきはもう文句を言わないからいいだろう。
……ああ、もっと前に、こうしてやりゃよかったなあ。
じゃれ合って、その顔に舌を這わして、思いきり尻尾を振るところを、ゆきに見せてやればよかった。そうすれば、ゆきはきっともっと笑ってくれただろうに。
俺は馬鹿だ。自分の気持ちをゆきに伝えるすべさえ、なんにも知らなかった。
一通り舐めてゆきの顔を綺麗にしてやると、俺はその細い身体の上に、圧し掛かるようにして乗っかった。重いかな? まあ、ちょっと勘弁してくれよ。
月が輝き、無数の星が瞬く、美しい夜空。それを焦がすようにして赤い火柱が立つ。いずれ炎の海は、この小さな集落のすべてを呑み込んでしまうだろう。降ってくる火の粉がなるべくゆきの上にかからないように、俺は背中を伸ばしてうつぶせになった。
風と共に熱気が押し寄せる。じりじりとした熱さと息苦しさにじっと耐えて、俺はゆっくりと、目を閉じた。
山のずっと向こうにあるかもしれない常世の国に行ってみたい、と言っていたゆき。
よかったな、その夢はもしかしたら叶うかもしれないぞ。
ゆきがこれから行くところは、きっと美しく、平和で、すべてが優しい世界だ。そうに決まってる。
俺は──そうだな。
俺は特に、常世の国なんてものに、大して興味はないんだけどな。不老不死になりたいとは思わない。永遠の若さが欲しいわけでもない。食い物だったら、どこでだって自分で探す。
ただ。
俺がこれから行くところに、ゆきがいてくれたら、それでいい。
今度こそ、ゆきの名を呼んで、自分の手で頭を撫でてやれたら、それがいちばんいいんだけど。
でももしもそれが無理なら、別にこのままの姿だって構やしない。次こそ間違えたりしないから。ちぎれんばかりに尻尾を振って、勢いよく飛びついて、仔犬みたいに抱っこをせがんで、べろべろとあの顔を舐め廻してやるんだ。ちょっと恥ずかしいけどな。
そうしたら、ゆきはきっとまた、笑ってくれる。
……ゆき。
俺に「七星」という名前を与えてくれて、ありがとう。
ゆきに名前を付けられたあの瞬間から、俺は「そこらをうろつきまわるなんでもないただの犬」ではなく、「七星と他者から認識される犬」になった。
それはひどくちっぽけなことで、けれどそれでも、ものすごく重要なことだった。
本当に、大事なことだったんだ。
人がばたばたと死んでいく、戦国の世。
人間は愚かで浅ましく、その上、残酷だ。
だけど、そうではない、ものもある。
命は確かに儚く、脆い。
──でも、生が虚しい、とは限らない。
廻ってきた炎が俺とゆきを包み込む。閉じていた目をちらりと開けてみれば、ゆきの着物や、俺の毛皮に火が移って、次第に燃え広がっていくところだった。ああ、熱いな。洞窟の中で、ゆきとぴったりくっついていた時みたいだ。ゆきの身体はぽかぽかして、暑いくらいだったからな。
すぐ傍には、ゆきの匂い。
あの時と同じ充足感が、ゆるゆると全身を占めていった。
気持ちのいい眠気が押し寄せてきて、もう一度、目を閉じる。
起きたら、ゆきと何をして遊ぼうか。
俺は満足だった。