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幸せな物語〜表〜  作者: 鍋の猫
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よろしくお願いします!

 旦那さまは優しい。

 だからこそ、何故私の様な素性も知らないような人を傍に置くのか分かりません。


 旦那さまは天山と呼ばれる天の使いが住んでいるとされている山の近くの森に捨てられていた私を拾ってくださいました。

 旦那さまが言うにはそのときの私は小さな赤子だったらしく、神聖な山の近くの森ということだけあって人間が安易に踏み込める場所ではなかったようです。

 旦那さまは私を発見したときすごく驚いたらしく、数分悩んだ末私を家へ連れ帰ることにしたようでした。

 旦那さまは相当えらい(?)方のようで普段はこの国の王様の次ぐらいにえらい(?)らしくそんな旦那さまが突然持ち帰ってきたということもあってその日は旦那さまの執事曰く『てんやわんや』していたそうです。


 それから、旦那さまには今の今まで良くして頂きました。服の着方からご飯の食べ方、果ては旦那さま自ら私に勉強を教えて下さいました。


 そんなこんなで私も17歳になりました。


 この国では17歳から結婚できるとされていて、私はもちろん17歳となった少女は結婚相手を探すため舞踏会に出るとされているそうです。

 私としては結婚とはどういうものかよく分かっていないので旦那さまから何か言われない限りそういうことは何もしませんが、少し羨ましいとは思わないこともないです。


 私は旦那さまに良くして頂きました。ですが、ひとつ思うことがあるのです。それは、私の背中にある傷のことです。その傷は2本縦に入っており、まるで何かを切り取られたような傷なのです。

 私が物心ついた時からあり、旦那さまにその事を尋ねても元からあったの一点張りなのです。


 あれから3年が経ち、私も20歳になりました。この国では立派ないき遅れのおばさんらしく、侍女の方や執事の方から哀れさを込めた目で見られます。


 20年間ずっと知らなかった事なのですが、旦那さまはエルフという種族らしくすごく長命らしいのです。どおりでいつまで経っても見た目が20代後半なのだと合点がいきました。


 最近、何故か無性に空を見る日が増えました。何故かは分かりませんがとてつもなく恋しくなるのです。何故でしょうか……


 旦那さまは最近家にいることが少なくなっており、毎日朝早くから夜遅くまで帰ってきません。

 少し寂しいのですが忙しい時に迷惑をかけてはいけないと教わったのでこの気持ちは蓋をしておきます。


 毎晩夢を見ることが増えました。夢の内容はすごく単純で、でもどこか懐かしいようなそんな気がする夢なのです。それは、私が空を飛んでいる夢です。ただそれだけなのに何故か悲しくなるのです。


 旦那さまから珍しく夜に呼び出されました。内容からいうとどうやら、長年住んでいた家とは別にこの国のお城に近い場所に家を建てたのでそちらに移ろう、というのです。私としてはいつまでも旦那さまの傍にいられるのは嬉しいのですが…………嬉しいのですが、何故か心の中では行きたくないと言う自分がいるのです。


 引っ越しの日が近づくにつれて私自身どうすればいいのか分からなくなってきました。

 だからこそ、旦那さまに訪ねに行くことに決めました。これは旦那さまとの約束で、私がもし何か迷うことがあれば必ず旦那さまに言う、と約束していたからです。

 夜遅く、旦那さまに言う機会ができたのでそのことを伝えると旦那さまは優しげに笑いながら「それはね、住み慣れた家を離れてしまうから寂しく思ってしまったんだよ、人間誰しも思うことなだから君は気にしなくてもいい。」と言い、私の頭を撫でながら仰ってくれました。そして、急遽仕事が入ったため早急にお城に近い家に住まなければならない、と旦那さまは仰ったため引っ越す日の1週間前に新しい家に移ることになりました。


 ここに住んで、約5年経ちました。あの時のような空が恋しくなるようなことは起こらず、旦那さまと楽しく暮らしています。

 先日は、旦那さまから結婚を前提にしたお付き合いを仰ってくださり心の底から喜びました。

 旦那さまはとても優しい方です。

 私はそんな旦那さまに会えてとても良かったです。

 ずっと愛しています、旦那さま……。

お読み下さりありがとうございました!!

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