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15日の8時


その後、また私は牢屋に戻された。


「あーあ。せっかくなら江戸見物したかったなぁ~!」

『そんな事言ってる場合?』

「だって、リアル江戸村だよ?気になるじゃん。それにしても……寒っ~!」

『そりゃ1月だからね。』

1月か……1月にこの格好って…………いやいや、マジないわ。


「寒いよ~!寒い~!死んじゃうよ~!」

私が騒いでいると、役人のおじさんがやって来て言った。

「うるさい!そう簡単に死んだりせん!出ろ。」

え?出ていいの?


牢屋を出て、屋敷の門の所まで来ると、1人の男の人が待っていた。初対面なのに、何故かホッとした。きっとこの人は私の事を知ってる。そんな気がした。

「お清……。」

「……………。」

この人も、お清って呼ぶ。


ここでも、私はキヨって名前なんだ……男の人は先に歩いて行った。私はその後ろ姿を見ながら、なんとなく、その後をついて行った。


「お清、おめ、なんじょん心中なんしよ思った?」

ぶーーーっ!!え?は?何語?い、いけない……。笑う所だった。ここ、笑っちゃ……いけない所…………。

「ぶあはははは!!」

無理だった。

「笑いごっちゃねえ!!」

急に大声で怒鳴られた。……そうだよね……心中って……自殺なんだもんね。


「あ……ごめんなさい。私……忘れちゃったの。全部、忘れた。」

「忘れた……?まぁ、そん方がいがっぺ。………じゃあ、かえっか。」

帰る?どこに?…………て、さっきから何でこの人の言ってる意味がわかるんだろう?


「帰るって……どこに?」

「どごっておめ、伊勢屋の散茶だっぺ?」

伊勢屋の散茶?って……何?


「なんだ?おめ、ほんとにお清か?喋っ方、さっきっから変だ。」

喋り方が変って……いやいや、そっちのが変だから!

「名前、あなた名前は?」

「……ほんに覚えてねぇか?左次衛門だ。」

左次衛門……。全然思い出せない。思い出せねぇっぺ!あ、ごめん、今のは少し馬鹿にした。


「左次さん、あなたが牢屋から出してくれたの?」

「あぁ。伊勢屋行ったら、おめ、いんくて、川で心中したって聞いて……」

左次さんは少し困った顔をした。

「ありがとう。左次さん。」

どうしてだろう。私、左次さんのそんな顔が見れて、なんだか嬉しい。ニヤニヤしちゃう。


伊勢屋に帰ると、私はきついお仕置きを受けた。こんなに叩かれるなら、帰って来るんじゃなかった。


私は木にくくりつけられてそのまま放置されていた。その様子を見て、通りかかった女の人達が言った。

「あれ、お清。えらく長い初詣だったね~。」

「あっちはてっきり七福神巡りにでも行ってるのかと思ってたよ。」

そう言って笑っていた。くっそ~!会話の内容が、悪意なのか善意なのか全然わからない。ただ、ここは死ぬほど寒い……。


「今、何日?」

「今日かい?とをかあまりみっつだよ?」

とをかあまり?みっつ?って?10日とあまり3日?13日って事?………どうして日にちなんて気にしてるんだろう。今まで、気にもした事なかったのに………


とをかあまりいつつ、辰の刻


ふと、その言葉が頭をよぎった。

「辰の刻って何時?!」

女の人達は顔を見合わせて、首をかしげた。そりゃそうだ!それはおかしい。だって、8時って何時ですか?って質問してるようなもの………8時?15日の8時……には何があるの?明後日の朝8時……私はどこに行けばいいの?


夜になると、ぐっと冷えて、さすがに家の中に入れてもらえた。普通なら、このまま凍死する所だったと思う。きっと、私の様子がおかしい事に免じて、今回はこれで許されたんじゃないか。そう、同じ部屋の女の子達が噂してるのを聞いた。私は疲れて……板みたいに薄い布団の上に乗ると、すぐに意識がなくなった。


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