会いたかった
19
頭がボンヤリして、その日私は正常な判断ができなかったんだと思う。
私は、星野君の持っていた写真集を無理やり取って、油性ペンで星を繋いでカタカナ2文字の言葉にした。
「あ……何するんだよ!!」
そして、それを、彼に見せた。
その写真集を見た星野君は…………下を向いて小さな声で言った。
「…………………ごめん……。」
その後、星野君は何か言ったけど、何て言ったのか聞こえなかった。
「………………。」
もう、何も考えられなかった。
「その、写真集、気に入ったなら吉沢さんにあげるよ……。」
星野君はいらないんだ。この写真集も、私の繋いだ言葉も……。
全部………星野君はいらないんだ。
私なんて…………いらない。
『やっぱり……帰りたくない。』
多分、私は、何かがあったから死にたくなったんじゃない。何もなかったから、死にたくなったんだ。
『安西さん、私このままここにいてもいい?』
安西さんは急に不思議な格好をしていた。何?その格好………昔の成金みたいな肩が直角なスーツ……。
『しもしも~?ララ、どうしたの?この時代気に入ったの?僕も気に入ったよ~!毎日がお祭りみたいだね~!バブルってスゴいんだね~!あと数年もすれば、どんどんゲーム発売されるし!楽しい時代だな~!』
『キキ……めちゃくちゃ楽しんでるね……。ってキキ!?』
よく見たら安西さんじゃなかった。安西さんと同じくらいの男の人だったから、区別がつかなかった。私は、気分が沈んで、キキと一緒に楽しむ事ができなかった。だって………ここには、本当に会いたい人はいない………。
会いたくないのに、会いたいって矛盾してる。
『キキ、いつの間に来たの?あれ?安西さんは?』
『安西さんは還ったよ。』
どこに……?
『ここにいてもいいけど、星野さんが17歳になった時にはララ、もうババアだよ?』
「それやだ~!絶っ対ババアって言われる~!星野君なら絶っ対言う!」
『負の信頼が揺るがないね。そもそも同じ歳じゃなきゃ出会ってないからね?初対面にババアって言う人普通いないと思う。あ、星野さんは普通じゃなかったっけ………。』
『あーあ、そんな風に思うのに、どうして……星野君の事ばっかり思い出すんだろう。腹立つ!』
『だって…………それは、僕が星を繋いだからだよ。』
………星を、繋いだ?だって、写真集も星もペンも関係ないって…………
『時の旅人には、どの星と星でも繋げられる。』
キキは星の写真集をリュックから出した。それ、まだ持ってたんだ……。
『星の数ほどの人の中で、人と人が繋がって、その子供はまた誰かと手を繋ぐ。そうして、積み上げてきた偶然が僕達なんだね。』
写真集をめくりながら、キキは悲しそうな顔をして、少し笑った。
『僕達は、この星の、記憶という荷物を積んだ宇宙船なのかもしれないね。ララは、どこへ行きたい?』
『どこへ…………?』
キキにそう聞かれて、答えられなかったけど………本当は、一瞬頭に浮かんだのは、星野君の顔。
やっぱり、できるなら…………もう一度、星野君に会いたい。
『え…………』
そこには、星野君がいた。信じられない……………!
『星野君…………。』
『ララ、違うよ!彼は星野君じゃない!安西さんだよ!』
キキに腕を捕まれたけど、キキの声はどんどん遠くに聞こえて、やがて聞こえなくなった。星野君だ…………。会いたかった…………!!
おばあちゃんは言っていた。時の旅人に、ついて行ってはいけないと…………。




