表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

タイムカプセル

18


私は近くのベンチにキキを座らせて話を聞いた。


話を聞くと、まず、キキはキキではなく、安西という人らしい。キキと同じ、時の旅人なんだって。どうりで………。


そして、安西さんは平成7年の阪神淡路大地震で恋人を亡くしてから、3年後に時の旅人になったみたい。20年近く後にも大地震が来ると伝えたら、とてもショックを受けていた。なるほど。それで平成7年に行きたかったんだ……。そして、…………さっき会った女子高生が、高校生の時の彼女……。


「でも、さっき、伝えてたい事があるって言ってなかったっけ?それって、神戸に行かないようにって伝えればいいの?」

「それは伝えた。伝えたのに、行ったんだ。」

「じゃあ……手紙とかは?あ、今すぐ渡しても不審がられてスルーされちゃうか。タイムカプセルとか埋めれば?」

「タイムカプセル……?」


何をどう説明すれば伝わるんだろう……ベンチに据わって悩んでいると、星野君の記憶をまた思い出した。



塾終わり、私は星野君に引き止められた。星野君は迷いながら、私にハッキリこう言った。


「多分、父の会社はもうだめだ。僕は、母方の実家に行く事になった。ここも今日でやめる。もう二度とここへは来ない。もう、二度と……会う事はない………。」

「え…………?どうして……?そんな急に……」

「急じゃない。みんなだいぶ前から噂してた。吉沢さんは……珍しく勉強に没頭してたから……言う機会がなくて……僕は……吉沢さんの邪魔は…………したくはない。」


心が折れる音が響いた。ポキッと。まるで、アスパラガスが根元から折れたような、間抜けな音だ。それは、星野君の音?私の音?それとも、どっちも?頭の中が真っ白になった。近づきたいって思ったのに…………。

「私のクッキー……理想だって言ってくれたのに…………」

私は、何を言ってるんだろう…………。


「この先、一生クッキーを食べなくても、生きてはいける。」

そりゃそうだ。クッキーなんて、生きて行くには必要ない。生きては行けるけど…………その生き方で後悔しないの?


星野君は話終わると、自分の席に戻って星の写真集を開いた。全然、写真集を見てるようには思えなかった。星野君は高橋と違ってバカじゃない。バカじゃないから、この選択を選んだ。それはきっと…………私のためだ。



安西さんが、立ち上がって言った。


「ララちゃん、もういいよ。もう一度美保に会えた。」

「もういいって何?美保さんの事、諦めるの?」

「ララちゃんに言われて思い出したんだ。美保が地震の直前、タイムカプセルを掘り起こしに実家に帰った。電話で言ってた。中の手紙に、高校生の時見知らぬ男に呼び出されて、目の前で泣かれたって。その人の涙が忘れられない。その人の涙をふいてあげれば良かったって。」


それは………正に、ついさっきの出来事だった。


ああ。美保さんは…………安西さんに、泣いて欲しくはなかったんだ。

「俺も、もう時の旅人はやめるよ。」

「え?やめられるの?」

「別に職業じゃないし。」

職業じゃないなら……無職?

「じゃ、ニート?」

「ニート?」

あ、20年前の人って微妙に言葉が通じないな……。


「ララちゃん、時の旅人になった時点で、現代には戻れないんだよ。色々な時代に行ったけど、結局、会いたい人は一人だった。その人に今日やっと会えた。もう、思い残す事はないよ。」


現代には戻れない……?


キキは…………戻れないの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ