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信じるもの

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夜になって、お父さんが帰って来て、家族みんなで夕御飯を食べた。ご飯は意外と普通の和食だった。ご飯の間、ずっとキキは黙っていた。すると、父親が口を開いた。

「セツ、どうだ?この前話した縁談の話は?進めても良いか?」

え?お姉ちゃんお見合いでもした?

『ねぇ、もしかして全部知ってた?………キキ?』

くっそ!また無視か!!

「はい。お願いいたします。お父様。」

お姉ちゃんも当たり前に返事した。え?井上さんの事はいいの?


食事を終えて、部屋に戻ろうとしたら、やっと、キキに話かけられた。

「キヨ姉様、今日はどうしたのですか?いつもはお喋りなのに、今日は少しもお話なさらない。」

はぁ?この話し方…………キキじゃない。本当に?本当にキキは私を置いて、違う時代へ行ったの?私…………本当に置いて行かれたの………?


「そうなのよ。今日のキヨは何だか少しおかしいのよ。夕方だって、突然自分から男性に声をかけて、家へ連れて来るなんて……。」

ちょうどそこへ父がやってきて、その話を聞かれてしまった。

「セツ、今何と言った?自分から男を家へ呼んだ?」

ヤバい…………!!その場にいる姉弟全員が怯えた。

「この恥知らずめ!!」

私は…………思いっきり平手打ちをされた。


っ痛い………。頬がめちゃくちゃ痛い………!!

「キヨ!!」

もう嫌だ!こんな所……!!

「お待ちなさい、キヨ!!」


私は家を飛び出した。暗い夜道をただただ真っ直ぐ走り続けた。とにかく、ここじゃないどこかへ……どこか………………どこへ?そもそも異世界なのに、今さらどこへ行くの?いつの間にか、走る力がなくなった。


当たり前だけど…………完全に道に迷った。


こうなって初めて気がついた。信じられるものがあるって、幸せな事なんだ………。



「星野君、まずいのはわかるけど……あの女子はさ、好意で持って来た訳じゃん?もう少し、有りか無しか迷ってあげようよ。」

「明確な基準が出来てしまえば、迷う事はない。あのクッキーは僕の求める物とは違う。ハッキリわかる。」

それはそうだけど……

「でも、最近………僕は迷う事が多くなった。根底から覆れば、今まで信じていたものがなくなる。そうすれば、迷いが生じる。僕は……」

星野君は………何に迷ってたの?


今思えば、私は星野君を全然知らない。そういえば……キキの事も、何も知らない。ちゃんと聞いとくんだった。


まずは知る事から始めよう。今さら、知る事はできないかもしれないけど………もっともっと星野君の事、知りたかった。


その後、下働きのおじさんが迎えに来て、家に帰った。家に帰ると、家族みんなが待っていた。私の家族…………こんな風に、待っていてくれてるのかな?私………いつか……帰れるのかな?


数日が経って、井上さんが亡くなった事を風の噂に聞いた。そして、お姉ちゃんの結婚が決まった。


『ごめん、キキ……私が悪かったよ……。』

そう言うと、目眩がした。くそっ!性格悪いなあいつ……。


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