喧嘩
9
『それ、誰?』
え…………?キキの声に現実に引き戻された。玄関には、小さな声男の子が立っていた。
「おかえりなさい。弟の修です。この子は耳が聞こえませんの。」
『やあ!キキ。ただいま。ちなみに今回の痣は背中に……。』
「えぇええええええ!!!!だって、この人腕に痣が……」
私はテンパって男の人の腕を見る。
「え?痣?ああ、これ絵の具ですよ?」
「じゃ、この人誰?」
「誰って……誰でしょう?」
は?何この人!天然なの?嘘~!私本当にナンパしてたよ!!人生初のリアルナンパ!!生まれて初めて~♪ナンパ~した~♪夢のよう♪って替え歌歌ってる場合じゃない!
「この辺りでよくお見かけしますわ。風景画を描かれてるんですか?」
「はい。」
お姉ちゃんが取り繕うように話始めた。
「私、山本セツと申します。」
「セツさん……名乗るのが遅くなってしまいすみません。井上と申します。」
井上さんはどこか病弱そうで、少し心配になった。井上さんは絵をお姉ちゃんに見せて楽しそうに話をしていた。お姉ちゃんと井上さん、いい感じ~!
『キキ、私達はお邪魔だからあっち行こうか。』
『え……。』
私とキキは別の部屋に移る。部屋に入るとすぐ、キキは怒った。
『だから、何でララは勝手に星を繋ぐんだよ!』
「は?別に写真集の星繋いだ覚えないけど?」
写真集はいつもキキが持っていて、私は絶対触らせてもらえない。
『無理やり人と人を繋げば、繋がるの!何であの人を家に連れて来たんだよ!』
「キキが迎えに来るのが遅いからでしょ?!だってキキと間違えて井上さんを連れて来ちゃったんだもん!だったら最初っから弟だって言ってよ!!」
間違えたなら仕方ないじゃん……それに、井上さんはお姉ちゃんの想い人だし。
『ララがもう少し慎重になれば済む問題だよね?もうやだよ!もうララには付き合いきれない!』
「私だって、キキのセンスのない時代チョイスにうんざりだよ!」
こいつ、ムカつく~!
「ふんっ!」
私はキキを残して部屋を出た。
あいつマジ腹立つわ~!異世界じゃなかったら裏アカで呟いてたとこだったわ。
玄関に行くと、お姉ちゃんは、ちょうど井上さんをお見送りしていた。井上さんの後ろ姿を見るお姉ちゃんの顔は、少し悲しそうだった。
「行っちゃったね。」
「そうね。もう、ここに来る事もないわね。」
「どうして?また遊びに来てもらえばいいのに!」
せっかく知り合ったのに……
「井上さん、家業を継ぐために結婚なさるそうよ。」
「え?誰と?」
「ご親戚の方ですって………。」
当然、お姉ちゃんとではない。…………じゃあ、私、結果的に余計な事した?
「そんな顔しないで。キヨが連れて来てくれたから、ちゃんとお話できた。お話聞けて良かったわ。ありがとう。」
「………。」
そうかもしれないけど………。
『ねぇ、キキ……。』
少しだけ……キキに謝ろうかな……。とか思ってみたのに……
『シカトかよ!!』
別にいいもん。ここは裕福だし、食べ物に困ってないし、夜だって街灯あって暗くないし。




