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体育会系男子の自己理論  作者: 旧夢
第1章 始まりの刻
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Same Points With Me 意外なる交差点

「あの女が、俺と同じ境遇だってえ!」


 その驚きの事実についつい大声を出してしまった。

 周りを見回してみるが、人があまりいないのでセーフ、


「お客様、あまり大声は出さないでください」


 というわけでは、ありませんでした。でも、こういう場合「周りの人の迷惑になりすので」とか言ってくると思ったが、あいにく人がいないためそんなことは言ってこなかった。


「話を戻しましょうか。ええ、そうですよ。あんな大物の人じゃなければ、學美学園がくびがくえんの新入生代表なんて務まりませんよ」


 人は、生まれ育った環境によって成長の仕方が変わるって言われてるが、俺とあいつ生まれは似たような環境だってのにこの差かよ。

 俺とあいつの間には月とスッポンほどの差がこの高校生くらいの時についてるだった。


「だから、特にあなたと彼女は在校生や先生方から期待されていたみたいですよ」

「悪かったな!俺の方はこんな平凡なやつで!」

「いえいえ、僕は、そっちの方が嬉しかったので良かったですよ」


 ニヤッと笑みを浮かべる。俺は、その笑みに違和感を覚えた。まだ、知り合って間もないが、千秋がこんな邪悪な笑みを浮かべるなんて思ってもみなかった。


「何いってんだお前」

「いや、こっちの話です。で、どこまで話しましたっけ?」


 話をそらされた気がするが、まずは美戦を知ることが先だ。そう思い、疑念をぐっと抑える。


「彫刻の説明をしていたとこだ」

「そうでしたね。ええと、次は文芸ですね。文芸とは小説や物語を作ることですね。利点としては、絵画と比べて具現化できる範囲が広いということですかね。例えば、鳥を具現化するとしましょう。その時、絵画では、だいたいの形を描いてそれを少しづつ改良していくという方法が一般的です。しかし、文芸では具体的な強さを決めることができるのです。大きさを詳しく説明したり、本来鳥には存在しない力を加えたりとそれはそれは、色々なことを足すことができるのです」

「じゃあ、文芸って最強の能力じゃないのか?だって、ありとあらゆることを羅列したら最強の武器になるじゃねえか」


 素直な疑問だ。今までの説明通りなら文芸以外のバランスはかろうじて取れていた。だが、ここだけはそれが感じられなかった。

 なんたって文芸にはデメリットがない。


「まあ、そうですね。しかし、そんな強力な生物を具現化できる人なんてほんの一部の人だけですよ。たいていの人は、よくて普通ぐらいの鳥、少し間違えたら具現化すらできませんよ」

「なんでだよ?」

「それはですね。文芸には、矛盾があってはならないのですよ。さらに、文芸には致命的な弱点があってですね。それは、うまい表現でなければ具現化しないということです。例えばですけど、燃える鳥を具現化したい場合。ただ、燃える鳥と書くだけではダメなんです。まあ、私に文芸の才能は無いんでいい表現が見つからないんですけど。それにより、文芸の中に、自分で作ったものを具現化する人は少ないんですよ」

「じゃあ、どうやって戦うんだよ、文芸は?」


 それだと逆に弱すぎる。だって、今の言葉だと普通の人だと使えない玄人武器ということになる。


「そう言うと思ってましたよ。今説明したのは文芸の中でも一つ目の戦闘方法で文芸にはもう一つの具現化方法があるんです。それは、読書です」


 読書って……。そんなんでどうやって戦うんだよ。


「読書というのは著名人が、書いた文を使い具現化するという方法です。これならば誰だって具現化させることができるんですよ。まあ、自分で書いたものより、多く流通していることもあり、弱点とかもすぐばれてしまうですけど」

「うまい具合に強くなりすぎないようにできてるんだな美戦って」

「そうですね。じゃあ、次はですね」

「少しいいか?」


 次のことを説明しようとする千秋を一旦止める。


「はい?」

「後どのくらいかかりそうなんだその説明」

「後……2つですね。それから、その他のことを言って……」

「もうちょっと簡潔に説明できないか?」


 このままではいつ説明が終わるか分かったものじゃない。ただでさえ今日はいろいろあって疲れてるんだ。

 俺としては早く帰りたいというのが本望だ。


「ええ!何言ってるんですか。これでも簡潔に言ってる方ですよ。まだまだ、話したいことがたくさんあるんですからね」


 俺の言葉に驚愕というように千秋は大げさに驚く。

 まだ、あんのかよ。正直疲れてきていた。これで簡潔ってどんだけ美戦って奥深いんだよ。


「あなたが、そういうなら仕方ないですね。じゃあ、ここからは、さらに簡潔にいきたいと思います」

「ああ、頼む」

「では、話を戻してと。次は、デザインですね。これは、装備を作るっていう能力ですね」

「装備を作る?」

「はい。イメージ的には、RPGゲームの特殊能力のある装備品みたいなものを作るって感じですかね。だから、デザインには、デザイン関係の力に加えて、本当に戦う為の技術や戦闘力も必要なんですよ。次はですね」


 やればできるじゃねえか。さっきまでとは、違い本当に必要最低限のことしか言わなくなった。まあ、逆にそれはそれで寂しいんだけどな。


「次は総合芸術ですね」

「総合芸術って噂のあの女のとってるやつか?」

「そうです。総合芸術とは、どちらかというとサポートタイプの能力なんですよ。バフを盛ったり、相手にデバフをかけたりとまあ色々なことができる便利な能力なんですよ。ああ、そうだ。バフとデバフっていうのはわかります?」

「それくらいわかってるさ。バフってのが能力を上げることでデバフが能力を下げることだろう」


 俺のことを舐めてもらっちゃあ困る。こう見えて俺は、結構ゲームをやる方でそういう言葉にはつよいんだよ。


「他にも、応用なんですが人の能力を真似ることもできますね」

「能力って色々な使い方できるんだな」

「他にもまだまだ言いたいことはいっぱいありますが、夜来君がそろそろ終わって欲しそうなのでそろそろ終わりにしますかね」


 それは事実だが、それをお前が言っちゃあいけないだろ。まあ、こっちとしては助かるんだがよ。


「そうしてくれるとこっちも助かる」


 だから、素直に自分の気持ちを言葉にすることにした。


「まあ、実際に見てみるのが一番早いと思うので今度競技エリアに行ってみるのがいいと思います。美戦を生で見れるのはあそこぐらいなので」

「そうだったのかよ」

「ええ。それなのに、校舎内のそれも廊下で始めようとした人もいるんですがね」


 そういうと俺の方にジトッとした視線を向けた。


「それって俺のことかよ」

「さあ、なんのことでしょう?」


 その言葉を皮切りに千秋は自分の荷物を持って立ち上がった。外の風景は日も落ちてきてもうそろそろ、夜になろうとしていた。


「では、いきますか」


 そう言い、出口の方へ向かって行った。


「そうそう、僕の分も払ってくれるんですよね?」

「は?なんで」

「なんでって僕は今回色々と教えてあげたんですよ?そんな僕に対する受講料ってやつですよ?」

「じゃあ、払うよ。払えばいいんだろ!」


 意外とこいつ金にがめついな。

 だが、普通の学生は大抵、金欠だ。実際今の俺だってあんまり余裕がない。


「冗談ですよ。そんなカリカリしないですださい」

「いいや、ここは俺が払う」


 一回言ったことは曲げない。それが俺の信条だからな。それに、俺は、こいつの下手には出ないと決めている。


「意地張らないでくださいよ。こんなとこで。まあ、払ってくれるんならそれはそれで嬉しいんですけどね」

 こいつ、ほんとにストレートだな。まあいいんですけどね。


「ああ、払うよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて」


 そういうと一足先に店の外へ出ていった。


 ったく、何がお言葉に甘えてだよ。どう考えてもお前が言わせたんだろ。

 そんなことを考えながら、伝票を見るとそこには想定外の数字が書かれていた。


「ここ結構高えじゃねえか!」


 そう言い周りを見回して見ると周りには落ち着いた雰囲気の人ばかりだった。日が落ち、大人が増えたからだろう。


「お客様、周りのお客様の迷惑になりますので」


 さっき言えなかったことをドヤ顔で言ってくる。この店員性格が悪いな。俺が、言える立場ではないが。


 *


「くそっ、やられた。あんな高かったとはな」


 そんな愚痴を言いながら予想外の出費に驚いている。そんな中、何気無いコンビニの前に見知ったものを見かけた。

 とくべつ特徴的なわけではないが、少しおしゃれな制服だ。それが、男子高校生だろうか。かなりガタイのいい男に絡まれていた。


 あれっ?あの制服どっかで見たことがあるような......。

 そうだ、あれは......!


「ったく、同じ学園の生徒かよ。何があったんだ」


 そういうと一目散に駆け出した。

 俺は、正義感があまり強くないと思っている。だが、顔見知りではないが、これから、同じ学園で生活をする生徒を見捨てるほどの度胸もない。


 *


「何よ。文句ある?」

「なんだ、てめえ自分からぶつかってきてそれはねえだろ」

「ぶつかってきたって。あなたたちが広がってるのが悪いんでしょ」


 なんでこういう柄の悪い奴らって自分に非があることを断固として認めないのかしら。


「て、てめえ!」


 頭に血が上った集団の中の1人が拳を握り大きく振りかぶる。

 その拳は、自分のそれとは大きく違い、ゴツゴツとしていて大きい。そんなものに殴られたら、とても痛いだろう。

 自業自得だと言われるかもしれない。けれど、間違っていることを間違っているって言って何が悪いのだろうか。私は、間違っていることに目をつぶってやり過ごしたくはない。

 だんだんと拳が迫ってくる。その光景はやけにゆっくりと感じ世界がコマ送りになったような錯覚を覚える。

 思わず息を呑む。殴られる覚悟はあったけれど、いざ殴られると思うと目をつぶってしまう。

 しかし、いつになってもその衝撃は私に襲いかかることはなかった。

 恐る恐る目を開けてみる。

 そこには、私の頭上で拳を止める、新しい腕があった。

 その瞬間、私らヒーローが来たと思った。


「誰だよお前!」


 男たちのうち誰かが言ったのだろう。その言葉に反応して今いきなり現れた男は突然言い出した。


「すみません!こいつ俺の連れなんです。このとおりなんで許してください」


 突然謝り出した。それもとてもカッコ悪く。さっきの私の感動を返してほしいものだ。


「はは、そんなことで許されると思ってんのかよ!」


 男たちの中でもひときわガタイのいい男が言い出した。

 これだけ謝ってもゆるさないってなに様のつもりと言いたくなる。それに謝っている男の方もどうかと思う。男ならプライドってものがあるんじゃないの。

 ああ、イライラするこの空間にいる全ての男に!


「やっぱ、許してもらえませんか……。なら!」


 そういうと、私の手を握り、


「逃げるぞ!」


 そんなことを言いながら全速力で逃げ出した。


 *


「まて!追わなくていい」


 駆け出そうとしていた3人の男たちに向かってある男がそう言った。

 目の前のコンビニから出て来たのだろう。彼の手には、アイスや飲み物などが入った袋が握られている。


「でも、いいんすか?リーダーが喧嘩を売れって言ったんで売ったんすけど」


 4人の男たちにリーダーと呼ばれたのは、この4人の中で一番線の細い小さな男だった。小さいといっても、この中で小さいというだけであって、平均的に見ると普通ぐらいだろう。ぱっと見、雑用のような出で立ちに見えるが、その反面何を考えているのか分からない怪しい雰囲気を醸し出していた。


「いいんだよ、これで。君たちのおかげで面白いものも見れたしね」


 そういうと小柄な男は、空を見上げた。


「助けてくれる人いるじゃん。楓」


 そこには、凛々ときらめく満月が登っていた。

 そのきらめきは、太陽の光を反射しているだけだと聞いたことがある。だから、月だけでは輝けない。それはとても自分に似ている。だれかの輝きがあるからこそ、自分が輝いているように見せることができる。

 きっと、月だって僕に似ていると思っているはずだ。

 だって、僕がそう思っているんだから……。


「へえ、それも天城 夜来とここで知り合いになるなんて。これからの学園生活が楽しくなりそうだね」


 ニッコリと笑う。

 細めた男の瞳は海のような碧色で爛々と輝いていた。


 *


 どのくらい走っただろうか?

 無我夢中で走ったものだから。今、自分がどこにいるかすら分からない。でも、相手の男たちが追ってきてないことを考えるに、結構な距離を走ってきたのだろう。


「そろそろ、いいかしら」


 そういわれて、自分の手を見ると、まださっきの少女の腕を強く握っていた。

 その腕は、細く相手が女の子なのだ、ということが意識された。途端、今自分が何をしているかに気がつく。みるみる顔が熱くなっていく。


 イカンイカン、なに考えてるんだ、俺!

 頭を振り、一旦クールダウンする。


「ああ、ごめん」


 そういうと、勢いよく手を離した。


「ここまで、くれば追ってこないだろう」


 チラチラと、横目で少女の方を見ながら言う。普通の男子高校生にとって女子と2人きりで喋るのはあまり緊張することではない。でも、状況が状況だ。襲われそうな女子を救い出し、2人で逃避行。そんなことの後だったら緊張の一つもするだろう。


「あのくらい1人で平気だったのに、なんでいきなり乱入してくるわけ?余計なお世話だわ」


 だが、俺の期待していた言葉とは真逆の言葉が返ってきた。

 あれ?この場合ってお礼とか言われるんじゃないの……。


「はっ、ちょっとお前何言ってんの」


 そんなことを考えながら言ったその言葉は、自分の想像以上に冷たいものだった。


「なんで、わざわざ挑発するんだよ」


 俺は、説教したいわけではない。だが、言わずにはいられない。


「あの場合、素直に謝ってればいいだけじゃねえか」


 至極当然のことだろう。相手が怒ってたらとりあえず謝る。これが、無難に生きていくための方法だ。だが、この女は違っていた。こういう人間には、2パターンある。

 1つ目は、プライドが高く、何が何でも絶対に人に謝らないタイプ。

 2つ目は、絶対に勝てる自信があって謝らないタイプだ。

 さっきの怯えようからして、この女は前者だろう。


「そんな簡単に、頭下げれると思うわけ。この私が!」


 やっぱりか。

 どんだけ、プライド高いんだよ。こんな女のために危険を冒したっていうのかよ……俺は。

 ああ、ムカムカがおさまらない。


「どの私か知らねえがよ。まず、助けてもらったお礼とかいうんじゃねえのか」


 ついつい、トゲトゲしい言葉になってしまう。俺は、別にお礼が言われたいんじゃない。

 ただ……。


「あなたが、勝手に入ってきたんだって言ってるじゃない。それに、別に戦って勝ったっていうわけでもなくただ私を連れて逃げ出しただけだし」


 そう言われるとこっちも言い返すことができない。

 まあ、実際俺、逃げ出しただけだしね。そう考えると、俺がお礼言われるいわれはないな。

 大きく息を吸い込み、一旦気持ちを落ち着ける。


「まあいいや、でも気をつけろよ!毎回さっきみたいに誰かが助けてくれるってわけでもないんだからよ」

「だ〜か〜ら〜!」

「1人でもできるだろ?まあ、なんだ1人でやることは悪いことじゃない。ただ、俺は誰かに頼ってもいいんだと思うぜ。誰かに頼られるってのは、気持ちいいことだしな」


 そういうと、朝の田中たなか かけるの真似をしてニカッと笑ってみせた。

 その顔を見て、少女は顔を背けたよ

 あれっ?俺の笑顔そんなに気持ち悪かった。

 やっぱ、慣れないことってするもんじゃないわ。それか、あの笑顔は俺以外の奴が見てもイラっとするものなのだろうか。

 そんなことを考えていると、


「ありがと」


 そんなことをいい少女は、走ってどっかに行ってしまった。


「ったく、素直じゃないなあ」


 去り際に発せられたあの言葉は、小さいながらに俺の体に染み込んでいた。

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