第九十二話 奇襲! デスファントム!!
ファイたちがいる部屋で、ずっと、ウィードは話をしていた。
ある程度語り終わると、ウィードはひとトーン置いた。
しばし、沈黙した。
ファイが何気なに口を開いた。
「なるほどな、そういう経緯か。で、その腹の傷は途中でやられたのか?」
「はい、逃げているときに」
ウィードは言いにくそうな顔色でいった。
すると、壁にもたれていたヒョウが腕組をした状態で、重い腰をあげた。
「おい、背中になぜ、鞘だけ背負っている? どうして刀身がない?」
「はぁ、これはですね……」
「いえないってわけか」
ヒョウは期待外れの答えに、寡黙な口を再び閉じた。
ウィードが言いにくそうなのをみて、イーミ姫様が気を利かせて、割って入ってきた。
「ね、みんな問い詰めても仕方ないじゃない。ウィードさん困ってるじゃない」
「そうですよ、悪いことしたのじゃないんですから」
「そうだよ、ねぇ、ファイ」
エリューとニミュエも見兼ねて、ウィードの肩をもった。
ファイが椅子に座った状態からほほ笑んで軽くウィードの肩を叩いた。
「そうだな、みんな気楽にいこうぜ、ウィード様も気にすることないぜ」
ファイの言葉を聞くと、キュラが言葉を紡いだ。
「ウィード様、何か理由があってのこと、我らできる限り力を貸すぞ」
「すみません。ありがたき言葉です。貴方はもしやあのソレイユ最強の魔法騎士と謳われている?」
「そんな謂れもあったかもしれんな。そうだ、魔法騎士のキュラだ」
「やはり、そうですか。我が国にも御高名は響いています。お会いできて光栄です」
ウィードは感心した表情でいうと、顔色を曇らせながら語りだした。
「フォライーはレビ記を僕が持ち去るときに『魔神バルバトス様の復活じゃ』といっていたのです」
「魔神?」
「バルバトス?」
「テアフレナ、知っているか?」
「いえ、きいたことがないかと」
皆の顔色が一瞬のうちに曇った。緊迫感が犇めく。テアフレナとキュラも同じだった。
そのとき、レギンが重い口を開いた。
「だけどよ、坊主、魔族が関わってるとあれば、我らは力を貸すよなぁ」
「ああ、俺もそいつが復活するのを絶対に阻止するぜ」
レギンとファイの一言で、その場は明るくなった。
その言葉を聞いて、イーミ姫様にも新たな決意が漲っていた。
「そうね、無辜の民が復活すれば苦しめられるわね。みんな、復活阻止するわよ」
「おう」「はい」「了解です」「御意」
みな、返事は一様だった。だが、姫様がいうと不思議なもので団結力は半端ではなかった。
ウィードがその様子をみて、安堵したのか、ニコリと笑った。
「あなた方はほんとに良い方たちばかりだ。チームワークがあって。敵が魔族と聞き、逃げるのでもなく。僕のところは戦略、謀略に満ちていた。それに父も」
「どうしたの?」
「いえ、何でもありません。父は権勢を揮う余り、暴君として、君臨してしまっているのです」
「聞いたことがあるわ。民の評判が余りよくないようね」
「私も情報掲示板でみたことがある。残虐な仕打ちをしたとか」
ウィードの表情が急変した。何か、父と母の間、家族に何か事情があるのか。
「父は、急にかわったのです。前は穏和な父でした」
ウィードがいったそのときだった。
「きゃー」
「ん、どうした? 悲鳴だ!」
「外だ!」
ヒョウが言うと同時にアジトの部屋の窓をがしゃりと勢いよく開けて確認した。
「やつだ、デスファントムだ、また襲撃してきやがった」
「こんな、視界が悪い夜に、くそッ」
レイティスが棚の上に置いていた自身の剣を取って佩剣しながらいった。
キュラが瞬時に動いた。
「出るぞ、ファイ、皆の者、私につづけ」
「キュラ様、了解だ」
ファイがキュラに相槌を打つと、一斉に全員武器を取ってアジトの外へ駆けだしていった。
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