第九十一話 復活の書、『レビ記』
「へぇ、こんなところがあるんだな」
「世界各地に、我らのアジトがある。遠征時に待機場所として、確保しているのだ」
「結構きれいなところじゃーねかよぉ」
「それに作戦本部みたいだ、かなりの広い」
「布団もふさふさダス」
ボンは嬉しそうに布団の上に乗っかり上下に跳ねて揺さぶった。
「茶化すのはそれくらいにしておけ、ボン、ファイ、レイティス当人が待っている」
キュラの一言で、皆が聞きに回りだした。
面子は、全員アジトにいる。一様に、椅子に座ったり、壁にもたれかけたり、ウィードを囲うように居座る。話に興味津々だった。
そして、ウィードが話し出した。
「名はウィード・プリザーブ、父はエトワル帝国皇帝ネロ15世です。これが証拠の証、エトワルの城の紋章盤です」
「知ってるわ、光る城、紛れもない本物ね」
「おい、なぜ追われている?」
ヒョウが横槍を入れる。
「実は、何日か前に、父が、ダーリベア山脈に魔物討伐で遠征にいった時からなんです。無事に父は帰って来たものの、なにか様子がおかしく、急に激昂するようになり、そのときから、父が軍師として出迎えたとあの道化師フォライーが居座りだしたのです」
「もしや、洗脳か?」
「おそらく、テアフレナさんの推測はあたっているかもしれない。何らかの術を父にかけ、洗脳していたのかもしれない」
「あるとき、城の部屋でフォライーが妙なことをいってるのをきき、僕は父が持っていたこの魔導書レビ記を持ち去ったのです」
「しかし、それが叛逆行為になってしまい、フォライーの口添えで国を追われる身となってしまったのです」
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なにやら、軍師の部屋でフォライーが杖を持ち、両手を上に挙げてほえていた。
「グヒヒひ、魔神バルバトス様の復活じゃ! 長年待った甲斐があったわい、上手い具合にネロを手中にできたぞ、後は復活の書、レビ記にかかれてある契さえあれば」
そのとき、ウィードは一歩身を引いた瞬間部屋の壁にあった花瓶に身体があたり、花瓶が落下して、下に落ち割れた。ガチャんと激しい音がした。これを見逃すフォライーでななかった。
「なにやつ! あの出で立ちはウィードか、今の話を聞いたな。殺さねばならぬ。(しかし、暗示を皇帝にかけているものの、理由もなく殺せば奴を慕っているものの、反感を買う)とりあえず暗示をかけ口封じだ」
フォライーは魔力を発生させ、宙を飛んだ。
「逃がさんぞ、ウィード!」
ウィードはズット城内の暗い回廊を走っていた。
その走りも、なぜか常人よりはるかに速い。ポテンシャルが違うようだ。
「クッ、魔族だったなんて、気が付かなかった。人間の容姿に化けていたのか」
「(しかし、レビ記? 一体なんのことだ? 魔神?)」
「(父が持っている?)そうか、帝国博物館にある、あの古文書のことか? しかし、あれは厳重に結界が張られてある」
そういうと、暗い回廊の壁にさわり、壁をひっくり返して、秘密通路にウィードは入った。
「なに、どこへいったあやつ? 消えただと?」
フォライーは唇をかみ、口を濁した。
その頃、ずっと秘密通路をウィードは走っていた。
「そうか、父を洗脳したのは、父が結界をなくす術を知っているためか。急がないと」
ウィードは何回か後ろを見遣り、フォライーが迫ってくるのを確認し、急いで帝国博物館に秘密通路で向かった。
そして、しばらく走り、帝国博物館の内部に入り、レビ記の前に立ちはだかった。
だが、レビ記には厳重に結界が張られていた。
ウィードが恐る恐る、手で結界を触ろうとした。
「ツ、結界! (放っておけば父を使い、結界を破られ奪われてしまう)」
「(僕らの一族に伝わる結界解除の術、ラパスラマだな)」
ウィードは全身全霊をこめて、術を案じ発動させた。
複雑な手さばきをした。
そして、一瞬のうちに術は発動した。
「結界よ、我が命により静まり給え、ラパスラマ!」
SHUUUUU!
「よし、結界が消えた。レビ記か」
手に取ろうとしたそのときだった。
「おっと、そこまでだ、ウィード。お前を泳がした甲斐があったぞ。父の代わりにレビ記の結界を解いてくれたではないか」
フォライーがウィードの真後ろに立って杖を構えていた。
ウィードは眉間に皺をよせた。
「く、だが、僕が解かなくてもお前は父を使ったであろう」
「くはは、笑止。どっちにしろ、お前ら親子は用がなくなれば皆殺しだ。この城の部下もな」
「ほざけ、反逆者め」
「反逆者? ははは、判っていないようだな。その結界を解き、レビ記を持っているお前こそが反逆者なのだよ。出遭え、出遭え、ウィードが結界を解き、強奪しようとしているぞ。反逆者だ!」
「くそ、違う、僕は、僕は!」
城の衛兵が何人かでてきた。すでに目の色がかわり、洗脳されているようだった。
かなり、周到な手口だ。
ウィードはいうと、すぐにレビ記を持ち走り去った。
フォライーは目を光らせた。
「逃げたぞ、追え、反逆者は殺しても構わん」
「は、フォライー様」
衛兵がウィードを追いかけていく。
ウィードは追っ手を一瞥した。
「くそっ、城のものに追われるなんて。攻撃もできない」
「ウィード様! こっちです」
「キレオ、それにサリア」
なんと、格闘家の格好をした男キレオと忍者の格好をしたサリアといわれる人が壁伝いの通路を手招きした。どうやら知り合いのようだ。
「ウィード様が結界を破って行動を起こすということは、きっと何かがあってのことでしょう。ここは我らが引き受けます。この地下通路へつながる秘密通路を遣えば、城の外にでられます」
「すまない、お前たち」
「はッ」
二人は返事をし、相槌をうつと衛兵にキレオが向かっていった。
「二人とも絶対に死ぬな、これは命令だ!」
辛そうな顔でウィードがいうとサリアは目で逃げてと訴えた。
サリアはウィードを庇うように身体を前にはだかると、手裏剣を構えた。
そして、戦闘態勢に入り、ウィードの方を一度だけみやった。
「はっ、追手がきます。ウィード様、早く!」
「く、すまない」
ウィードはそういうと、秘密通路を邁進していった。
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