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第八十七話 剣のない鞘を背負った青年





激しい戦闘から暫く経ち、闇の王テュポンを倒した一向は、ヒュルディースから、近くのレイトマス都市にイーミ姫の記憶移動魔法で飛んで来ていた。




「ひ、姫様、また買うんですか?」



「はい、ファイ持って。今後の為に、アイテムは必要でしょ?」



「そりゃ、そうですが、回復瓶、箱十個分なんて、俺、手が塞がって持てませんよ」.



「飲めば、魔法掛けなくても体力が戻るのよ。良い代物よ。隣に、もう一人、力持ちがいるじゃない?」



「どれ、ファイ、五箱貸せ、俺が持ってやる」



「すまねーな、ヒョウ」



「お嬢ちゃん、こちらの、毒消しのポーション、解毒瓶とかも、どうだい? 格好みると、魔法使いみたいに見えるが、毒消しの魔法は使え……?」



 そのときだった、エリューの隣にいたイーミ姫様に店主は目をやって、絶句した。




「その長い金髪の髪? ま、まさか、あ、あなたは、我が国の王位継承者のイ……」



「ぶぅ」



 イーミ姫様は急いで店主の口を手でふさいだ。



「し、マスター声が大きい。人だかりが出来るじゃない」



 だが、ときすでに遅し。周りにいた人がジロジロ姫様をみている。それに隣にはキュラも宮神官テアフレナもいたからだ。変装をしていようが、そう、どこかでみた偉い人がいたからだった。可也二人とも美女で目立つ存在だった。子供がはしゃぎ、駆け寄ってきた。




「姫さまだぁ、ね、みんな、イーミ姫様だよぉ」



「あちゃあ、ばれちゃった」



 姫様は手で顔を隠しながらいった。



 エリューが相槌を打つ。



「姫様、人気者ですね」



「あぁみえても、姫様はれっきとしたこの国の王族だからな」



「囲まれちゃいましたね。私が飛翔魔法でどこかつれていきましょうか」



 ファイもヒョウも、囲まれたので警戒を強めていた。だが、物騒なものを持った奴はいない。エリューがいったときだった。大男が変身を解いた格好で近寄ってきた。



「嬢ちゃん、大丈夫だ、ここは姫様の故郷だ。姫様に逆らう奴はいない」



「お、レギンさん、どこ行ってたんですか? ちょっと、荷物持ってくださいよ。俺たちもう、持てないですよ。食料品二十箱ある上に、それにアイテム箱買いで十箱」



ファイとヒョウの両手には高く箱が積み上げられた状態でどうにかバランスを保ち持っていた。二人ともバランスを保つのに必死だった。キュラとレイティスが苦笑していた。




「イーミ姫様、特別にお安くしておきますので、こちらの魔法瓶とか、傷復瓶とかもどうですか?」



「うーん、そうねぇ、魔法熱(マジックヒート)対処アイテムと、傷回復ポーションね。あるといいわね、じゃ、あるだけ全部もらうわ」



「えぇえぇぇっ」




「はい、それはそれは、イーミ姫様ありがとうございますだ。しめて五十箱になります。金額は二十萬l

fです」



「二十萬lfね、はい、現金で払うわね」



姫様の衝動買いにみな、きょとんとした。騎士からすると、二十萬ルフは高額だ。それは平民の魔法使いエリューにとっても同じだった。ぽかんと口を開けていた。これが王族かと。




「流石、姫様だ」



「合計、八十箱」



「ファイさん、別に良いじゃないですか。姫様らしくて豪快で。あってもいいものだし」



「エリュー、そりゃ、そうだけどよ、数が」



 ファイの言葉を聞くと、後ろで唖然となっていたレギンに姫様が振り向いて気づいた。




「いいとこに、レギンさんきたじゃない。持ってくださる?」



 イーミ姫様はニコリと笑いながら言った。明るい笑顔だ。レギンは嫌な顔もせず、ゴリラのように胸を

ポンポンたたき出した。




「よし、俺に任せとけぇッ!」



 何と、レギンは自慢の怪力でカウンターに山積みになっていた商品の箱を一瞬ですべてもった。




「凄い、五十箱持った」



 ファイがそういうと、レギンは姫様が歩く方へ一緒に歩を進めた。

 



 それから、レイトマス都市の商店街の歩道をずっと歩いていた。アジトがあるものと思われる。



「あれだけ積み上げたのを崩さずに歩くのは、バランスも獣並みだな」



「俺たちは、これだけ持つので精一杯だ」



 ヒョウとファイが言った矢先だった。誰かが走ってきて、ファイにぶつかりそうになった。



「わぁッ、誰だ? わ、わ、わ、こける!」



 その当たりそうになった青年は、すまなさそうな顔をしてすぐさま通り抜けた。



 ファイが箱をもったバランスを崩し、全て地面に落とすような素振りになっていた。



「(何だ、あいつ、剣の鞘だけを背負っている。それに……)」




「坊主、こっちにほうれ」



「すまねー、レギンさん」



ポンポンポン



 ファイは持っていた多数の箱を全部レギンに放り投げた。



「なんのぉ、これしき、片手ずつじゃ」



「相変わらず、すげぇ、怪力だ」




 なんと、獣人の力か、全部で六十五箱くらい、ファイが放り投げた箱を全て落とさず両手で持つのに成功した。箱が店のついたてに当たるくらい長く積み上げられている。



 だが、レギンにとっては容易いことなのか、全然平気だった。



「ほう」



 ヒョウが感心し、言葉を出したそのときだった。



 子供たちが嬉しそうな顔で誰かを見つけた。



「姫様よ、姫様よー」



「キャー」



 どうやら、目的は姫様のようだ。かなりの人気者だ。大人子供がみな集ってくる。



「いかん、姫様が囲まれた。もし、何かあったら大変だ。振り切るぞ、ファイ」



「わかった」



ファイとヒョウは急いで、箱を全てレギンに渡し、姫様を警護しながら、その場を立ち去った。キュラたちもその後をついていく。オネイロス、テアフレナ、レイティス、みな走り、警戒心を顕わにした。




 ファイの脳裏には、さっきぶつかってきた、剣の鞘だけを背負った青年のことが気にかかっていた。どう考えても動きが尋常じゃなかったからだ。





☆☆  ☆☆



















今日はまだアップします。

遅い時間帯でも早い時間帯でも読んでくださっている方ありがとうございます。

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