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F─2
(ダメだ…!俺なんかが敵う相手じゃない…!)
完全に立ち向かう心が折れてしまった十刃は、とにかく生きることを優先し、この場から逃亡することを選んだ。
(は…早く逃げなきゃ…!)
十刃は酒呑童子に背を向け、急いで丘を登り始める。
しかし、そんな簡単に逃がしてくれるわけがなかった。
酒呑童子は丘を登る十刃をいとも簡単に鷲掴みにした。
「くそっ…!離せ…!」
十刃が必死に抵抗するが、人間が鬼に力比べで勝てるわけがなかった。
酒呑童子がグッと握る力を強めると、十刃の骨という骨がバキバキと音を鳴らして折れていく。そして空き缶をゴミ箱に捨てるかのように、激痛によって意識が遠のく十刃を、軽く放物線を描くように捨てた。丘の中腹に落ちた十刃はゴロゴロと転がり、弟の衣服が浮かぶ血溜まりの前で俯せに止まった。
「と…みね…俺…も…そっちに…逝くか…ら…」
全てを察した十刃は、最後の力を尽くし、形なき弟に向かって笑顔を浮かべた。
──数秒後、緋雀十刃に金棒が振り下ろされた。
ED2:弟を追いかけて
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