第69話 思考
そういうと櫟は再び部屋に戻っていった。
僕はスポーツドリンクを持ちながら開いたままのドアを通り涼しい廊下に座った。
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廊下はちょうど影になっていて涼しい風が吹き抜けていく。
僕は階段に座ると上を見上げる。
僕の体は小さくて階段座ると下の段に足が届かない。
何もなく何時も通りの白い壁だった。
変わったのは自分の体だけで世界に何も変化はない。
僕の体は一体どうなってしまったのだろうか。
膝元で揺らぐ蒼き毛並みのいい尻尾と
幼女の様な小さな足を見下ろしながらそう思う。
不思議と階段の感覚が高く感じる。
まだ1段しか登ってはいないのに怖く感じる。
壁を軽く叩いた。
「お姉ちゃん、動かないで。」
僕は動かなかった。
しばらくすると桜が階段を降りてきて隣に座った。
「お姉ちゃん、何考えてたの?」
桜は見てもいないのによくわかるなあ。
"なんでもないよ"と返そうと思ったが桜の言葉に
喉に出かかっていた言葉を飲み込んだ
「櫟の事?」
僕は櫟を傷付けてしまったのかな。
なんでもないように取り繕ってるのだろうけれど
終始、櫟の目は泣きそうだった
僕はどうすればいいのだろうか。
望んでこんな姿になった訳では無いというのに。
☆☆☆
「さくら、はい。くぬぎから」
僕は桜に櫟から渡されたスポーツドリンクを渡した。
「お姉ちゃん、ありがと。熱中症対策かな?、今日も暑いよね。」
桜は僕の頭を撫でながらお礼を告げた。
「せんぷうきつけてないからじゃ…」
「お姉ちゃん、こんな暑い日は扇風機は役に立たないよ。」
扇風機は役に立たないらしい。
去年、30度くらいだった時に
扇風機付けたけど効果なかったのは記憶にある。
「えあこん」
「エアコンは私の部屋にないよ?櫟の部屋じゃない?」
エアコンは櫟の部屋らしい。
「それよりお姉ちゃん、私の部屋に行くよ!」
桜は僕を抱き抱えるとトントンと階段を上っていった。
桜は階段を上がり終わってすぐ僕をおろすと部屋の中に入っていった。
桜にSPSを渡される。
「悩んでいる時はゲームやったら楽になると思うよ。」
いわゆる気分転換というものかな
僕は桜と一緒にSPSのゲームを再開した。
☆☆☆
僕はシフォンを動かし状況を確認した。
確かブラックヴォルヴィスの戦闘開始直前だったはず。
倒されているしレベルも3上がっている。
「さくら、てきたおした?」
「お姉ちゃん、敵倒した上でスイッチ押したらさらに敵が出てきたからもっかい倒した。」
名前:シフォン
年齢:12
性別:♀
出身地:ヴァルレンハイド
レベル:4
HP:160
SP:120
ふとある場所の文字が気がかりになった。
SP?確かスキルポイントだったはずだ。ってことはこのゲームも必殺技とかあるのかな。
僕は首を傾げる。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「いや、このげーむもすきるとかあるのかなーって」
「お姉ちゃん、攻撃と防御、ボタン同時に押すと必殺技見たいのでたよ」
攻撃と防御ボタン?
どうなっているんだこのゲームのコントロールは…
とりあえず、僕は攻撃と防御ボタンを同時に押してみる。
するとシフォンの体が青く光った直後
スコップで地面に緑色の範囲攻撃っぽいものをした。
SPが20減っている。
なるほど、これが、スキルなのかな。僕は納得した。
シフォンを動かす。
扉の先は細長い廊下になっていた、敵が出たら一方通行なのではないかなと思う。
近くで風の音が聞こえる。
僕はシフォンを廊下の通りの方に動かしてみる。
「お姉ちゃん、風が渦巻くような音が聞こえる気がする。」
「さくらがいないうちにしかけといた。」




