第60話 水着
僕はこの家の情勢がとても怖いと感じるようになってしまった。
☆☆☆
僕は水着を着終わった。尻尾は太腿あたりから出ていた。
微妙に痛みを感じる。
「さくら、しっぽいたい。」
「うーん。尻尾穴でもあける?」
「うん。」
桜はそこにある学習机の引き出しから鋏を取り出した。
「お姉ちゃん、これでいい?」
桜に切り取られた部分は穴が空いていた。ちょうど付け根の場所だ。
僕はその穴から尻尾を出した。
結構窮屈に感じるけど先程よりはましになった。
「うみゅ」
「よかった。」
桜は僕に先程のタオルをはおらせると1階に連れていった。
トントンと階段を降りる音がする。
「さくら、ごめんね」
「お姉ちゃん、なんのこと?」
桜はわかっていないようだった。忘れてるならいいや、
追求しないことにする。
「なんでもない」
「そっか。」
扉を開ける音が聞こえた。
「楓と桜か。」
「お兄ちゃん、今何時?」
櫟は腕時計に目をやると「今は9時20分だな、どうかしたのか?」
「ううん…なんでもない。」
「そう。」
櫟は首を傾げていた。
☆☆☆
「お姉ちゃん、なにしよっか?」
桜は暇そうにしている。いや、実質暇なんだろうなあ。
夏休みなのだろうし。
僕も暇だ、この姿になってから友達に連絡も取れなくなった。
というか会うこと自体無理な気がする。
さみしいけれどこの姿になった以上はしょうがないと思う。
「うーみゅ」
「お姉ちゃんぼーっとしてたけど大丈夫?」
「だいじょうぶだよ?」
「ほんとに?」
考え事していたからぼーっとしていたのは否定しない。
桜は僕の頭を撫でる。撫でられるたびに泳ぐ水色の髪。
「お姉ちゃんの髪色凄く綺麗だよね。」
綺麗なのはわかるけど現実味を佩びてなくて怖い。
「うーん、あ、そうだ。」
桜は懐から薄い板の様な何かを取り出した。
それは携帯用のゲーム機だった。
「はい、お姉ちゃん。」
そのゲーム機を僕に渡してきた。どうすればいいの?
僕が首を傾げていると桜が教えてくれた。
「お姉ちゃんは携帯ゲーム機くらいはやったことあるよね?」
僕は頷く。やったことはある。
しかし、基本的なゲームくらいのものしかやったことないけど
桜は僕を抱きながら僕とゲームを始めた。
このゲーム機は楕円型になっていて
昔発売していたSPSによく似ているゲーム機だった。
そして僕の手に合ってない。
「お姉ちゃん、操作大丈夫?私が手伝ってあげるね。」
桜は手伝ってくれるらしい。
というか、元々桜が取り出したゲームなのだから
桜が操作すればいいのに
桜を見ると面白そうな期待に満ちたような顔で笑っていた。
内容は滅びた世界で人間の女の子が人を探しに旅する話らしい。
僕はとりあえずやってみる。
「お姉ちゃん、頑張ってね。」
桜は見守りながらも押し外したボタンを押してくれた。
「いまおもうけどけもみみでみずぎでげーむってへんじゃない?」
「お姉ちゃん、夏だからいいんだよ。」
"夏だから"でいいとは言えるのかな…
たしかに今は物凄く暑いけれども
今日の気温だって32度くらいだ、水着でも暑い。
ゲームの方は最初のダンジョン?に侵入したようだった。
「お姉ちゃん、こっちのゲームは遺跡っぽいね。」
さっき見たけどデータ1、2が100%だったのは幻覚かな?
桜はこのゲーム1度完全クリア…?
「さくらいっかいこのゲームやったんじゃないの?」
「この携帯ゲーム機誰のでしょうか!」
確かに言われて気付いた。手に持っているそれは桜が選びそうにない色をしている。
「櫟?」
「お姉ちゃん、そのゲーム機は櫟のだよ。」
櫟は地味な色を選ぶことがよくある。それは黒色だった。
「あ、私はやったことないからわかんないよ」
どうやら桜も初めて遊ぶらしい。僕も初めてだけれども。




