第57話 夢想
櫟の言った通り僕は怯えている。色々なものに怯えている。
僕はこの体になってから急激に弱くなったと思うんだ。
☆☆☆
僕はどうなってしまったのだろうか。考えたくないのに頭から離れない。
現実味のない状況。2日前の夕方にあった狐耳
この世界自体が可笑しいのか?
僕はこんな姿で同じ様な似た様な世界に異世界転移してしまったのか?
そう考えた方が納得出来るくらい不可解だった。
このことは言った方がいいのだろうか。言わない方がいい気がする。
桜はもうちょっと子供っぽかったしそもそも15歳ではなかったはずだ。
昨日読んだVRの説明書に書いてあった文章を思い出す。
15歲未満は18歳以上同伴が必要。何故VRが出来ている。
そこは別に気にしないけども
櫟はこんなに大人びてはいなかったはずだ。
「お姉ちゃん、何考えてるの?」
その声によって僕の意識は現実へと戻された。
僕は怯えた目で桜を見る。
「お姉ちゃん、私を見てどうしたの?変わったところはある?」
特に姿では変わったところはなかった。
僕は頭を振って自分の考えをかき消した。
「楓は疲れてるんだろ。こんな姿になったことで」
「なるほどー」
「だから無理に連れ出してやるなよ。」
櫟は相変わらず、人の気持ちを察するのが上手だなあ。
あれ?櫟ってこんな子だったっけ…
僕は桜に抱かれながら階段を上がる。
僕が上がっているわけじゃないけれども。
「お姉ちゃん、私は今日は一緒にいるからね。」
なんか桜に寝かされた。
包容力が凄く感じた。何時の間にか眠くなっていて
僕の意識はすぐに暗闇に落ちていった。
☆☆☆
僕は気が付けば廃墟にたっている。
僕一人だけかな。周りを見渡してみると異形が目に映った。
目が8個あり全身に針みたいなのが出ていて足が6本ある。
「ひっ」
声を出しそうになったが慌てて口を抑える。
気付かれたら何されるかわからない。
異形は足音を鳴らしたがこっちには気付いていないようだった。
異形がいた方向と逆の方向に道を歩く。階段があって赤く豪華な扉があった。
赤く渦を巻いた様な模様と金紋に縁取られた豪華な扉だった。
おかしい。これは夢だとしても僕の意識はあるし
僕の想像力はこんなに鮮明に思い浮かべれるほどではなかったはずだ。
そして体は幼女なのによく頭が回る。
どうなっているんだろう。なんか怖くなっていた。
現実ではきっと桜が慌てているのだろう。
僕は必死に恐怖に怯え泣くのを耐えながら豪華な赤色と金紋の扉を押した。
開かなかった。それはそうだ、今の幼児な僕には力がない。
☆☆☆
必死に目覚めようと頑張ってみる。
世界が歪んだ。世界が泡沫状になって崩れていった。
目を開ける。
「お姉ちゃん?」
桜が怯えた様な不安そうでいて心配したような声で問いかけてくる。
凄い汗を全身にかいていた。
桜の部屋だ、桜の寝床だ。ごめんね。桜。
「お姉ちゃん、怖い夢でも見た?」なでなでよしよし
子供をあやす様に桜は僕を抱き寄せると頭を撫でてくれた。
地味に獣耳をもふられている気がする。
「よくわからない。」
「そっか。」
そういうと桜は木製の床を叩いた。
誰かが階段を上がってくるような音がする。多分櫟だろうか。
僕の予想は当たっていた。
「桜、どうした?なんか用事か?」
開けられた部屋のドアの向こうには櫟がたっていた。
「お兄ちゃん、タオル持ってきて。できればお湯も。」
「ああ、楓のことか。」
櫟は僕を名前で呼んでいる辺りきっとまだ信じていないのだろう。
それでも追い出さないだけでもありがたいと思った。




