第56話 早朝
昨日22時30分にログアウトして即寝して翌日。
眠気の残る朝だった。
携帯を見てみると8時30分だった。
10時間ちょうどだ、けどもまだ凄く眠い。
薄い布団を除けて体を見てみる。昨日と変わらず尻尾は揺れていて
ちっちゃな手足と胴体だった。幼児だった。
"夢だったらいいのに"なんて考えがよぎってしまう。
「お姉ちゃん!朝だ」
「にゃあに…うるしゃいにゃあ…」
僕は部屋に入ってきた桜に目を擦りながら答える。
「お姉ちゃん起きるの早いね。」
変化前はちゃんと6時になってたら起きてました。
むしろ遅くなった気がするんだけど。
こんな状況も子供の…幼児の体のせいかな。
「お姉ちゃん、階段降りれる?」
確か昨日は抱っこしてもらったんだっけ…
僕はそれでも恥ずかしかったので
「自分で降りれるよ。」と返した。
「お姉ちゃん、降りれなかったら携帯で呼んでね!」
この家で携帯持ってないのは櫟のみである。
桜は机に置いていた
可愛い猫のキーホルダー付きのピンク色のスマートフォンを
片手に持つと階段を降りていった。
☆☆☆
通知音がなっている、普通の何の個性もない通知だった。
携帯を開いて見てみる。暗証番号を解除する。
通知は高校の友人の坂城くんからのものだった。
坂城:なあ、楓。生きてるか?
楓:生きてるけど?
坂城:返事遅いな。何してた?
楓:桜とちょっと会話を。そっちは何してる?
坂城:ん?いや図書館で受験勉強だけど?
楓:受験勉強か、頑張って。
坂城:ありがと、それで、今度一緒に遊ばないか?
楓:今度って何時?
坂城:何時でもいいが?、夏休みは何処か行きたいだろ?
楓:海に行きたいかな。
坂城:そういえば聞きたいことがあるんだけど。
楓:何?
坂城:悠がよ、楓の家行っただろ?
楓:終業式休んだ話?
坂城:そうだ、楓は初めて休んだよな?
楓:え?初めてだっけ?
坂城:初めてじゃないのか?初めてな気がするが。まあいい。
悠がさ、楓の家で幼女の声を聞いたって言ってたんだよな。
楓:何も?
坂城:そうか、何も知らないか。なんでもない。
楓:桜に呼ばれたからまたね。
坂城:おう、またな。楓に何もなければいいが…
坂城くんは僕にとってもこないだきた悠にとっても
兄貴分にあたる友人として頼れる人だ。
僕はその相手に嘘を付いた、幼女の声は僕だというのに
本当のことを言っても信じてくれなさそうだけども
そして違和感のこと言ったの?
なんで言ったのさ、人のせいにしたって何も変わらない。
僕はどうやって外に出ればいいんだ。怖くなってきた。
自分に起きていることなのに自分がわからなくなるんだ。
☆☆☆
「お姉ちゃん、朝食…どうしたの?」
僕は毛布の中で頭を抱えて蹲っていた。
なんでなのか分からない、どうすればいいのかわからない。
桜は心配そうに声をかけてくれた。
「お姉ちゃん…大丈夫?」
「ひとめがこわい…」
「お姉ちゃんこんな姿だもんね…怖いよね。」
「しばらく外に出たくない…」
「お姉ちゃん…朝食はちゃんと食べないとだめだよ…そのことについては後で考えよ?」
確かに1日3食は大事だ。この体が食べ切れるかどうかわからないけども
桜に毛布ごと抱き抱えられた僕はそのまま持ち上げられると
1階に連れていかれた。
なにも毛布ごと持っていかなくてもいいのに…
桜が階段を降りて1階の廊下でふと毛布から顔を出すと櫟と目が合った。
櫟は心配そうに首を傾げながら僕に聞いた。
「楓…大丈夫か?」
「うん…」
「なんか凄く怯えてるように見えるんだが…」
櫟の言った通り僕は怯えている。色々なものに怯えている。
僕はこの体になってから急激に弱くなったと思うんだ。




