第45話 異常
じゅわわわわわわ。
アルティマさんが水をかけると矢から煙が立ち上がった。
☆☆☆
小さな手で矢を拾ってみる。
長さでいうと僕の腕くらいあるそれは槍として使えそうだった。
弓を射る様な構えをしてみる。
うーん。僕の手には似合わない。長すぎる。
「来睦ちゃん、桜は何処に行ったの?」
桜を探してみる。少し離れた階段らしきところに座っていた。
指を指すとアルティマさんは納得した様だった。
「階段があるわね。でもあれ上に続いてない?」
上に続いている。
つまり、また戻るための階段の様だった。
「お姉ちゃん、アルティマさん、こっちだよ。」
「矢は私が持つわね。行きましょう、来睦ちゃん。」
僕達は溶けた骸骨の亡骸を背にその場を後にした。
また戻ってくる必要があるとも知らずに。
☆☆☆
階段を上がる。曲がり角が見える。
「お姉ちゃん。これどういう感じだと思う?」
多分、駆け抜け系回避トラップ?かなり面倒そうな廊下だった。
「かけぬけ…?」
「そう見えるよね。お姉ちゃん、肩車するね。」
僕の視線が再び上に上がる。
下を見ると桜が見上げていた。
「アルティマさん、どうします?」
「走り抜けるしかないわよね。」
桜は走った。とりあえず、結論的には心臓に悪い廊下だった。
壁から手が出てきたり地面に針があったり
矢が飛んできたり。怖かった。
桜はそのまま扉を開けた。不気味な紫色の扉だった。
ベチャッベチャッと音が聞こえる。
「スライムだわね。」
「お姉ちゃん、スライムだよ。倒す?」
桜が上を向いて問いかけてくる。
1辺1mもある、大きなスライムが天井スレスレにはねていた。
とりあえず、僕は目を瞑り雷が落ちるような想像をしてみた。
ゴロゴロゴロゴロ、ピシャーン、バチバチバチバチ
目を開けると濃紫色の眩しい光が目に入った。
部屋の壁や床が帯電している。
「お姉ちゃん…?」
「来睦ちゃん、何をしたの?」
「かみにゃり」
僕が上に指さすともう1回スライムに紫電が走った。
「来睦ちゃん、今のは見なかったことにするわ。」
スライムは2度の雷を受け、跡形もなく溶けていた。
アルティマさんは現実逃避を始めたようだった。
向こうの部屋に行く。
少し段差になっていて階段を登らなければいけないようだった。
向こうの部屋には燭台が飾られていた。
"我が亡き骸の髑髏を燭に供えよ"
意味がわからない。中二病単語なのだろうか。
「謎解きだわね。」
「お姉ちゃん、解いてみて。私はもうわかったよ。」
我が亡き骸…ここまでで殺したのはスケルトンとスライムのみ
髑髏は頭蓋骨のことかな…?
要するに溶けた頭蓋骨をさっきの部屋からとってこいと?
「しゃくら、もどるの?」
「お姉ちゃん、もどるんだよ」
嫌だ。目を瞑る。さっきの場所を思い浮かべる。
多分ホールだった気がする。戦闘風景を思い浮かべる。
転移と念じた。
目を開けると肩車していた桜ごとさっきの部屋に転移していた。
「お姉ちゃん、アイテムなしで転移はおかしいよ。さっきの雷もおかしいよ」
僕の体がおかしいのは十分自覚している。
どうやらアイテム使わないで転移するのはおかしいらしい。
『来睦ちゃん、桜ちゃん、何処に行ったの!?』
『さっきのへや。』
『え?』
アルティマさんからはそれっきりチャットは帰ってこなかった。
骸骨がわかない上に亡骸は溶けていて判別出来なかった。
どうするかなー。僕の体が異常。ダンジョンは詰んでる。
『お姉ちゃん、どうするの?』
『しょうじきいっちゃうとかえりたい。』
『チュートリアルは受けなきゃダメだよ』
なんか面倒になってきた。ダンジョン攻略が。




