第35話 焼き魚
『おかえりなさいませ、VRの世界へ、来睦様』
そんな言葉と共に視界は暗転した。
☆☆☆
僕はまた釣り堀にたっていた。
「おかえり、来睦ちゃん。」
アルティマさんは串に指した魚を焼いていた。
よく見るとフナのような見た目をしている。
よく焼けていて美味しそうだ。
「あ、来睦ちゃんも食べる?」
「うにゃ?」
「この魚はね、スプレッドフィッシュっていうのよ。この池でよく釣れるわね。」
この池は釣り池なのに割と水は澄んでいる。
僕はその魚を貰って食べた。
少し水々しくて美味しかった。
焼けているのに身が水々しいのは不思議だ。
隣を見るとアルティマさんは
魚を焼いてるのではなく切っていた。
「アルティマさん、刺身…」
「大丈夫よ、一応焼いてから切ってるから。」
そうなのかな。
VRだからといって油断はできない。
「そういえば、来睦ちゃん、お昼御飯何食べてきたの?」
「そうめん。」
「そうめんかあ、いいわねえ、今の季節に丁度いいじゃない。」
確かに今は真夏を迎えようとっしている時期だ
そうめんは定番かもしれない。
しばらく池を眺めて魚を見て待ってると
人が増えてきた。
時間を見る、大体15時くらいだった。
この時間にもなると
早い人はみんな帰ってる時間だ。
ログイン数も増えるのかな。
そんなことを思いながら再びもらった
魚を食べて桜を待っていた。
☆☆☆
魚も食べ終わりしばらくして待ってると桜もログインしてきた。
「お姉ちゃん、またせたね。」
そう言いながら頭を撫でてくる。
しばらく桜は僕の頭を撫でている。
するとアルティマさんがこう言ってきた。
「来睦ちゃんのチュートリアルに初級ダンジョンを攻略しに行きましょう。」
「それいいね!」
「え?」
僕なんかにモンスター倒せるかな…
少し心に不安がよぎる。
「大丈夫よ、来睦ちゃん、危なくなったら私達も介入するから。」
「お姉ちゃんを見てると介入する必要なさそうだけどね。」
介入する必要なさそうなのかな…
☆☆☆
3人でしばらく草原を北の方向に歩く。
すれ違う人達は吃驚したり
写真を撮ったりする人がほとんどだった。
「来睦ちゃん、チュートリアルダンジョンはね。それほど難しくないいのよ。」
「うーにゅ?」
「とりあえず、討伐とか素材とか学ぶところだよ?」
ならば運営は何故そこに転移させないのか。
僕が首を傾げると何やら不思議そうに桜が覗き込んできた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「うーん?」
「来睦ちゃん?」
「ここの運営はなんで最初にチュートリアル出さないのかなって」
思ったことを口に出してみた。
「うーん、多分、飽きられるからじゃない?」
「飽きられる?」
「説明書読まない人達は面倒だから読まないでしょう?」
確かに面倒だから読まないという人は
僕の友達にもいた。変化前の友達だけれども。
「そうなのかー」
☆☆☆
しばらくするとダンジョンについた。
ダンジョンの見た目は何やら古びた廃墟みたいだった。
これがダンジョンか。
「今回は私達がいるからいらないわね。剣姫ちゃんは回復魔法使える?」
「使えるよ!」
「なら問題は無いわね。」
「うーん…」
「お姉ちゃん、ダンジョンは、地下に繋がってるんだよ。」
「そうなの?」
「だから上が小さくても地下は広いんだよ?、それにこの世界は常識に囚われちゃダメだよ。」
常識に囚われちゃダメ…
この言葉は一体どういう意味なのだろうか。
僕はチュートリアルダンジョンの門の前に立った。
扉が閉まっている。
「来睦ちゃん、扉を開けてみなさい。」
「お姉ちゃん、頑張って」
どこをどう頑張れと言うのだろう。
とりあえず、自分の身長の2倍もある大きな扉に
僕は手をかけて魔力を流した。




