第29話 少年
──今、目の前で疑問をぶつけて来る少年
…年齢的には青年とも言えるかもしれない。
市河悠くん、ゆうくん。1人称は僕で
中性的な顔付き体付きをしている。
学校では去年の文化祭、
僕と一緒に女装に巻き込まれた男子高校生
なかなかに可愛かった。
学校では僕によく似た弟分と見られている。
学校では結構両性から告白を受けては断っていた。
そんな子が目の前で首を傾げている。
あっち側はどう思ってるのかわからないけど
クラスメイトに違和感を感じて
疑問を抱いている、当然の反応でしょうがないと思う。
突然、書類で1回、区切り時間を置くと
インターホンに向かって言った
「かえではいないか?」と問いかけてきた。
僕は少し迷った果てに「僕が楓だよ。」と答えた。
戸惑っているのも仕方ないと思う。
自分でも思うんだ。違和感だらけなんだもの
小さな子に質問を答えるお兄ちゃんのように
「楓ちゃんっていうのか、僕はね、この家に住んでる天城楓っていうお兄ちゃんに用事があってきたんだけど?楓お兄ちゃんはどこに行ったのかな?」
インターホン越しに現実逃避するような声が聞こえた。
現実逃避された。わかってたけど。
とても僕はショックだ。
小さい子の声として認識されたのだろう。僕は幼女だもの。
そう聞かれるのも無理はない。
自分の今の声が非現実的というのは十分理解している。
「僕が楓、天城楓、ね。市河悠くん。」
信じてもらえないと思うけれども
声くらい変わってても友人なら見抜けよ。
ゆうくんは考えるような顔をして
「風邪治ってないなら寝たら?」と言った。
☆☆☆
「ちょっと体温計持ってくる。待ってて」
「ああ、うん。無理しないで。」
戸惑ったような返事を返してくる。
今、家にはいられるとまずい。
僕は医療箱が入っているあたりの引き出しを開ける。
数回繰り返し体温計を引き当てた。
そのまま測ってみる…
実際は測るふりだけしている。1分感覚で待ってみる。
「38度…」
表示されてないけどそう答える。
「楓もインフル…?」
「治ってないかもしれない。明日病院行く。寝る。おやすみ」
「うん?、おやすみ。」
悠くんはそう言って書類をインターホン下のポストに入れると
そのままインターホンを元に戻して切られた。
おそらく帰ったのだろう
悪いことした気がする。
本当は風邪じゃないんだ
ごめんね、ゆうくん、また会う時は謝るから
そんなことを思いながら
僕は昼食を食べるために台所に向かった。




