ボス戦 前
しばらく上見ながら落下していると突然体が叩き付けられるような衝撃が走った。
一瞬死んだかと思ったけども自身の装備が水装備だと確認して安堵する。
バシャンという水らしき音が響き遠くに見える鎖の垂れ下がった上の天井が閉じられた。
あれ?ここ何処?僕また迷った…?
なんて思いながら周囲を見渡すとたまちゃんもティーナさんも水面に立っていた
ふと思い出す。上の階は確か毒の水だったはずだ。
つまりこの水も…と思いながらメニューを開いてステータスを確認した。
どうやら毒の水ではないようだった。毒の水だったら死んでいた。
そう思えば運がいいのかもしれない。
「あるじ。冷たいのじゃ」
冷たいね。この水が冷たい。僕の腰あたりまで水が張っている。おそらく真っ暗。
こんな場所で戦闘やるのはかなり苦戦を強いられるような気がする。
とはいえ敵も出てこないしなんのための空間かわからない。
「てぃーなさん、たまちゃん、これなに?」
僕は2人に此処がどんな空間なのか問いかけることにした。
「知らない。」
「わかんないのじゃ」
当然というか予想してた解答が帰ってくる。
しばらく待ってみるのが得策なのかもしれないと思った矢先に
異変に気が付く。
なんか水の上に霜みたいなものが浮かんでいるような気がした。
そして心做しか水そのものの温度も下がっている様な気がする。
僕は潜って下を見ようとする。
潜った僕の目に映ったのは水面からフィールドに徐々に姿を現す海月の姿だった
グレイスジェリール Lv.55
レベルが飛び抜けて高いことからもおそらくこれが今回のボスだ。
グレイスって付いてるから水属性か氷属性…だと推測する。
僕も吃驚して体を起こし立ち上がる。
「あるじ、気を付けるのじゃ」
「蛙もありっちゃありだけど海月もありっちゃありだよね。」
2人共既に身構えていた。僕らのボス攻略は今ここに始まった。
グレイスジェリール。暗くてよく見えないが薄く光っている触手の部分は半透明な青色をしている。
触手はパッと見…2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24
24本くらい。こちらが攻撃しない限りは相手側も攻撃して来ないようで待ってくれている。
「来睦ちゃんって数字わかるんだ。」
なんて僕のことを幼い子供のように思っているティーナさんから馬鹿にしたような声が聞こえた。
多分ティーナさんはたまちゃんを保護者に見てるのかもしれない。
保護者があるじとか言ってる時点で気付いて欲しいけど数字わからなかったら
オンラインゲームできないよ。
僕の場合はこれから自分流儀の楽しみ方を見付けていけばいい。
それはそうと今はボス戦。
さっきスキルが使えなかったのでとりあえず試してみることにした。
ボス戦でスキルとか使えなかったら鬼畜を強いられることになると思うし
僕は魔法を使えるか。火球を発現させる。
発現した火球は周囲の空間を明るく照らし海月の正体も明らかになった。
薄青色で結構大きめの…シェルグライド拡大版とでもいえばいいのかな。
ところどころ上部に殻が見えた。
どうやらスキルは解除されているようで魔法は使えるようだった。
☆☆☆
開戦の攻撃はやはりというか最初にたまちゃんが剣で上から殻を割ろうとして攻撃した。
僕もたまちゃんに便乗して火球を飛ばす。
海月はたまちゃんの攻撃を知覚すると触手で水の中に弾き落とした。
僕の飛ばした火球も水面に払い落とされた。
「痛いのじゃ。」
こっちに氷の刃が数回飛んでくる。なんというか今までのボスよりも攻撃速度がはやい。
「ちゅうきゅうけっかい…」
僕は咄嗟に目を瞑り周囲に結界を貼る。
結界を2回割る、ガシャンという音が響いた直後硝子の崩れる音が響いて
目を開くと崩れていく結界が目に映ってた。威力も強い…
「私は…いいや。」
ティーナさんの呟きが暗闇に響いた。
「たまちゃん、しばらくまってみよう。」
「わかったのじゃ」
1回計画も立てなきゃ行けないような気がした。
触手にダメージ判定がないことも理解した。
詰まり何処かを壊さなければおそらく倒すことは出来ないのだろう。
しばらく待ってみても攻撃が来ないあたりおそらく攻撃はこっちの攻撃が先で
こっちが攻撃した分に応じて攻撃をし返すというシステムを取っているのかもしれない。
ティーナさんとたまちゃんが僕を中心に集まる。
「あるじ、どうするのじゃ?」
どうするって言われても…僕はしばらく考えたあと暗闇を漂っている海月を指さす。
「からどうにかしないと…」
「確かに来睦ちゃんの言う通り殻の中にダメージ判定の部分がありそうだよね。」
ティーナさんも僕の考えに納得した様で頷いている
「でもあるじはどうやってあの殻壊すのじゃ?」
確かに壊さなければ意味が無いとはいえ壊す方法を考えなければいけない。
「そこは…たまちゃんまかせで?」
「さっき攻撃してきたが結構硬かったのじゃ。」
たまちゃんの攻撃でも罅すら入ってなかったもんね
どうするか…
海月は未だに暗闇の中を漂っていた。
「とりあえず、戦闘すればいいのじゃ」
お…おう…流石戦闘狂…なのかな…?たまちゃんはそんなに戦闘狂ではないはず。
たまちゃんは水面を走って海月に剣を掲げて飛びかかった。
と同時に海月は攻撃を察知したのか再びたまちゃんを水の中に弾き落とした。
これエンドレスでやられる気がする。
僕は周囲に冷気を集め触手の方に指を向け触手を凍らせるために冷凍光線を打った。
冷凍光線は下の水に当たり接触していた触手から凍り付いていく。
これで倒せればいいけどそう簡単に行かないのはわかっている。
氷が広がる前に海月は水面から無理矢利触手を引きちぎった。
引きちぎった触手は再生しなかったけれど海月に大してダメージはないようで
引きちぎった触手から僕に向かって冷凍光線を打ってきた。
「来睦ちゃん。危ないよ。」
僕と冷凍光線の間にティーナさんが入りティーナさんは剣で冷凍光線を水面に弾き落とした。
冷凍光線が落ちた水面は薄く凍り付いていた。
剣が凍り付かないあたり何かの装飾かスキルの影響なのだろう。
「やっぱりつよいね。」
「レベ50層でこれくらいだから私も行けるかなって思っていたけれども少し難しい気がする。」
ティーナさんはLv.52だっけ。遠いなあ。
この程度で少しなの?え?確かに鬼畜ゲームというのは聞いたことはあるけども…
「それはそうとボス戦だね。」
ティーナさんは水面を駆け出して海月を目に据えると跳躍して一閃。通り抜けた。
弾き落とそうとした海月の触手が水面に落下する。
海月の触手にも結構重さはあるようで水面に波紋を起こして落ちていった。
こういう風に触手を減らしていく系のボスなのかもしれない。
最後は無防備になるかターン制で触手を生やして復活するか。
あとティーナさんのスキル?が桜が使ってるスキル?によく似ていた。
僕もどうしようかなと思っていると旗が目に付いた。旗でも切れるかな?
僕もティーナさんの真似して片手の旗を両手で持って掲げ弾き落とそうとしてきた海月の触手を一閃した。
つもりだった。予想していた通り旗で触手は切れないようで触手に受け止められてしまった。
そのまま僕は水面に叩き落とされる。たまちゃんの言ってた通りこれは痛い。結構な勢いがあった。
「あるじ、大丈夫なのじゃ?」
「だいじょうぶだよ」
僕は水面から立ち上がる。体が少し痛むけども戦いこれは言ってられない。
「どうするかな…」
海月を見ながら呟く、ほんともう手詰まりのような気がしてならない。
けれどもかすかに希望の光が見えた気がした。




