鎖柱
階段が見えた場所から少し進むと下の層で見たような分岐道に突き当たった。
嫌な思い入れしかないので即断で決める。
階段も見えてるしとりあえず階段の方に行ってみた方がいいのかもしれない。
と何も言わず僕は階段の方向を指さす。
「わかったのじゃ」
「階段に向かうんだね。わかった。」
階段の方向を歩く。足場が消えているから戻れないとはいえ階段あればこの層には用はない。
しかして現実…じゃなくて仮想世界は非情だった。
その道が広場に繋がっていて再び戦闘を強いられたからだ
今の状況だと厳しい。としか言えない。
「どうする?」
確かまだスキル封印は解かれていないはずで…僕には何も出来ない。
「とりあえず、私が倒してくるのじゃ。」
そう言ってたまちゃんは目の前の蛙に向かって弓を構えた。
ポイズンフロッグ Lv.49
ポイズンフロッグ Lv.45
こっちから体力が見えるということは既に間合いには入っているということ。
敵はたまちゃんを見据えると口を開け。毒玉を発射してきた。
たまちゃんは弓を消滅させて剣に持ち替える。
「こっちは罠でスキル封印かかってるのに相手容赦ないの酷いよね」
ティーナさんが愚痴るように呟く
言う通りで相手だけスキル使えるというのも確かに酷いような気はする。
たまちゃんはティーナさんの方を横目で見ると
蛙の毒弾を傷を付けないように素早く弾き除けた。
あれどうやってるんだろう…
僕なら多分出来ないでそのまま浴びるかもしれない
「どうするのじゃ?」
何時もよりも蛙の間合いが広いような気がするけど気のせいかもしれない。
周りを見渡してこの広間に階段はないと理解する。
向こうに消える道を見つけた。
「…にげる?」
この層が終わってもスキル封印解除が解けなかったらキツい様な気もするし。
階段に希望を賭けるしかないのかもしれない。
たまちゃんは僕の言葉に頷く。
「逃げるって…?」
ティーナさんは僕の言葉に首を傾げた。
「こういうふうにじゃ。」
たまちゃんはティーナさんを抱きあげるとそのまま跳躍して蓮の上を飛ぶ。
何も音もなく着地をした。後ろを見るとさっき戦っていた蛙がこっちを向いていた。
「あるじの妹ちゃんが言うには間合いに入らなければいいのじゃ。」
確かに相手の攻撃範囲を教えたのは桜だから間違ってはいない。
「え?、来睦ちゃんの妹ちゃんは上級者…?」
桜は二つ名持ちだから上級者…なのかもしれない。
僕はティーナさんの問い掛けに微妙ながらも頷く。
「たまちゃん、かいだんみえる?」
「みえるのじゃ」
どうやらたまちゃんにも階段は見える位置にあるらしい。
僕は階段を指さした。
「来睦ちゃんの妹の名前は…?」
「ないしょ」
ティーナさんが桜の事を問いかけてきたけど
流石に騒がれるのは嫌なのでダンジョン終わるまで内緒にしておくことにした。
たまちゃんは僕とティーナさんを抱えて階段まで走り切った
何故か僕が疲れてきた。
☆☆☆
目の前に階段がある。上を見ると蓮らしきものが見える。が柱はなさそうだった。
「これが最後の階だといいなあ。」
とティーナさんも遠くを見るように呟く。
これが最後の層じゃないと厳しいような気もする。
段々と敵も強くなってきてるし僕には倒せなかったから単独対処できないのは痛い。
今回の層はスキルまで封じられて戦闘という戦闘はできなかった気がするし。
湊くんの言ってた鬼畜はこのくらい序の口なのかもしれないと思いながら上を見る。
「それじゃ行くのじゃ」
僕とティーナさんを抱き上げたままたまちゃんは階段を登ろうとする。
「ちょっと待って、玉藻さん、おろして。」
「わかったのじゃ」
たまちゃんは僕とティーナさんを階段におろした。
きっとティーナさんもしっかりと対峙したかったのかもしれない。
僕は階段の上に座り込む、休憩したい。
「あるじ、大丈夫なのじゃ?」
ほんと僕って体力ないなあ…と思ってしまう。
たまちゃんは2人抱えて走り回っても何時もの様に何事も無かったような感じだ。
「だいじょうぶ…だとおもいたい…」
消え入りそうな声で俯きながらも僕はたまちゃんに返事を返す。
本当に大丈夫だと思いたい…
VRでつかれるということは単純に僕自身の精神力が弱い可能性もある…
「来睦ちゃん?」
ティーナさんは僕の隣に座ると僕を撫で撫でしてきた。何故だか落ち着いたような気がした。
桜の撫で撫での仕方に近いような感じがする。
しばらくそのまま休憩して僕は立ち上がった。
階段くらいは自力で上がってみようかと思ったけれど後ろからたまちゃんに抱き上げられてしまった。
まあいいや。次の階も多分難しい。
ならば体力は温存しといた方がいいのかもしれない
僕はたまちゃんの抱き上げを受け入れる。
「次の階にいくのじゃ。」
たまちゃんは僕を抱き上げたまま階段を上がった。
ティーナさんを置き去りにするの早めて欲しいとは思ったけれど
たまちゃんはティーナさんの事をどう思ってるんだろう…と考えると言えなかった。
☆☆☆
おそらく最後の階層なのだろう。その場所は蓮と毒の水しかなくて
周囲を見渡して壁が見えるくらいには狭かった。
四隅の方角には柱がたっている。
床一面には消えない色の蓮が敷かれていて毒の水が意味をなしてなかった。
「なんじゃ?ここは…?」
たまちゃんの言う通り僕も不思議だらけだった。
真ん中の鎖は健在でティーナさんが
鎖を引っ張っているが何も起こらないのかしきりに首を傾げている。
「たまちゃん、おろして」
「あるじ、私も行くのじゃ。」
たまちゃんも鎖の方に行くようでそのままたまちゃんが鎖に移動する。
下の層でも触ったことは無かった鎖は少しだけ冷たいけれど鉄製の鎖に変わりはなかった。
「たまちゃん、おろして」
「わかったのじゃ」
僕はたまちゃんに下ろしてもらい。四方の柱を観察する。
よく見ると鎖の彫刻みたいな形だった。
真ん中に何も無く鎖のような形に綺麗に彫り込まれている。
上を見るとその鎖の彫刻は天井から繋がっているようだった。
まさか…僕は向こうで真ん中の柱を見ていたティーナさんを呼ぶ
「てぃーなさん」
「なあに?」
「こっちきて、てぃーなさんけんもってる?」
剣持ってれば誰でもいい。
「わかった。」
しばらくするとティーナさんが駆け寄ってきた。
しゃがんで柱を見ている。
柱の造形が気になるのか指でなぞっている。
「けんはあるけど、どうしたの?」
ティーナさんが柱を見るのをやめて首を傾げる。
「このはしらけんできれる?」
「いいよ?」
ティーナさんはその場で立ち上がるとその場で柱に向けて一閃した。
柱の鎖は鎖と言える形を保ったまま、ずれるように落ちていく。
「なるほどね。これを全部やればいいの?」
僕はティーナさんの言葉に頷いた。
僕はたまちゃんの方に戻って真ん中の柱をなぞる。
しばらくしてティーナさんが戻ってきた
と同時に真ん中鎖が光を帯出して
足場が下がっていく。というか水と蓮が消えていく
「しかけ。」
「そうだね。仕掛けが作動したってことはボス近いのかな。」
きっと下に魔法陣でもあるのだろう。
洞窟も塔もこれ系だったし…と思った僕が馬鹿だった。
部屋を覆うくらいに、眩いくらいの光が鎖から漏れる。僕は反射で目を瞑った。
目を瞑ったまま髪の擽ったさを、吹き付ける風と浮遊感を感じた。
外では無いはずだ。つまり風が感じるというのは落ちているということにほかならないのか?
覚えのない浮遊感におそるおそる目を開く。
上にあった床は開いていてそのまま僕もたまちゃんもティーナさんも階層を落下して行った。




