剣舞
ずっと走ってると広間に出た。僕を天空に突き飛ばしたあの鹿も見えた。
たまちゃんは僕を肩車したまま危機感を感じたのかその場に立ち止まる。
少し遅れてティーナさんも立ち止まった
鹿はたまちゃんと僕を見据えると角をこっち側に向けて突進してきた。
あの時もこうやって突進して角で上に僕を吹き飛ばしたのかもしれない。
「来睦ちゃん、任せて。」
ティーナさんが突然剣を構えて前に出る。鹿の角をその剣でして受け止めるが
衝撃には耐えられずに後ろに下がった。
たまちゃんが突然剣を持っていない方の手で僕の膝を掴む。
「ひゃっ」
たまちゃんの手は冷たくて唐突に触られてなんか変な声が出たんだけど…
「あるじ、落ちないようにするのじゃ」
なるほどね。たまちゃんは今から素早く動くのかもしれない。と思っていた。
実際には目の前の鹿に向かって僕の目でしても見えない速度で切り裂いた。
鹿から青いポリゴンの放出が増えていき最終的には切り刻まれて消えていった。
何回切り裂いたんだろうか…
たまちゃんのレベルはそんなに高くないけども鹿を一撃で倒すってことは十回は斬ったのかもしれない
凄まじい風圧が襲ってくる。僕はたまちゃんの耳を掴みそのまま風圧から耐えた。
もふもふした毛と僕の水色の髪が風圧で荒ぶる。
「擽ったいけどいまはしょうがないのじゃ」
本当にしょうがないと思う。そうしないと吹き飛ばされて落とされそうだったし
ふとティーナさんの方を見ると呆然していた。
しばらく沈黙、そのあとティーナさんは周りを見渡すと呟いた。僕に対して
「今の攻撃、来睦ちゃんは見えた?」
僕の目でしても見えないということはティーナさんの目にも見えない。
「みえなかった。」
僕はティーナさんの問いかけに正直に答える。
本当に見えなかった。
「そうじゃ…な…」
たまちゃんは僕の反応に対してもふもふした耳をしょんぼりさせながら
悲しそうな声で呟いた。
僕は旗を持っていない方の手でたまちゃんのもふもふした耳をもふる。
毛並みは綿を触っているように触り心地がいい
「あるじ、辞めるのじゃ、擽ったいのじゃ」
やっぱり擽ったいらしい。それでも僕はもふる。触り心地がいいからもふる。
「いちゃついてる…」
ティーナさんにジト目で見上げられた。
羨ましいのかな?もしかして仲間に入りたいのかな…?
「あるじ、いくのじゃ。」
たまちゃんが僕の手を耳から払い除ける。
ああせっかくのもふもふが。とはいえすぐそばにあるんだけども。
ティーナさんはアイテムを拾った。何を拾ったのか気になる。
そういえば僕も鹿には遭遇したけれど結局2層では倒せなかったから落ちる素材とかわからない。
その時は咄嗟に装備スキル使って毒の水の向こうに突き飛ばして逃げた。
「玉藻さん、素材どうしますか?」
「そのまま渡してくれると助かるのじゃ。」
「わかりました。」
ティーナさんはたまちゃんに素材を手渡しした。
濃水色の毛皮みたいなものと青色の角みたいなものが見える。
とはいえ鹿の素材としては極めて妥当な特徴とも言える。
☆☆☆
向こうの道は今までの道と違う色…また面倒な…広間除けばこの色なのでは…
ってことはほとんど全部道は消える式の蓮なのかもしれない…
道中で狙われる可能性も少なくはない。
両端に柱があるのと上ら辺で海月が浮いていて結構高難易度を突き付けられた気がした。
「来睦ちゃん、どうする?」
「ぼくはくらげをうちおとすよ。」
しばらく考えた末に覚悟を決めて海月を撃ち落とすことにした。
たまちゃんがやったから僕もやる
ポイズングライド Lv.45
ポイズングライド Lv.42
海月の向こう側に広間があればいいけれどなかったらなかったでたまちゃん頼みになる。
上手く着地出来たらいいなあと思いながら下に目を向ける。
「あるじ、むりするでないのじゃ。」
僕は無理しないよ。
海月を見据えて旗を片手に僕はたまちゃんの肩に立つとそのまま跳躍する。
たまちゃんは大丈夫だと思いたい。今は下を向けないから確認するすべがない。
僕は跳躍によって海月よりも上を取った。
旗を上に掲げ剣を振り下ろすように海月に向かって叩き落とす。
横にいた海月もそのまま横の方に旗を靡かせて後ろに吹き飛ばす。
海月は僕の一撃を受けて蓮の道に落下する。
僕も海月の後を追って蓮の道に向かって落下する。
下を見れば落ちていく海月を見据えティーナさんが刀を構えているのが逆さまに映る。
僕はそのまま落ちながら成功したんだと安堵しながら来たる衝撃に対して目を瞑った
しばらくして僕の体をもふもふした毛並みが包む
このもふもふ擽ったいと思いながら目を開く。
一面真っ黄色の毛並みが揺らいでいた。この毛並み見たことある…
毛並みは僕を緑色の蓮の上に下ろすと毛並みの正体がこっちを向いた。
「あるじ、格好良かったのじゃ」
僕はそのまま空中に跳躍して海月を叩き落としただけのはずなのに。
ってかここ何処…?周りを見渡すが柱は無いし広間もない。
向こうには走ってくるティーナさんがいるということは僕が海月を落とした位置からはそんなに離れてはいないということがわかった。
☆☆☆
再びたまちゃんに肩車される。すっかり定位置になってきたような気がする。
「お2人共もふもふだよね。」
ティーナさんが羨ましそうな目で見上げてくる。
「気になってたんですが…その獣耳と尻尾は何処で手に入れられたのですか…」
その目からくる視線が痛い。
僕は人じゃないし、そうだよね。気になるのはわかってた。むしろ今まで質問来ないのが不思議だったのかもしれない。
「んー。そうじゃな。じm」
馬鹿正直にティーナさんの問いに応えようとした、たまちゃんの耳を僕は引っ張る。
「あるじ、痛いのじゃ」
「べーたてすとのとくてんってさくらがいってた」
草原で桜が使った誤魔化しの方法を言ってみる
「そーなんですかー。来睦ちゃんはそんなに前からいるのですか。」
視線と棒読みが凄まじく痛い。嘘なんだけども。
「たまちゃん、しょうじきにはなしたほうがいいとおもう?」
正直に言ったって妖怪は人前に現れないらしいし神獣は不明、信じてもらえないのが関の山。
僕の正体は不明な方に該当するのかもしれない。
多分誤魔化した方が都合がいい。
「あるじの望むようにすればいいのじゃ。」
ある意味最適解だけどある意味これからの回答に困ることだった。
ティーナさんに悩んだ末に呟いた言葉は。
「おとめにひみつはつきものだよ。」
こんな姿で元男子の僕に言える言葉ではない。
「たまちゃんは言えるけど来睦ちゃんは乙女と言える年齢でもないでしょう?」
…。泣きそうになってくるよ。でも言い返せない。
「ひみつでいい?」
「そんなにしられたくないことならひみつでだきょうしておきます。くやしいです。」
なんか最後の一言が深い意味を示してる気がした。
向こうに階段が見えたような気がする。もう一度見てみると三角形が薄らと見えている。
僕はさっきから見える三角形のある方向に向けて指をさした。
「あっちに何かあるのですか?」
「さんかっけい。」
嘘ではない。けども目に見えてるのは薄く三角形だった。
三角形といえば階段の形
「多分階段なのじゃ。」
それはつまりもうすぐこの階層終わるのかな。早かったような気がする。
それはそれで終わって欲しい。
「下2階層に比べてこの階層は随分狭かったような気がします。」
確かにこの場所で階段が見えるということは狭いということなのだろう。
でもまだ真ん中の鎖を見つけてないし。
階段が見えるのも少し早いような気がしてならなかった。




