釣人
たまちゃんが向こう側を見て呟いた。
「あるじ、行き止まりなのじゃ」
どうやら向こう側には道がなかったらしい。僕の第1予想は外れていた。
結構悔しいっちゃ悔しいけどまだ冒険できるならそれでいい。
「次はどこに行くのじゃ?」
たまちゃんがその場にたちながら問いかけてくる。
僕は未だに袖を掴んだままのティーナさんにも目で知らせる。
「聞いてたよー、私としてはどこでもいいよー。」
ティーナさんは気軽に答える。どうやらどこでもいいらしい。
僕もどこでもいい。とりあえず目の向いた方向を言ってみる。
「みぎ?」
僕は右の方を旗でさしてティーナさんに答える。
「わかったのじゃ。」
そう聞こえたとともに蛙を倒した方からたまちゃんが走ってきた。
ティーナさんはたまちゃんを見ると立ち上がった。
そして僕の旗で指し示した方向に走っていった。
僕もティーナさんを追いかけて蓮の葉の上を走っていく。
しばらく走ってると曲がり角に当たった。曲がり角から見える水の色はやっぱり薄紫で
色合いの違いそうな蓮が見える。真ん中あたりには鎖みたいなものが垂れ下がっているのも見えた。
鎖は揺らいでなく真っ直ぐに張り詰めている。
この塔の構造どうなってるんだろう…
よくわからないけど凄い構造してるのかもしれない。
それとも以外に単純な構造の可能性もある…
上の方から鎖が垂れ下がっているあたり上の階に続いているらしい。
そうすると外から見た通り上の階は当然あるということだ。
「あるじ、見てないでいくのじゃ。」
僕は追いつかれたたまちゃんに連れられて再び歩き始めた。
また曲がり角だった。
そして毒の水の中に釣竿を垂らしているNPC?それともプレイヤー?がいた。
「こんにちは、何やってるんですか?」
ティーナさんは不思議に思ったのだろうか、その釣竿の人物に問いかける。
僕も不思議に思ったけど黙っておく。
「見てわかる通り魚を釣っておるのじゃよ」
「でもその水、毒ありませんか?」
紫色の水はやっぱり毒だったようだ。毒の中でも生きているエネミーは毒耐性持っているのだろうか。
そうすると僕がさっき見た蛙の攻撃を見ることを対策されたということに等しいのかもしれない。
別に毒封じられてもさっきの様に凍らせればいいんだけども。
「毒があるんじゃよ、若いもの達よ、気を付けなさいな。」
気を付けなさいな、とは言っているが、毒の中に釣竿を垂らしてる時点で説得力がない。
毒の水の中には魚も見えるけれども見た通り紫色で毒々しい。
「おじいさんの名前はなんというんですか?」
ティーナさんがおじいさんに名前を問いかける。
「儂はのう。忘れちまった…」
「そうですか、長生きしてくださいね。」
おじいさんは思い出したような反応をすると呟いた
「そうじゃ、この塔の蓮には稀に偽物の蓮が紛れ込んでおる。踏まぬ様に気を付けねばならぬな。」
ティーナさんはおじいさんの言葉に頷くとこっちに戻ってきた。
「よくわからないけど蓮に気を付けなければ」
「にせものがあるらしいよ」
僕はさっき聞いた言葉をティーナさんに伝える。
「それはわかる。多分踏んだら沈むだけだと思う。」
沈んでも下が毒の水だから結構単純にして厄介。
「問題なのは道が全くわからないことなのじゃ」
確かにさっき曲がり角で見た時に階段なんてものは見えなかったし。
何かに隠蔽されてるのか360度何処を見ても白い壁だったし。
条件が必要でそれを制覇したら解除されるパターンかな?
それはそれで面倒な気がする…
☆☆☆
「あるじ、階段を探すべきだと思うのじゃ」
それさっき僕も思った。
とりあえず、上に行けばなんかありそうな気はする。
「階段なんてここからじゃ見えないよ?」
ティーナさんは首を傾げる。
ここが僕達異種族とティーナさん人間族の違いだとすれば僕達は結構イレギュラーやってるのかもしれない。
「次はどこいくのじゃ?」
たまちゃんが僕とティーナさんに問いかける。
「まっすぐのみちでいいんじゃない?」
さっき曲がって行き止まりだったし見ても蛙いるから真っ直ぐでいいと思う
まっすぐの道にも蛙いそうだけど。
なんというか予想通りでまた蛙エネミーに遭遇した。
ポイズンフロル Lv.35
ポイズンフロル Lv.30
ポイズンフロル Lv.37
とりあえず、凍らせようと僕は再び指先を蛙に向けて冷凍光線を放った。
蛙は飛び跳ねて躱し、衝撃で蓮の下の薄紫色の水を飛ばしてきた。
それで思った、蓮燃やせば行けるのかな?
僕はさっきと同じようにと思ったけどティーナさんが刀を抜く様な構えで蛙を睨んでいる。
ティーナさんは刀を構え蛙を睨むと横、斜め上、逆斜め下に蛙に斬撃を入れて刀を戻した
「おー、かっこいい」ぱちぱちぱちぱち
「格好いいのじゃ」ぱちぱちぱちぱち
気が付けば自然と拍手していた。蛙はポリゴン状になって消えていく。
「聞くけど今の斬撃の軌道見えた?見えても言わないでね。」
「見えたのじゃ」
「たまもさん…だっけ、そうなんだ…」
若干、ティーナさんは引き気味にたまちゃんに反応を返した。
「来睦ちゃんは?」
僕は見えたか見えなかったか言うに迷った。多分見えたら異常の分類に入るのかもしれない。
僕の目は異常だ、そこにいる玉藻とおなじだ。
「あるじ、今失敬なこと考えなかったのじゃ?」
気の所為だよ。
「み…みえたけど…」
僕はティーナさんの質問に戸惑い気味に答える。
「軌道は?」
「あるじに譲るのじゃ。」
たまちゃんに解答権を譲られたので答えるとする。
「よこ、ななめうえ、ぎゃくななめした」
「本当に見えてるんだね。どうしよう…」
なんか見えてちゃ悪いような雰囲気になってきた。
蛙エネミーの落としたアイテムを拾う。
毒の侵食晶 x 02
新鮮な蛙肉 x 03
か、蛙の肉、蛙って食べられるのかな…
仮想世界であってもそういうのは御遠慮頂きたい…
僕は若干拾ったものに驚く。
それと侵食晶ってなんだろう、何かの材料かな …
「どくのしんしょくしょう?」
「侵食晶!?」
ティーナさんが驚いたような反応を見せる。どうしたんだろうか。
☆☆☆
「侵食晶ってこんな所でも落ちるんですか?」
ティーナさんの口調が変わって敬語になってる。
僕はティーナさんに向けてさっき拾った毒の侵食晶をかざしてみせる。
こうしてみるとアメシストみたいな綺麗な紫色の宝石みたいで菱形に三角錐が綺麗にくっ付いている形をしている。
その周りに禍々しく紫色のオーラを纏っている。
「侵食晶って珍しいの?」
「水の島では初めての発見だと思う。」
水の島では初めての発見?
「なんなのじゃ?その綺麗な紫色の宝石。」
たまちゃんも興味を持ったのか侵食晶を見に来た。
「しんしょくしょうだって」
「しんしょくしょう?何かを侵食するのじゃ?」
たまちゃんは僕の手の上に浮いている侵食晶を見ながら首を傾げる。
「毒の侵食晶はポーションの材料だよ。猛毒の方のポーション。」
これがポーションになるのか。とても見るからには痛そうな見た目をしている。
というか鉱石そのもので砕いても飲めそうにない。
「あとは装備の素材としても使える。」
「けっこうじゅうようなものなんだね。」
重要なものなんだ、というか生産素材指定とか色々あるかもしれないから
整理する時は気をつけないといけない。
説明欄も意外に重要かもしれないゲームだ、友達だって鬼畜なゲームと言ってたし。
侵食晶というアイテムを拾って向こう側にたどり着くとそこにあったのは紫色の池と色の違う編み編みの蓮だった。
道の蓮よりも濃い色をしている。
ひょっとしてこれがさっきおじいさんが言っていたにせものの蓮なのかな。




