昼空
僕達の目の前には模様の付いた中華風の大きな扉と円錐状の塔がある
塔なのか城なのかよくわからないけど塔にしておく。
「ついにきたね」
僕は隣にいるたまちゃんに問掛ける。
此処は洞窟からまっすぐいった薄らと見えた塔の場所だった。
「なのじゃ」
たまちゃんは僕の頭に手を置くとなでなでしてきた。
何時もの擽ったさが僕を襲う。
「この島広いのです…」
ティーナさんは疲れたのか項垂れてしまっていた。
なちゅの世界は広いのか。ティーナさんは僕を抱き上げる。
そんな力あるなら休まなくていいんじゃ…
「やっぱり噂は本当だったんですね。」
なんの噂だよ。また碌でもない噂なんだろうね。
碌でもない噂だよ。
釣り堀邪魔された時の恐怖は今でも忘がたいよ。
何だこの自問自答は、僕は何してんだ…
「もふもふです、ふかふかです」
物凄くくすぐったい、耳弄らないで、尻尾もふらないで、僕じゃなくてたまちゃんに抱き付けばいいのに
僕よりも数十倍はもふもふしてるよ。眠くなってくるよ。
僕は黙ってたまちゃんの方を指さす。
僕の意図を察したのかティーナさんから物凄く嫌そうな声が聞こえてきた
「いやですー、狐ちゃんがいいですー」
くすぐったいから離れて欲しい。
本当に離れて欲しい。目下の水に落ちればいいのか
僕は前に歩き出す。
そして蓮の花が浮く水の中に飛び込もうとした。
ティーナさんに引き留められた。
「狐ちゃん、いくらなんでもそれはあんまりですよ。私水耐性ないから死んじゃいますし。」
「てぃーなさんがはなれないのがわるい」
「きつねちゃんがもふもふなのがわるい」
引き留められて尚ティーナさんは僕を離してくれなかった。
近くで池の水を見ているたまちゃんにティーナさんを押し付ける。
「あるじ、どうしたのじゃ?」
たまちゃんは何も分かっていないようで僕は無言でそのままティーナさんを押し付ける。
それでも僕からティーナさんが離れることは無かった。
「このままだとぼうけんしにくいからはなれて」
「狐ちゃん魔法タイプですよね。」
ティーナさんはおもむろに僕に魔法タイプか聞いてきた。
僕はティーナさんの問いに頷く
「なら動く必要ないじゃないですか。」
確かに動かなくても攻撃はできるけど動きにくいから離れて欲しい。
攻撃飛んできたら流石に動くから
「あるきにくい」
「私が抱っこして連れて行ってあげますよ?」
「そういうのいらない」
ティーナさんはものすごく落ち込んだ表情で「そうですか」と呟くと僕から離れてくれた。
まさかそこまで落ち込むとは思っていなかった。
☆☆☆
ティーナさんは突然あたりを見渡すと僕から離れ扉に手を触れた。
しかし、大きな扉は開く気配がない。
「どうやって入ればいいのでしょう…」
たしかに扉が開かなければ正攻法では中に入ることは出来ないし
上見ても窓らしきものは見当たらないので多分正攻法以外に道はないのかもしれない。
「ちょっとさがしてくるね」
僕は上を見上げている2人にそういうと水の中に飛び込んだ。
「狐ちゃん、どこいくんですか?死んじゃいますよ?」
「大丈夫なのじゃ。」
そんな声が飛び込む瞬間に聞こえた
水の中は案外冷たくてそれでも道中よりは冷たくなく温くて蔦がいっぱい生えていた
けれどもスイッチらしいものは何処を見渡してもなかった
石垣まで泳いでいき端を一周してみる。
それでもスイッチらしいものは見当たらなかったので上に上がってみる。
蓮の花が目の前に写る。綺麗だった。
空はまだ真っ青で昼空だった、時間にはまだ余裕がある。
そして壁的にどこに来たのかわからない。
スイッチらしいものも見当たらないし。
僕は再び水の中に潜る。
なんかさっきから水の中に潜ってるのに全然苦しくない。
そしてまたまっすぐ塔の石垣に手を触れて1周するも橋が見えた。
そのまま近くまで泳いでいき僕は水から橋の上にあがった。
「狐ちゃん!?、大丈夫ですか?」
何処から持ってきたのかティーナさんは毛布みたいなアイテムを手に僕にかける。
凄くもふもふしている。多分僕よりも、もふもふの質は上かもしれない…
「あったかい…」
「狐ちゃんが喜んでくれて良かったです。」
そう言って微笑むティーナさんは心底嬉しそうだった。
「何かあったのじゃ?」
たまちゃんが僕に問いかけてくる。が僕は首を横に振る。
つまり何も無かった。
こういう手詰まりの場合は誰に聞けばいいんだろう。
桜?僕は疑問に思いながらもギルドチャットに切り替える。
来睦:こんにちは、だれかいます?
たまも:こんにちはなのじゃ
紫蘇:チャットなんて久しぶりやんな。こんちゃ、紫蘇です。
坩:確かに久々だ、はじめまして、ツボと申す。
Mr:僕も何時もはパーティやってるんでギルチャ使わないんだよね。はじめまして、Mrです。よろしくですね。
はじめましてのプレイヤーさんに返された。
どうやらこのギルドはギルドチャットあまり使わないギルドらしい。
紫蘇:そいやうちは神殿島で素材集めてるけど誰か来る?
坩:今からボス戦だからパスだ。
Mr:新入りさんはどうしたの?
来睦:だんじょんのしかけがとけないのでこまってます。
僕はチャットに問い掛けることにした。
☆☆☆
紫蘇:ダンジョンのギミック?確かに種類多いけどどこの島ん?
Mr:扉系だったら大体攻撃か魔力流すだけで開くよ。
紫蘇:そな初心者でも…攻撃の方は知らなそうやんね。
来睦:やってみます
紫蘇:ちょいまちいや、何処の島おるん?
なんかすぐに解決した。
どの島においても扉が出てくることは共通なのかもしれない。
チャット変えようとした瞬間に切り返された。
来睦:みずのしまいるん。
紫蘇:なるほどやな。
なんかよくわからないけど納得されたようだった。
来睦:ではまたこまったらちゃっとしますね
坩:次は役に立てるように頑張る…
紫蘇:またなー
Mr:気を付けてくださいね。
僕はチャットを切り替えると扉の前に立った。
「のじゃ」
「てぃーなさんでもたまちゃんでもいいからとびらにこうげきして」
確か攻撃すれば壊れるはず。
先に動いたのはティーナさんだった。
その場に止まって剣の柄を持って構えると見えない速度で扉を切りつけた。
扉は一瞬輝くとギギギギという錆び付いたような音と共にゆっくり開いた。
これで遂に謎の塔中に入れる。
完全に扉が開き切ったあとで僕達は1歩を踏み出した。
足元を覆うは緑色の見なれた蓮の葉の道とその周りを覆う不気味な薄紫色の水だった。




