冷たい
何回も経験して慣れたような浮遊感が僕を襲う。
6回くらい経験してなれたけども
浮遊感が納まって足に冷たい液体を感じて目を開くとログアウトした水の道だった。
にしてもこの世界はどれくらい広いのだろうか…
もしくは初期の島と塔で見た浮いてる島々と幽霊船、この島くらいしかないとか…?
1島でも登ってくる時は結構広く大きかった印象がある。
考えていてもどうにもならないけど。
塔の上から見ても島の端までは見えなかったし…
向こうにも建物がうっすらと見える。霧がかかってないけど霧がかかっているように見える。
何があるのかよく見えない。
今日はあの場所まで行きたいけど多分行けなさそうで僕は首を傾げる。
フレンド欄を見て確認するが桜もたまちゃんもいない。
どうしよう。
アルティマさんもいない。こんな昼間にいる訳が無いよね…大人だと思うし仕事中かな…
本来なら僕も勉強してなきゃいけない立場なんだよね…
お仕事頑張って…アルティマさん。
座ろうと思ったけど水の上だし何よりこの服だと水に向いていないので
僕は装備のリストを開いてアルパイン一式に着替えた。僕の手の上に旗が出現する。
この旗はさっきの傘よりも軽くて回しやすい。
旗を回して丈夫さを確かめる。
風を切る音と共に水飛沫が周囲に跳ねる。
結構頑丈なようだったし旗の布地は濡れていなかった。
「あるじ、何やっておるのじゃ?」
たまちゃんが首をかしげてみていた。たしかによくわからないよね。
「なんでもないよ」
たまちゃんにそう返しておく。
「あるじ、どうするのじゃ?」
「とりあえず、まっすぐすすんでみる?」
たまちゃんも首を傾げる、僕も首を傾げる。
目的地は一応次のダンジョンか街だったような気がするから。
☆☆☆
しばらく歩いているとペンギンに遭遇した。
足場が薄らとしか見えない水の上。
きゅいきゅい、と目の前を歩くペンギンはそう鳴いた。
たまちゃんとペンギンがいがみ合っている。
戦うのは怖いよ。
とはいえここらの湧きペンギンはそれほど強くは無いし僕だって頑張れば倒せるくらいのはず…
ミドルペンギン Lv.16 これくらいだから。
たまちゃんは弓を構え、躊躇うことも無くペンギンに向かい矢を引いた。
きゅいい。という鳴き声とともにペンギンは危機を察知したのか嘴に青色の光が集まっていく。
たまちゃんを狙わず、僕の方に向かってだけれども
「あるじ」
これはやばいと思ったのかたまちゃんは矢を引く手を戻し僕を抱えて目標から外す。
すれすれで僕とたまちゃんがさっきまでいた位置を下の水を凍らせながら細い青色の光線が通過していく。
予想通りのこの島にて幾度と見た冷凍光線だった。
道の水は凍っているがこれは好都合。
たまちゃんは僕を抱えたまま凍った水の上に音もなく乗った。
ペンギンを見据える。
威嚇はしているけれどどうにも怖がっているように見える。
この先は通って欲しくないような感じだ。
でも僕達はこの先を通らないと道を探して巡回しなきゃ行けないわけで。
僕は手加減をして旗のをペンギンに向けて旗の先に冷気を収束させる。
ペンギンは僕を見ると危機を感じとったのか水の中に潜った。
うわ卑怯、僕が言えたものじゃないけど卑怯。
水の中に入ったペンギンは僕とたまちゃんに向かって水鉄砲をかけてきた。
たまちゃんは僕を抱えたまま再び水の上に着地する。
着地した衝撃で周囲に水飛沫が飛び散る。
「難しいのじゃ。」
たまちゃんは僕を1度水の上に下ろすと片手に剣を持った。
「たしかにたおせない。」
水の島は桜が序盤の島だと言ってたし初期地点からはそんなに遠くはないらしい
ただ他の島とか見てないからわからないが。
とはいえこんなに回避率が高いと結構厳しいのではないだろうか。
☆☆☆
たまちゃんはペンギンに向かって鋭爪を突き付ける。
「今から汝を倒すのじゃ」
それはある意味ペンギンに対する死刑宣告のようなもので
ペンギンもじっとたまちゃんを見ている。のかな?
たまちゃんが動いた。
素早く氷の上を走って跳躍しペンギンに切りかかる。
ペンギンは水の中に隠れた。
たまちゃんはそのまま水の中に突っ込んで行った。
あれ?これ僕も行かなきゃたまちゃん溺れて1回死んじゃうんじゃないか。
僕もたまちゃんの渡った氷の上を走って水の中に飛び込んだ。
寒い。というか冷たい。桜の嘘吐き、水中泳げなきゃクリア出来ないじゃん。
見越してはいないけど着替えておいてよかった。
僕は水中で目を開ける。なんか眼鏡をかけている様な感じで不思議な視覚だった。
辺りを見回してたまちゃんは真下にいたので僕の手で持ち上げる。
向こう側にはなんか神殿みたいなものが見える。
それはそうと僕は浮遊を発動してたまちゃんを持ち上げながら陸に上がった。
「あるじ、ごめんなのじゃ」
しょんぼりと僕を見て濡れた髪と狐耳から水を流しながら謝るたまちゃんになんだか罪悪感を感じた。
「げーむがわるい。たまちゃんはわるくないよ。」
僕も悪くない、たまちゃんも悪くない。こんなシステム作ったゲームが悪い。
けども水の中にいても即死はしないだけまだマシだったのかもしれない。
ペンギンは何処に行ったのかわからないけれども。
それにしても寒い…水の中に潜ったからか装備は水を弾いてくれて濡れてはいないけど
一気に気温が低くなったように感じる。今だけなのかもしれないけど初めてだからなんか嫌だった。
☆☆☆
しばらく歩いて座る場所を探すがペンギンがそこらに湧いていて座る場所も見つからない。
ここは南極か。違うけども。
周りの敵にペンギンが多すぎる気がする。
救いなのはさっきと違って近くを通っても襲ってこないことだった。
レベルはさっきのよりも上で今にも襲ってきそうな印象なのだけども。
向こう側に座る場所を見つけたので1回休む。
「あるじ、綺麗なのじゃ」
たまちゃんの言う通り確かにこの島は綺麗だ。
向こうまで水が広がっていて海にいると言っても納得できるようなくらいだった。
これで水の島なら海の島はどうなっているのだろうか…
深海とか…?いやいや、それはない気がする…
僕はさっき見た薄らと見える塔らしきものを指さしてたまちゃんに教える。
「あのばしょまでいくよ?」
夜になる前に行ければの話だけども。
幸い空はそんなに暗くなってないし時間を確認するとまだ1時だった。
「わかったのじゃ」
たまちゃんは頷いてくれた。たまちゃんに見えているかわからないけれども。
きっと直線状の向こうに見えるあの塔らしき建物が見えていると信じたい。




