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世界  作者:
-2nd- / カエデの邂逅
149/175

第148話 涼しい風

「わかったのじゃ。」

どうやら進行路は決定したみたいだ。




☆☆☆




ぱしゃぱしゃと水の跳ねるような音が聞こえる。それは実質僕の足元からなっていて僕の膝くらいまで水にひたっている。

「みずふかくなってきてない?」

僕はたまちゃんに問いかける。気のせいだと思いたいけど明らかにそうなっている気がする。

突然僕の体を浮遊感が襲った。

どうやらたまちゃんが僕の体を抱き上げたようだった。

「あるじ、だいじょうぶなのじゃ?」

大丈夫じゃないかもしれないけど何時までも肩車だとたまちゃんの戦闘の邪魔になってしまいそうな気がするから。僕は嘘を付いた。

「だいじょうぶ…」

「のじゃ?危なくなったら抱き上げるのじゃ」

どうやらどちらにも抱き上げられる運命にあるらしい。僕は諦めるよ。

それにしてもこの道はところどころ足場が見えなくてとても怖く思う。

こういう足場が見えないとトラップとか仕掛けられてると何も見えない。

道らしきものが水の中で揺らめく。凄い光景。

正直1歩1歩、歩くのが怖い。

ただ道らしきものが薄らと見えるのだけは救いでそれは奇妙に映えた。


僕は目を凝らして見て見てみる。飛び石の足場の斜め先に何があるか見えそうだった。

明らかに水の色が違うのに。水の色が混じってない異常な空間が僕の目に見えた。

それは実質海の下にあるようでこれどうするんだろうか。

ダンジョン…?な訳はないか。僕は首を傾げる。

「あるじ、どうしたのじゃ?」

僕は行けるかもしれないけどたまちゃんは水に対する防御が多分行けないと思うし、あの爪に水中活動とか付いてれば別だけれども多分付いてなかった気がするし。武器としてのみだから。

今は気にする必要は無い。きっとこの先でまたわかる時が来そうな気がする。


それにしてもプレイヤーがあまりいない。このオンライン過疎ってるんじゃないだろうか。

疑問に思ったのでチャットに書いてみる。


来睦:このげーむかそってる?

たまも:かそってるのじゃ?


たまちゃん平仮名表記なんだ。意外だったけど可愛らしい気がした。何言ってるんだろう僕。何思ってるんだろう僕。

しばらく水の上で待ってみる。が、打ち込んだチャットはそのままで待っていても進まなかった。

ギルド今の時間誰もログインしてないのかな。コマンドで時間を調べる。

12時30分だった。以外に時間の経過が遅い。そしてもう昼だった落ちなければ。

桜が昼食作ってると思うし。あまりお腹はすいてないけど

「たまちゃん、おちるよ。」

僕はたまちゃんにログアウトすることを伝えメニューからログアウトを押した。


《またのお越しをお待ちしております。》




☆☆☆




僕は少しの浮遊感から目を開く。目に広がるのは見慣れた現の世界だった。

桜の部屋だっけ。桜は多分1階に居るのだろう。

僕は床を軽く叩く。コンコン、コンコン。と床を叩いた。

しかし、僕の力は弱いのか部屋に音は響かなかった。

ここままでは多分降りれない。

そういえばたまちゃんにログアウトの方法教えてなかった。とはいえ多分、桜が教えてると思うから大丈夫かな。


「あるじ、おはようなのじゃ」

たまちゃんを見詰めて1分と少し、たまちゃんがログアウトしてきた。

「どうしよう。」

本当どうしよう。僕の力では下に音は届いてないし。たまちゃんだと床ぶち抜きかねないし…

「どうしたのじゃ?」

「たまちゃん、ぼくをだっこしておりれる?」

僕は上を向きたまちゃんに問いかける。

「あるじ、下階に行きたいのじゃ?」

僕はたまちゃんの問いに頷いた。


たまちゃんは、ほぼ無音で階段を降りる。無音のせいか降りているのにおりている気がしない。

僕が階段降りている訳では無いけど。


たまちゃんは1階に降りると僕を床に下ろした。

「ありがと」

「あるじ、もっとだかれててもいいのじゃ。」

抱かれてる方が楽だけどそれはそれで桜のお兄ちゃんとしての尊厳が削られるから…


「お姉ちゃん、たまちゃん遅いよ!確かにお昼伝えなかった私も悪いけど。」

リビングに降りると桜と卯月が扇風機浴びながら素麺食べていた。気持ちよさそう。

僕も扇風機の前に座り扇風機を下に向けてしゃがむ。長くて首元が擽ったい。薄水色の髪が風に靡き涼しい風を浴びる。心地いい。

「私も浴びるのじゃ」

卯月も僕と一緒に扇風機の風を浴びに来た。気持ちよさそう。

こういう真夏日の暑い時に扇風機浴びてるとこのまま眠っていたい気分になる。

「お姉ちゃんはそうめん食べないの?」

素麺はあまりお腹空いてないから…今は食べない。

この体になってから食べ物が少量しか食べれなくなってなんかお腹もあまり好かなくなった。


僕はしばらく目を瞑って扇風機の風を浴びていた。

桜とたまちゃんが話してたけど扇風機の風とばさばさとなびく髪でよく聞こえなかった。

「。」

桜が僕たちに向けてなんか言ってるけど聞こえない。

「のじゃ」

「私はねるのじゃ。」

どうやらたまちゃんは寝るらしい。




☆☆☆




しばらくして目が覚めた。何故か座布団の上で体に毛布が掛かっていた。

誰が用意したのだろう。ありがとう…?

僕は誰もいない虚空に向かって首を傾げる。

壁にかけられた時計を見ると12時50分だった。どうやらそんなに経ってないらしい。

というかログアウトした時間から20分くらいしか経ってない。

この部屋にいるのは僕だけで卯月もたまちゃんも桜もいなかった。

誰もいない。もう1回寝ようかな。なんかとても眠いし。無防備だから怖いけど。

ここは田舎だから何も無いしきっと誰も来ない。

おそらく桜もたまちゃんも上にいるんだろうから僕には行けないよ。

「さくら…たまちゃん…」

変わり果てた何度も聞いた泣きそうな嫌に耳に残る幼い声が周囲に響く。

周りにはさっきなびいていた異様に長い薄水色の髪が散らばっていた。

異様に小さくなった手に取ってみると薄水色の髪はさらさらしていた。

そっか、これが僕の声でこれが僕の体なんだ。

何時見ても自分の体とは思えない。自分の手の感触だとは思えない。

僕は現実から目を背けるように自分は本当に弱い存在だと思いながら再び目を瞑った。

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