第125話 トラップ
あ、そうだ。僕はアルパイン装備じゃない。白花装備は水中の効果はない。
水が降ってきたら多分溺死する。
☆☆☆
鍵が閉まっていたので手前のホールに向かうことにする。
多分どこかで手に入る鍵だろうから。
このフロア外だったら嫌だなあ。そう思いながら。
しばらく歩いていると何処からかカチッという音が聞こえてきて
桜がこっちに駆け足で戻ってきた。
「なんじゃ?」
「お姉ちゃん、玉藻さん、1回檻の方に戻るよ!」
戻る…それはつまり不味い罠に引っかかったんだと思う。
桜は僕をだき抱えるとそのまま檻に囚われた階段の方に走った。
しばらくしてズササササササッという大量の何かが地面に刺さるような音が聞こえた。
少し待っているとその音は止んだ。
近くでスライムがはねる音が聞こえる。敵が湧いたようだった。
「もうだいじょうぶ…なのかな?…」
「なんなのじゃ?さっきのおとは」
「だいじょうぶだよ。」
僕は行こうと足を動かす。
「お姉ちゃん、降りたいの?」
「降りたいよ。」
桜は僕の行動を受け入れてくれたのか僕を地面に下ろして再び先導した。
その場所にたどり着いた。道が隙間なく鉄製の矢で覆われていた。
「なにこれ…」
僕の口からそんな言葉が漏れる。この光景見たら誰だってそう思う。
「お姉ちゃん、矢雨トラップだよ。」
桜は落ちている鉄製の矢を拾いながら至って冷静に答える。
僕は首を傾げ桜を見る。
「範囲10m×10mだっけ?その範囲に矢を降らすトラップだよ。今回は鉄の矢だから矢1本毎に30のダメージが加えられるね。」
また怖い。危険なトラップしかないんじゃないかと思う。
「だから罠にかかったと思ったら逃げるのは基礎だよ、中には強引に突っ切ったり結界で弾く人もいるけど…」
ダメージを受けたくないからね。僕だって逃げるよ。
結界でもいいなら僕も結界を貼った方がいいかもしれない。
しばらくして桜が矢を拾い終えたのか先の道を見る。まだところどころに矢が残っている。
「やはなんほんあるの?」
僕はさっき気になったことを桜に聞いてみた。
「わからないけど?、お姉ちゃんなにかに使うの?」
「つかわないよ?」
そもそも僕は弓を持っていないから矢を貰っても使えないと思う。
持っていても筋力足りないから使えないけども
目の前に薄緑色の、草原にいそうなスライムが出てきた。
桜はそのスライムを無視してそのまま先の曲がり角で立ち止まった。
僕もさくらを追いかける。
草原のスライムは善良だからそのままでいい。
「あるじ、このすらいむはたおさないのじゃ?」
「たおさない。」
そもそも攻撃してこなければ倒す必要も無い。
☆☆☆
そのまま曲がり角をまっすぐ曲がる。そして向こうにまた曲がり角が見えてきた。
この道長い。行く時にも思ったけどこの道長い。
桜はその曲がり角を曲がるとまた向こうの曲がり角で止まった。
僕も桜を追いかけて曲がり角まで移動する。
後ろを確認するとたまちゃんもちゃんとついてきていた。
「なんじゃ?あるじよ。」
「なんでもない。」
「お姉ちゃん、ここ行くとホールだよ。」
曲がり角の向かいに映るのはさっき行く時に見たホールだった。
「行ってみる?」
行った方がいいのかもしれないし行かなくてもいいのかもしれない。
ほとんど未探索状態だ。気になるから僕はその先に足を動かした。
後ろから抱き上げられた。、くるり、1回、回って降ろされた。
「お姉ちゃん、行くんなら行くって言ってよ。」
前にいるのは桜だった。
そのまま歩いてホールに入った。敵はさっきの薄緑色の草原スライムだけで
中心になにかの祭壇がある以外は何も無かった。
「何の祭壇だろうね?」
「なんのさいだんだろう?」
桜と僕の声がかぶった。意味もない問を問いかけた。答えは聞こえない。聞こえるはずがない。
そもそもわかるはずもない。桜にわからないなら僕にもわからない。
ぼくは祭壇に近付いて石を触ってみる。何も起こらない。軽く叩いてみる。何も起こらない。
手を離してみる。何も起こらない。
「ただのおぶじぇ?」
「お姉ちゃん、その可能性は低いと思う。だって真ん中青色に光ってるもの。」
だよね。怪しい。物凄く怪しい。
「じょうけんがひつようとか?」
「あー、ありえそうな気がする、なんかアイテムが必要なのかな?」
それはそれで面倒な仕掛けだ。
「わからないからほりゅうにしよう。」と僕が呟く。
「そうだね、いまはそうしよう。お姉ちゃん。」と桜も呟く。
ただ1人、たまちゃん動かなかった。そのオブジェもどきをじっと見詰めていた。
「たまちゃん、たまちゃん。」
僕は動かずオブジェもどきをずっと見詰めているたまちゃんに呼びかける。
しばらく服を掴んで揺さぶっているとこっちに気がついて頭を撫でてきた。
「なんじゃ?あるじよ、だきあげてほしいのじゃ?」
頭を撫でたままたまちゃんは僕に問いかける。
「なんかきづいてなかったから」
「そうか、私はあのオブジェもどきを観察してただけなのじゃ。」
確かに不思議なところはあるもんね。青い光とか。
☆☆☆
元に戻ってきた。こっちには階段しかなかったから次は向こうに行くらしい。
というか道が向こうしかないと思う。グラススライムの出てきた方だ。
こっちも変わらず白い石で構成されている。
さっきと違うのは煉瓦みたいな構造になっていないということだった。
壁の形状が変わった。壁に触れてみると石みたいにザラザラしていた。
桜は気にせず歩いていく。
なんか桜がダンジョン内で冷静すぎて逆に怖くなってくる。
プレイヤーってみんなこうなのかな?だったらとても接触し辛いと思うけど。
とはいえ集落のあれもあまり好きではないけど。
「さくら」
僕は曲がり角にいる桜に呼びかけた。
「なあに?お姉ちゃん、待ってほしいの?」
「あるくのはやいよ。」
「あるくのはやいのじゃ。」
たまちゃんと僕の声がかぶった。意見も同じだった。
「わかった。待ってあげるね。」
桜はどうやら待ってくれるらしい。レア傘奪われたらたまったもんじゃないからね。
待ってくれることには安心したよ。
桜がレア傘奪うとは考えにくいけれども。
僕はゆっくりと歩いて桜に追いついた。
「お姉ちゃん、大丈夫だよ、私は少なくともダンジョンの中にお姉ちゃんを置いていかないからね」
置いてったら僕はたまちゃん以外誰も信じれなくなると思う。
「わかってるよ。」
僕はお姉ちゃんらしくないけども。そして桜が僕にそんなことしないのもわかってる。
曲がり角で向こうを見た。桜の持っている僕の傘の光に照らされて薄くだが曲がり角が見える。
「お姉ちゃん。どっち行く?」
桜は歩きながら僕に問いかけてくる。まだ早いと思う。
もう少し歩いていると片方はホールが半分光に照らされて見えた。
「またホールなのじゃ」
後ろからたまちゃんの声がした。たまちゃんも見ていたらしい。
さっきもホールあったよね。不思議なオブジェの場所。
なので僕は見ていた、たまちゃんに問いかけることにした。
「どっちにいく?」
「なんで私に問いかけるのじゃ?」
「たまには。」
選ぶのが僕だけだったらつまらないから。ダンジョンとは常に賭け引きだとはよく言ったものだ。
だから僕はたまちゃんにも道を選ばせようと思った。
たまちゃんは「うーん…」と考えるような声を出す。
しばらくして「ホール」と聞こえた。悩むのは当たり前だよね。
「お姉ちゃん、ホール行くね。」
桜はそのまま走ってホールの前まで移動した。どうやら桜に襲ってこないあたり敵はいないっぽい。
音的にはペチャペチャと聞こえるから
いるのかもしれないけどいないことを願いたかった。




