第122話 ネクストフロア
人はもふもふに抗えない。人はお布団に抗えない。
僕はたまちゃんの金色に輝く綺麗な毛並みの中に入っていった。
☆☆☆
「お姉ちゃん、起きて。」
ゆさゆさと体をゆらされる。なんか不快感が襲ってくる。
凄く眠い。僕はその手を掴んだ。
「うひゃあっ」
外から吃驚したような声が聞こえてきた。よくわからない。
僕はその掴んだ手の指を甘噛みした。
しばらくして周りの温度が急に冷えた。寒くなった。意識がはっきりとした。
手の主は僕をそのまま引きずり出して抱き上げながら言った。
「お姉ちゃん、やめて。」
手を噛むのをやめて声のした方向を見る。目があったのは桜だった。
「…。」「…。」「…?」
しばらく沈黙が流れる。なんかとても恥ずかしいと思った。
なんで僕がこんな目に遭わなければいけないんだ。
沈黙を破ったのは桜だった。
「さっきのお姉ちゃんも凄く可愛かったよ。後でね。少しダメージ食らっちゃったし。」
甘噛みでもきっちりとダメージは入るようだった。
そもそも甘噛みで攻撃する機会なんてあまりないと思うけども。
そして桜はこっち見ないで。僕はたまちゃんの尻尾の中に再び隠れた。
桜に引っ張り出された。この攻防がしばらく続いた。
気分を取り直して桜が前を見ている。
「お姉ちゃん、さっきの機械とガラスに囲まれた階段があるよ。」
嫌な予感しかしない、そもそもさっきのは水位上昇だった。
とりあえず、桜に聞いてみることにした。
「さくら。」
「なあに?お姉ちゃん。」
「こういうしかけは、さっきみたいなのしかおきないの?」
「ううん?仕掛けは仕掛けでちゃんと動くように設定されてるよ?処罰はランダム。」
「つまりすいいじょうしょうもらんだむ?」
「そういうことになるよ。爆弾とかじゃなくてよかったね。」
爆弾とかだったら死んでいた気がする。やり直しな上
この世界はランダムダンジョンだ。とても面倒になっていたかもしれない。
「で、りーだー、じゃなくてお姉ちゃん、あの機械起動させる?」
反対側にもあった以下略みたいな機械だ。
何かをするために必要なのかもしれない。
とりあえず、機械を起動させてみるべきだろうか。
僕は桜に指示を出した。
「さくら、あのきかいをきどうさせて。」
しばらくして桜が機械をいじくった後機械はカチッと音を出すと
なんか付いた。
『問題、睡蓮を英語で書きなさい。』
出されたのは水位上昇でもトラップでもなく、クイズだった。
え?いや、え?わからない。
「お姉ちゃん、水が関係してるのは明らかだよね。」
確か睡蓮は水の上で葉っぱを広げる水の中に住まう植物だ
今の水浸しのステージにもよく見合っている。
ということは名前に水が付くことは確実だと言ってもいいかもしれない。
「うぉーたー…」
「あるじ、なんじゃ?みずがほしいのか?」
「ちがうよ。くいずだよ。」
僕は別に水が欲しいわけじゃない。そもそも水なら足の下見れば余るくらいにある。
飲めるかどうかはさておいて
たまちゃんが誤解したっぽいので正しておく。
「お姉ちゃん、それはわかってるよ。」
さくらも思ってたことだった。さんざん渡ってきた周囲見れば明確だよね。
たまちゃんは機械に近付くとその機械の画面をのぞき込んだ。
「これは…なんじゃ?」
「くいずだよ…」
クイズとしか言えない。そもそも僕にはこの機械がなんなのかわからない。雑学分野のクイズだと思う。
「なるほど、睡蓮はうぉーたーほわいとりりぃなのじゃ」
ホワイトリリィって白百合じゃないの?名前的に
ウォーターはわかるけども。
「お姉ちゃん、打ち込んだよ。」
桜は早い、た正解かはわからないけどわからないから賭けるつもりなのかもしれない。
僕も正解はわからないからたまちゃんの答えに賭ける。
しばらくして『正解です。』というアナウンスの様な音声と共に
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと地面を揺らすような音が聞こえた。
目の前にある階段のガラスがしたの方向にゆっくりと下がっていく。
階段が開かれていく。
「やったね!」
「あるじ、これでにそうにいけるのじゃ」
ここからは2層だ、さっきまでと違いちゃんとしたダンジョンだから油断は禁物だ。
奥に連れて暗くなっていく階段。これはあの装備の出番かもしれない。
僕はメニューを選んでアバターを開くと自分の装備を白花装備に変更した。
一瞬自分でも眩しい光が周囲を包み込む。
「きらきらするのじゃ。あるじがひかってるのじゃ。」
たまちゃんは吃驚しているようだった。そういえばあの時いなかったもんね。
チュートリアルダンジョンの時の報酬だよ。
「なるほどね。暗いもんね。」
桜は納得している。階段の方を見ると薄暗かった階段は闇が取り払われて真っ白な煉瓦が顕になっていた。
というかあれ煉瓦じゃなくて大理石じゃない?
僕達は階段を降る。黒く暗い闇がこっちに誘っているようにも見えた。
☆☆☆
階段をゆっくりと降りる。明るく照らされた天井からは水が滴り落ちていた。
おそらく上にあるいけとも言い難いあれが影響を与えているのだろう。
僕は傘を差す。傘とは雨から身を守るためにある道具だ。
「お姉ちゃん、ずるい。」
ずるいって言われても僕が持ってる装備だから仕方ないと思うけど。
アルティマさんが着せたけど、桜も似合うとか言ってどうきょうしてたじゃん。
「ずるくないよ」
敢えて僕はその答えを桜に返した。
道を少し歩くと僕達は曲がり角にぶち当たった。最初の曲がり角だ。
「だんじょんってまよいやすいの?」
「お姉ちゃん、こういう曲がり角とかは在り来りだよ。」
どうやら在り来りらしい。そう簡単に攻略されても運営さんが困るよね。
プレイヤーとしてはつまらない。
向こうに光るものが見えたけれどそこまで光が届いてないのか見えなかった。
気にしないことにしよう。
「お姉ちゃん、どっちに行く?」
とりあえずしたに行ってみるべきだと思うので僕はしたを指さした。
ペっちゃペっちゃと音がする。と同時にパリンパリンというガラスみたいのが割れる音がした。
前者はスライム。後者はなんだろうか。
「ガラスを割るような音が聞こえた。危ないのがいる。」
桜にも聞こえたようだった。どうやら危ない敵らしい。
僕も傘を構えながら慎重に歩く。すぐに防御できるように。結界も選べるようにした。
とはいえ、桜の結界の見様見真似でしかないけれど。防げるならそれでいい。
しばらくして薄青いスライムが出てきたかと思ったら一瞬青く光ったので僕は反射的に傘で防いだ
結界を張る時間が無かった。
傘に軽い衝撃が走る。折れないから大丈夫だけれど恥の方が凍ってしまった。
「あぶな。」
「今のは氷スライムだね。かなり危ないよ。倒せたらいいものが手に入るけど。」
さっき倒してたよね。いいものってどうせ氷でしょ?
「しってる。」
とはいえ、さっきの攻撃でこの威力だ。氷スライムって実は強いのかな?
後ろから追いついてきた、たまちゃんが僕の頭上に飛び飛んできたスライムを手に持った青銀色の切り払う。
なんか格好よく感じた。
砕けたスライムの核が降ってくる。
無理矢理、傘を構えて正面を進んでいくと僕の装備の明かりに照らされた部屋は
青と薄青と…透明?なスライムで溢れかえっていた。どうやら湧き場所だったみたいだ。




