第119話 ブリッジ
「最善策、というか罠は出来る限り喰らわない方がいいよ。」
罠って他にどんなのがあるんだろ。それは後で僕も嫌という程に経験しそうな気がするよ。
☆☆☆
「お姉ちゃん、どうする?」と桜が僕に問いかけてきた。
桜の方がこのゲームにおいて経験は上だからわかると思うんだけど。
僕に聞くのは間違えてると思う。
そして変な機械が目の前に見えている。変な機械。
なんか駅でよく見るお金を取り出す機械みたいな感じだ。
あれなんて言ったっけ。そもそもここは洞窟の中だし機械があるのはミスマッチ感を覚える。
このゲームに電気とかいう概念あるのかな?
あ、いや、集落では電気使ってたような気がしなくもない。
「さくら、でんきってある?」
「機械とかそこら辺のものはすべて魔力と回路で動いてるよ。」
魔力ってどのゲームでも大半万能な扱いを受けるよね。
電気にもなって魔法にもなって錬金にもなって。
このゲームも例外ではなかったということなのかな。
僕は機械を指さして言った。「あのきかいは?」と
桜は「仕掛けに関する機械だよ。」と答えてきた。
桜が機械を押して起動させる。
周囲から滝の流れるような音と少しずつ足元が水に浸ってきた。
あれ?これ水位上がってない?
水位上がっているということはここはフェイクなのかな?
そもそもガラス張りで階段には入れないだろうし。扉が開くかと思ったら罠だった?
そんなことってある?いや、ないと思うんだけど。
僕は大丈夫だけど、桜とたまちゃんは水中呼吸の装備を持っていない。
「水が上がってきておるのじゃ。」たまちゃんが呟く。
「ここは騙しだったかー、お姉ちゃん、泳ぐよ!泳げる?」
泳ぐって何を?
そしてどこに泳ぐっていうんだ。そもそも桜は水中呼吸ポーションも装備も多分持ってないだろうし道なんて水で埋まっていると思うんだけど。
周囲を見渡す。ボロボロになった残橋はところどころ崩れ落ちていて水上に浮いていたり
アスレチックになっていたりする。
下は水だ。足元が冷たい。僕の膝くらいまで水位が上がっている。
それほど水位は上がってきていないけど
僕にとっては結構深いし動きにくい。そもそも冷たい水が僕の体温を奪っていく。
上に張ってある水よりも温度が冷たく感じる。
この水、32度くらいある炎天下の現実だったらとてもっ気持ちがよかったのだろうけれども
ここはVRの中だ、むしろ寒い方だった。
☆☆☆
桜はそこらに浮いている橋だった木の板に飛び乗った。
木の板は桜が乗っても水の上に固定されているように沈まなかった。
「お姉ちゃんもはやく来なよ。」
桜が無茶言ってくる。そもそも僕は桜の様に足だけしか浸かってない状態とは違い
僕の場合、背が低いから膝まで浸かっている。
ジャンプしても水のせいで上手く飛べず途中で水に落ちるだけだ。
浮遊使ってもいいんじゃないだろうか。
僕はそう思い浮遊を発動させる。僕の体が薄く光った。
僕はそのままふよふよと浮くと桜の隣の浮いた残橋の木の板に着地した。
タンッという足音が周囲に響く、僕が木の板に着地した音だよ
「お姉ちゃん、別に落ちても泳げるでしょ?」
「みずがつめたいからいやだ」
「そっか」
さっきの足場の水が凄く冷たかった。真水を浴びせられているような温度だった。
もしかしたらこの水の中はダメージがあるのではないだろうか。
たまちゃんも何事もなく僕の隣に飛び乗ってくるとそのまま僕を抱き抱えた。
「あるじ、これでだいじょうぶなのじゃぞ。」
そういえば桜って泳いでないじゃん。泳げないから今更だと思うけれど。
残橋はところどころ切れ切れになっていたけどちゃんと道になっていた。
道の先に階段があるかは知らないけど
「たまちゃん、おろして」
「はいなのじゃ、あるじ」
たまちゃんは僕に言われた通り僕をその残橋の足場に下ろした。
いい子だけど撫でれない。
僕がたまちゃんの足の付け根あたりの身長だからだ。
「お姉ちゃん、私もそっち行くね!」
桜はところどころに浮いている残橋をタトンタトンと渡ってこっちに移ってきた。
「あ、お姉ちゃん、どうする?お姉ちゃんがリーダーだから道を決めるのはお姉ちゃんだよ?」
僕がリーダーになった覚えはないんだけど。
とりあえず桜に指示を出す。
「むこうがわにもどる。」
今の僕にはそれ一択しかなかった。いやそれ一択しか考えられなかった。
そこらの人でも今の状況だと戻るしかないと言うと思う。
だって階段だと思ったらフェイクだったし行き止まりだったんだもの。
ダンジョンはそんなに甘くないと実感させられた。
僕は小さな体で足場を踏み台にして向こうの足場に飛んだ
フュー、タトンと水の音しか流れていない周囲に足音がひびき僕は向こうの足場に着地した。
桜がひょいひょい渡ってこれる足場でも僕じゃ一苦労だ。
☆☆☆
とりあえず僕から見て前。入口から見て左、つまりは西側の方角になる。
次に行く道は。元々あった道はトラップによる岩爆弾で壊されていて戻れない。
「お姉ちゃん。どっちに行く?」
どっちに行くって言っても道には見えない道だ。
「あるじ、あぶないのじゃ」
たまちゃんに念力?で戻された。落ちそうだったから戻したのかな?
「ありがと、たまちゃん。」
「いまはみちがないからきおつけるのじゃ、」
確かに柵もなければスイッチ起動前ほど動きやすくはない。
それにトラップもありそうな気がする。なんか嫌な予感もするけども。
とりあえず、桜に聞いてみることにした。
「さくら、とらっぷってこうなってもあるもんなの?」
「お姉ちゃん、トラップは、どうなっても床にある限りはあるんだよ。」
どうやらあるみたいだ。それにポーションみたいな使い切りじゃないのもあるらしいから気をつけなければ。
桜は軽快に向こう側に渡っていき僕達に手を振っている。
大体戻るとしたらいまはぺんぎんのでてきたあたりだろうか。
僕も桜に追い付くために長い袖をはためかせながら足場を目指してジャンプした。
トンと足音がひびき僕は無事足場に着地した。
1回1回ジャンプしなきゃいけないのはキツい様な気がするけど。
結構楽しい。桜も楽しそうだったし。
僕は次の足場に向けて走り出して海面上を飛んだ。風を感じる。
あ、これ届かなさそう。僕は浮遊スキルを発動させる。
足場に届くように少し位置をずらして浮遊スキルを解除した。
「お姉ちゃんってどうしても海に落ちたくないんだね。」
「さむいじゃん。いまなつだけど」
夏だけど寒いのは嫌だし風邪ひくのも嫌だ。神獣に病気という概念があるのか知らないけども。
「あるじーまつのじゃー」
後ろからたまちゃんも飛んできた。たまちゃんも足場に軽く着地した。
たまちゃんは桜よりも背が高いし美人だ。なのに僕と同じくらいの軽さしか感じなかった
妖怪も僕同様、不思議な生物だと思う。自分の事言えないけども。
しばらく飛んで、やっと入口の前までこれた。
「あるじ。ここからどうするのじゃ?」
たまちゃんが僕に問いかけてくる。僕は逆の向きに指を指す。
「あっち?なのじゃ?」
「うん」
桜はもう飛び移ったようで僕達に手を振っている。そういえばこうなってしまったなら
敵とかどうなっているんだろう。全く湧いていないけども。




