第112話 ナイトメア
僕はそう思った。きっと桜もそう思っているはずだ。
それともプレイヤーによる慣れなのかな。
☆☆☆
しばらく風を受けていると桜は止まっていた。
あそこにいるのたまちゃんじゃない?
僕を地面に下ろす。あれ?何してるの?
僕は地面に座ったまま上を見上げる。
金色に光る長い髪の九尾の狐の肩の上に乗せられた。
ここで肩車?あるえ、なんで?
僕はたまちゃんの上で首を傾げる。そもそも僕なんかが乗っていい場所じゃない。
萌え袖でたまちゃんの耳を優しく掴む。
「なんじゃ?あるじよ。」
優しい声で問いかけられた。いつの間にか主呼びになってる。
「なんでかたぐるましてるの?」
幼女特有の高くて可愛らしいソプラノ声が響き渡る。
高い声というのは響きやすい。
これでも小さくしたつもりだったのにプレイヤーに気付かれたような気がする。
「あるじがかわいらしいからじゃ」
僕が可愛い?それは嫌という程に言われてるけど…
肩車する理由に放ってないと思う。
あっ、そこ写真撮るなっ。僕はプレイヤーに指を刺そうかと思ったが
流石に悪いし何より装備が萌え袖なので指を出せなかった。
「肩車されている狐幼女ちゃんはまだわかる。だが肩車している九つの尻尾を持った浴衣の妖艶美女は誰だ。」
「狐幼女ちゃん…知り合いの妖怪連れてきた?まさかな?」
たまちゃんってリアルモジュール使ったなー!?
だって初対面の時の姿そのままだもん。
「いかにも私は…」
僕は小さな萌え袖でたまちゃんの頭を叩いた。
「なにするのじゃ、あるじ。」
「しょうたいばらしちゃだめ!」
「むぅ、わかったのじゃ、あるじのいうことにしたがうのじゃ」
たまちゃんは仕方がないながらも注意を受け入れてくれた。
「いいこいいこ」
僕はたまちゃんの頭をなでなでする。袖越しだけども
「妖艶美女と少女と幼女とかどんないいパーティだよ」
「幼女欲しい。」
「俺らもあん中入りてえ。」
「あれ?狐幼女ちゃんと剣姫ちゃんは確かスピカに入ってたはず。」
「ああ、スピカであっているぞ。」
「なんだと?」
「なんだと?」
「なんだと?」
「というか剣姫ってスピカのサブマスだよな。はっ、このゲームのギルドはギルドマスターとサブマスターが招待権限を持っている。つまりだ。」
「ごくっ」
「ごくっ」
「ごくっ」
「剣姫に頼めば俺らも招待してもらえる!」
「剣姫さん、俺らをスピカに招待してください。」
「嫌です。ごめんなさい。スピカは人数募集はしていませんので。」
「何時もより冷たい、いい、その目いい!」
わけがわからないよ。
☆☆☆
「狐幼女ちゃんは来睦って名前なのか。いい名前だな。」
「あれ?来睦?来睦って変わった名前だな、オンライン偽名ばっかだし有り得なくはないか。でも妹は見たことあるぞ。気のせいかもしれないが。」
なんか物凄く聞き覚えのある声で妹とか言われた。
桜をちらっと見るが何も見なかったことにしたらしい。
「何言ってんだよ時雨、俺らの親友の妹なはずないじゃないか。」
「似てるだけか。そもそも遠慮してるなら妹もいない、似た好みだったはずだ。」
「そもそもこんなに高難易度なゲームは好まない。」
「あぁ、言われた。超鬼畜系って紹介したら俺にぴったりなゲームだねって言われた。」
「確かに時雨のプレイするゲーム大体鬼畜難易度しかなくね?」
「それ当たってるわ。俺は狂人だったんだな。」
その一言はこんなにざわめいている周囲でも嫌という程にはっきりと聞こえた。
ケモ耳を引きちぎりたくなるくらいにはっきりと聞こえた。
物凄く聞き覚えのある声だった。頭の中では否定していても
嫌という程にその声が離れない。恐怖を感じる。まさか桜で予想立てられるとは
「自覚なかったんだな。」
僕は必死に泣くのを堪える。怖いけれどバレちゃいけない。
嫌われたくない。この場を今すぐに抜け出したかった。
「話を変えるが時雨、悠も誘ったのか。高難易度過ぎないか?」
「誘った。確かに高難易度だな」
「やってみるとは言ったがこのゲームは合うのか不安だな。」
「たまもさん、お姉ちゃんを尻尾の中に下ろして」
「わかったのじゃ」
たまちゃんは僕を尻尾の中に下ろすとそのまま包み込んだ。
周囲の声がそれなりに小さくなった気がする。
それでも僕の体は怯えていたし震えていた。怖かった。現実を直視出来なかった。
「狐幼女ちゃん怖がってなかったか?」
「この村に怖がる要素も怯える要素もないはずだが?」
「嫌なプレイヤーでも見たんじゃね?」
「狐幼女ちゃんに嫌なことするとかどんな犯罪者だよ。」
「狐幼女ちゃんもふもふの中に入った?」
「妖艶美女と幼女…いい絵がかけそう。」
「どうしたんだろう。」
「とりあえず、妖艶金色九尾さんは狐幼女ちゃんの保護者陣営なんだな。」
「親子に見えなくもないよな。色さえ合わせれば親子だよ。」
「確かに狐幼女ちゃんは子供で、妖艶九尾さんは保護者さん、親子だ!見える!」
「妖艶金色九尾さんはたまもっていう名前なのか。あれ?たまも…玉藻?」
「いかにも私は九尾n」
「お姉ちゃんが怖がってるから私たちはここで撤退するよ!」
「最後まで言わせてくれたっていいのじゃ。」
桜ナイス。
☆☆☆
しばらくして外の風景は見えなかったけどもたくさん泣いた。声を殺して泣いた。
お願いだから別の人であってくれとひたすら願った。
でも会話の内容はSNSでした記憶のある内容だった。思い出したくないのに思い出してしまう。
記憶を忘れたいのに忘れられない。
僕はもふもふの毛並みの中で毛並みに頭を叩いた。記憶でもなくなるかなって。
「ちょっと、あばれないでほしいのじゃ」
「たまもさん、出してあげて。」
その声と共に光が見えた。星の瞬く綺麗な夜空が見えた。綺麗だなあ。
「お姉ちゃん、どうして怖がったの?」
「ごめんなさい、たまちゃん」
「別にいいのじゃ、子供は感情を思いに出すことが大事なのじゃ」
たまちゃんは許してくれるようだった。
「お姉ちゃん、嫌なものが聞こえたの?」
嫌なものでは無いはずなのにこの姿で聞くと嫌なものだね。
「…。」
僕の目には涙が浮かんでいる。未だにそでは震えたままで旗も揺れている。
少し寒い風が薄水色の髪を揺らす。
「…。」
桜は何も言わず座っている僕の前に屈むと僕の頭を撫で始めた。
「お姉ちゃんは、可愛いんだよ。」
わかってるよそんなこと。何回言われたと思ってるの…
「お姉ちゃん、私はずっと仲間だよ…」
「わかってるよ」
「オンライン上では人気者になってるお姉ちゃんなら…」
確かに僕は人気ものなのかもしれない。
いるだけで騒がれる。確かに人気者の得権かもしれない。
「お姉ちゃんの友達もきっと受け入れてくれるよ。だから大丈夫。」
なでなでなでなで…桜は僕をあやすのが上手だ。僕は桜に撫でられる。
「受け入れて貰えなかったら私が守るから。」
「私もいるのじゃ。」
ああ、そうか、ぼくには受け入れてくれる人がいるんだね…
ぼくもいつまでも怯えていないで勝ちに行かなきゃ行けない。会いにいかなきゃいけない。
きっとこのまま1人でいるのはダメなんだと思うから。あの2人にも悪いから。
なんで僕は怯えていたんだ。
信じられない存在として否定されたらどうしようって
信じられなくなって、怯えていた。僕の一方的な悪い自己催眠だった。
あの2人に嘘を付いたことを謝りに行かなければいけない。




