第110話 幻術解除
「楓兄、黒騎士とは誰だ?」
あれ?櫟は黒騎士では無いのかな?だとすると誰が黒騎士なんだろう。
☆☆☆
目の前には城がある。玉藻様の居城…?居塔?と違い。
格式は洋風の様なイメージを受ける。
真っ黒で漆に塗られた大きな門がそびえ立っている。
空に瞬く夜の色と全く同じく見える。
玉藻様はその門を叩く。ビクともしない。叩く。ビクともしない。
そういえばインターホンみたいなものがあった気がする。
僕は門に近付きインターホンみたいなものを押そうとするが届かない。
ジャンプしてみる。水色の髪がふぁさふぁさと靡く。
インターホンには届かない。
しばらくジャンプしていると体を抱き上げられた。
後ろを見てみる。玉藻様だった。
「にゃっ…ありがと…たまもさま」
動揺していたのか変な言葉が出てきた気がする。
「可愛い、ほら。私が支えてあげる。あと私のことはたまちゃんでいいぞ。」
僕は微笑まれた玉藻様に支えられながらインターホンを押すことが出来た。
たまちゃんなんて気軽に呼べる訳が無いよ。
ピンポーンとクイズ番組で正解の時に出す効果音みたいな音が流れる。
『なんだ?玉藻の奴が来おったか?、今その門を開ける、しばらく待っておるのだ。』
大妖怪の貫禄のある王の威厳っぽい声が帰ってきた。
玉藻の奴って…きっと長き付き合いで気軽に呼べる存在に変化したのだろう。
「イヌガミ、とても可愛らしいお客が来ている。以後、私語は慎め。」
『何を言い出す。玉藻。我に私語を慎めとな?』
そういえば神獣って玉藻様が敬語になるくらい偉い存在?なんだっけ。
ゴゴゴゴゴという大きな音がしてゆっくりと扉が開いた。
スライド式じゃなくて奥に開く式なんだ。
真ん中には噴水があって周囲には草木の壁が並んでいる。
本当に海外にでもあるような洋風の城にしか見えない。
入口らしき場所には2人の狸の妖怪がたっていた。
門番らしきポジションの妖怪さん達かな?
「にゃっ」
僕は吃驚して猫のような声を上げる。
『おい、今可愛らしい声が聞こえたような気がしたぞ。』
「気ではない。可愛らしい子がお客様だ。」
「こんにちは、いぬがみさま」
「かえでちゃん、隠神刑部はこいぬちゃんでいいよ」
玉藻様が勝手に提案してくる。
初対面の相手、しかも玉藻様に肩を並べる軍を従える大妖怪にそんな気軽に声掛けていいのか。
☆☆☆
『いかにも、我の名前は隠神刑部だ。可愛らしき挑戦者よ。如何の用があってここに来た?』
「こらー、いぬちゃん、私語は慎めって言ったでしょー?」
なんか玉藻様がお姉さんみたいな事言ってる。
僕は結界を解除してほしいことを伝える。
「いぬがみさま、けっかいをかいじょしてください。」
『うむ?良いぞ。』
パチンとインターホン越しに指がなる音がした。
ペンキが剥がれるように空の漆黒は快晴の眩い太陽の差し込む炎天下に変化した。
時計を見てみる。昨日の夕方の18時だった。あれ?時間まで巻き戻した?
『結界は解除した。それで次は我の望みを聞いてほしい。』
次はイヌガミ様の望みを聞く番だ。僕は頷く。
「うん。」
「かえでちゃん。かえりましょ?」
なんか玉藻様のイヌガミ様に関しての扱いが若干酷い気がするが
せっかく幻術の城に入ったんだし誘われているので僕は拒否する。
「かえるのはやだ。」
『そうか、汝は度胸があるのう。ちいと話し合いたいだけじゃ。我の元に来るがいい。』
それを機に音声は途絶えた。玉藻様よりもイヌガミ様の方が現代に染まっている気がする。
「たまもさま、おろしてください」
「たまちゃんって呼ぶまでかえでちゃんを降ろさない。」
「たまちゃん、おろしてください。」
「んもう、しょうがないなあ」
そういうと玉藻様は地面に下ろしてくれた。僕の頭を撫でてくる。
僕は城の入口に向かって歩いた。
しばらくして門番の所まで来た、門からここまで100mちょっとだった。
「我ら」「我ら」
「この城を」「守るもの」
狸妖怪の門番さんに手に持っている槍で通せんぼされた。
狸妖怪の門番さんは変わった喋り方をしていた。
☆☆☆
「隠神刑部に許可されたので通っていい?」
玉藻様が狸妖怪の門番に問いかける。
「これは。」「これは。」
「狐の頭領」「玉藻の前」
「ならば、」「通ってよし。」
許可と同時に扉を開けられ槍も取り払われた。
ここまで来た以上ダンジョンに潜るような気持ちで挑まなければいけない気がする。
実際宙に浮いた城の中に入るってどんなファンタジーだよ。
城の中に入った。城の内部はホールと真ん中のエレベーターだった。
事前に話は通してあるのか、念話で通したのか。エレベーターに案内された。
案内もたぬきの尻尾が生えていた。
7人でエレベーターの内部である。1階から5階まであって
5階には隠神刑部様の部屋とはっきりと書かれていた。
僕は少し見えなかったので上を見あげて見ている。
エレベーターは真っ白な部屋になっていた。不思議な空間だった。
エレベーター内部の案内者の狸の妖怪さんが5階を押した。
『隠神刑部様のお部屋へとまいります。』
結構変わっているんだなー、エレベーターって言うのは階だけじゃなかったっけ?
『隠神刑部様の部屋に着きました。』
どうやら5階に着いたようだ、ここまでの感覚はほとんどエレベーターと変わりがなかった。
扉が開く。大きな王様の座るような椅子とテーブル。そして色々なものが置いてある部屋だった。
周りは透明なガラスでできているのかエレベーターだけ浮いているような錯覚を覚えた。
『ようこそ、可愛らしい客。わざわざ来てくれたのをありがたいと思う。』
「いぬちゃん!」
玉藻様の呼びかけに呼応するように隠神様の座っている椅子がくるんと回った。
そこに居たのは狸の耳と尻尾の生えた黒い軍服を着た少女だった。
「いかにも、我が隠神刑部だ。…って神獣様…!?」
なんか可愛い。そして、ここでも様付けをされる僕であった。
☆☆☆
「神獣様、なんでこんなところにいらしておるのですか?」
「けいごはやめて。」
「えっと…では…名前を…」
「かえで」
「かえでちゃんというのじゃ?、可愛らしい名前じゃ。」
頭をなでなでされた。可愛らしいは自覚している。何度も言われているから。
「我をそなたの従者にしてくれんか?」
「うん。」
「これからよろしくなのじゃ、かえでちゃん。」
隠神刑部 が 僕 の 仲間 に 加わった 。
「で、おはなしとは?」
「すべておわったのじゃ、ゆっくりしていくといい。」
どうやら要件全て終わったらしい。従者になるだけなら呼ばなくてもよかったんじゃ…
「それにしても迷惑をかけたの。人の子2人よ。」
「お兄ちゃんが解決してくれたんで反省してくれるならいいです。」
櫟はなんだかやる気なさそうだ。目に光が宿ってない。眠いのだろうか。
「お姉ちゃんは私のなんだからね!」
桜のはそれ、大妖怪2人相手に言う言葉じゃないと思う。それに僕は僕のものであって誰のものでもない。
この体が誰のものかはわからないけれども、きっとこの大妖怪2人ならば知っているのだろうか。
「くぬぎがねたがってるからかえらせてあげて」
「そうか、残念じゃ。我も汝らの家に遊びに行って良いか?」
「きてもいいよ。」
指を鳴らす音が聞こえた。それを最後に僕の意識は途絶えた。
再び目を開けると桜と共に桜の部屋にいた。卯月はいない。その代わりに金色の美女が桜のVR端子を弄りまくってた。




