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世界  作者:
-2nd- / カエデの邂逅
105/175

第104話 のじゃ

「凄い、私が2人居る!」

桜の声が聞こえた。驚愕しているようだった。




☆☆☆




「よくできておるのじゃ、初めてにしてこれほど綺麗に化けれるならば大丈夫なのじゃ」

確かに初めて妖力使って自分が人間じゃないんだと思ったけども。

なんかちゃんと化けれたのか未だに姿見てないからわからないけど

「お姉ちゃん、私そっくりだよ!」

僕は頭に手を持っていき髪に触れる。

本来なら水色の髪が揺れるはずだ。もふもふの耳が接触するはずだ。

水色の髪はないしもふもふではなくさらさらの感触がした。

桜が手鏡を持ってきた。僕に渡してきた。

鏡を見てみると5歳くらいの桜が映っていた。腰には刀をさしている。僕?

見様によっては男の子にも見えなくもない。

「それにしてももどるのはどうするの?」

僕は戻れるか不安になったので卯月に戻り方を聞いてみた。

「簡単にゃのにゃ、戻りたいと念じればいいのにゃ」

水無月が答えてくれた。目を瞑って戻りたいと念じてみる。

何かが破裂する感覚が僕の体を襲った。膜が弾けるようだった。

目を開けてみる。

頭に手を持っていき耳と髪を触ってみる。

変化する前のもふもふした毛並みの耳と背中に揺れる水色の髪が僕の目に写った。

「やったー!もとにもどったー!」

「おめでと、お姉ちゃん!」

「そっちの方も可愛いのじゃ。あれ?水無月はどこいったのじゃ?」

水無月がいないらしい。部屋を見渡してみる。

何処にも青い髪の狐っ娘は見当たらなかった。

「お姉ちゃん、これで外出られるね!」

「異変解決しに行くのじゃ!」

卯月が外を指さした、未だに真っ暗闇だった。




☆☆☆




僕は再び桜の子供時代の姿に変身した。

「お姉ちゃんって呼ぶのはあれだよね。新しい名前をつけなきゃ。」

お姉ちゃんって呼ぶとほかの人が困惑を受ける。

「椛ちゃんでどうかな?」

卯月だ、一瞬口調変わってたせいでわからなかったけれども

「んじゃ卯月は椛でいい?」

「いいのじゃ。」

「お姉ちゃんは…うーん…椿?でいい?」

「うん。」

「それじゃいくよー」そんな声とともに僕と卯月は桜に抱き上げられた。

桜ってこんなに力あったっけ?まあいいや、気にしないことにしよう。

そのまま扉を開けてトントンと階段を降りていった。


1階の部屋に入る途中で櫟にあった。

「桜、そこの2人は誰だ?」

櫟の問いかけは今の状況にとても理にかなった問いかけだった。

「この子?私の分身☆」

桜は誤魔化しに出たようだった。

「ちゃんと答えろ。」

櫟が桜の頭を新聞紙で軽く叩いた。桜は怒っていた。

「お兄ちゃん酷い。」

「にいに、ひどい。」

僕も桜に同調して櫟を涙目で見つめる。

「まって、なんでそっちの子もなくんだ?、それに、にいにって昔の呼び方じゃないか。」

櫟は狼狽えていた。櫟も昔の桜を覚えていたようだった。

「でも、今のでわかったぞ。この2人の正体が。」

「お兄ちゃん!?」

「にいに?」

僕は涙目で首を傾げながら櫟を見つめる。


櫟は急に僕の方を指さした。突然指さされた僕はビクッっとした。

「こっちが楓兄か。ってことはもう1人は卯月だな。どちらも獣耳生えてるし俺の推理は当たってると思う。」

「バレたのじゃ。」

「バレちゃったね、お姉ちゃん」

「そうだねー」

僕達3人は顔を見合わせる。バレちゃった。

「で?1階に何の用だ?」

「ちょっとお兄ちゃんの自転車貸してほしいなあって。」

桜が外出するために必要なものをいう。移動手段として自転車は必要不可欠だ。

「こんな状況で外出は無理だと俺は思うんだ。」

確かに周りは真っ暗で危なっかしい。

「まあ、妖怪退治すると言うなら俺も着いていくがどうする?」

どうやら櫟も着いていくらしい。

「お姉ちゃん、どうする?」

「かえでちゃん、どうするのじゃ?」

「くぬぎのじてんしゃかりようとおもってたしきてもいいよ」

僕は櫟が着いてくることを許した。櫟がいるならば頭もいいだろうししっかりしている。

桜を守るのは櫟だと僕は思うんだ。

僕はちっちゃくて守れないかもしれないから。




☆☆☆




車庫の中に置いてある自転車に手をかけて櫟は言った。

「で?どうやって乗るんだ?」

「妾は透明になって浮いていくから問題ないのじゃ。」

幼き桜の姿をした卯月がそう言う。妖怪というのは常識外れなんだなと思う。

浮いたり透明になったり化けたり。

「私はお兄ちゃんの後ろに乗っていくね。」

2人乗りである。桜の自転車はまだ買っていない。

「ぼくはかたぐるまで」

「危ないんじゃないか?」

確かに肩車で2人乗りは危ないかもしれない。でもそれしか方法がないと思う。

「お兄ちゃんに捕まってれば多分大丈夫だよ。」

「まあ、楓兄を置いていくのは致し方ないしな。」

外は変わらず暗いままだ。僕1人だと泣いてしまうのが目に見えている。

櫟は自転車に乗ると僕達を誘った。

桜に肩車してもらって僕も自転車に乗った。

「夜の街は危ないからしっかりと捕まっておけよ?」

櫟も危ないと思っているらしい。夜じゃないと思うんだけれども。

「夜じゃないけどね?」

「夜じゃないのじゃ」

「それはどういう意味だ?こんな真っ暗なら夜だろ。空には星も輝いているし誰もいないし。時間止まってるんじゃねえの?」

確かに夜と見間違うのも無理はない。僕も最初は時間止まってると錯覚した。

「くぬぎ、これぜんぶげんかく。」

「人の子よ、幻覚といえばわかりやすいのじゃ?」

隣から声がした。声のした方向を見ると半透明の幼き桜が浮かんでいた。卯月だった。

幻覚…つまり目の催眠である。

「げ、幻覚?、うちの楓兄はまた変なことに巻き込まれてるのか?」

変なことって失敬な。でも自覚ある。手遅れだと思うけど。

「これは幻術と呼ばれるものじゃ、先程幼い桜に化けたのもこの術の応用なのじゃ。」

「どういう術だ?」

「そなたらの目では幻覚と見えるのじゃろう?」

幻惑、本来ならあるはずのないものがその場にあるように見える。

「そうだな。本来いるはずのない者がいるように見える。本来あるはずのないことが起こっている。」

櫟にもそう見えているらしい、大丈夫だ、僕の目は濁っていなかった。

「その"幻"を"現実"にするのが幻術なのじゃ」

「は?」

「わからんのじゃ?、その目に見えている幻と現実を入れ替える力なのじゃ。」

確かに僕の体って変化した。卯月の体に接触しても変化している。

普通なら違う感触が通るはずだ。

「なんだよ、その卑怯な能力。こんなのと戦えと?」

「そうなのじゃ、まあ、楓ちゃんがきたことにより妾達の方が多いのじゃ。大丈夫なのじゃ、妖怪の世界でも殺生は禁じられておるのじゃ」

多いとかそういう問題ではない。妖怪の能力が強すぎる。

「殺すのは禁止か、なら大丈夫なのかな。」

櫟も認識バグってるんじゃないの!?納得するとこそこなの!?

「この空はどうなってるんだ?」

「この街全体に妖力をばらまいて幻術という名の結界をかけて時間を止めてるのじゃ。頭領が。」

街全体に幻術かけるなんてさぞとんでもなく強力な妖怪なのだろう。

というかその説明でこれなら時止めてるに変わりない。

史実や歴史に出てくるレベルで。事実その認識は間違っていなかった。

「頭領?どういう奴だ?」

「奴とは失礼な!頭領は、かの有名な玉藻の前なのじゃぞ!」

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