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世界  作者:
-1st- / 夏の始まり
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夏休みの始まり

性癖的

もはや唐突にチャイム音が響く。行程の終わりか。

あまりの暑さに時間も忘れていたようだった。

30度あるんじゃないか。と晴れ空の中で斜め上に燦然と輝く太陽を恨めしく思う。

正確には現在の僕は凄まじい眠気に襲われていて授業聞ける状態じゃなかった…

時計を見ると12時40分、今日はこれで後は帰るだけなのでまだマシな気はする…

これであと1回だっけ。2回だっけ。それくらい来なきゃ行けないのは憂欝でしかない

この時間は実質放課後みたいなもので起き上がるとちらほらと教室を後にする生徒も目に映った。

「楓、大丈夫か?」

湊が駆け寄ってきて僕に問いかける。

愁と悠は何時も学食の戦争に言っていて今の時間じゃ教室にいない。

身体に陽が照って暑い…具合悪い…

熱中症になりそうで大丈夫じゃない…という言葉を飲み込んで答える…

「大丈夫だよ…」

「どう見ても大丈夫そうには見えないな。無理そうだったら保健室連れてくか…」

保健室言っても熱中症で寝ることは怒られそうな気もするけども…

机が心地よく感じる…

僕はそのまま机に頭を置いて寝そべろうとした所で呼ばれた。

「ふーくんいますか?」

教室の入口に高校生で同学年とはいえ一際小さな子が立っていた。

僕とは昔から仲のいい子だった。

ふーくんとは楓の呼び方を間違えた時に小さい頃に付けられたあだ名だった。

昔と全く変わってないなとその子を見て僕は面倒そうに手を上げる。

手をあげるのも一苦労で凄まじく眠い僕にはこれだけでも充分疲弊に感じることだった。

周囲の羨ましそうな目が僕に向く。まあわからなくはない。

別のクラスのマスコットに話しかけられるのは誰だって羨ましいとは思うのかもしれない。

けども僕は好きな相手はいるし、抜け駆けする気も無い…

「楓辛そうだな」

「日当たりのいい場所って結構キツいよな。」

まだ残って部活の準備している慈悲深いクラスメイトの心配する声が聞こえた。

と言うよりも僕がそういう人物だとわかってくれている方のクラスメイトな気がした。

僕の席は窓際で凄まじく日当たりがいい。

冬なら恩恵を受け入れられるんだけども座って見ればわかる…結構辛い…

「あの…ふーくん、大丈夫…?」

「大丈夫…」

やっぱり机に寝そべる僕は辛そうに見えるらしい…

水葉になんでもないように答えると僕は用事を問いかけた。

「何の用…?」

「楓に他クラスの女子が関わるのって…何の用だ…?」

まだ僕を観察していたのだろう湊の声が聞こえた。

失敬な。とは湊に言いたかったけど実際その通りで他クラスの女子は珍しい。

「あの…屋上来てもらっていい…?」

俯いたまま、それも照れたように僕に言ってそのまま教室を後にして行った…

「えぇ?」

湊が驚いたような声を出す。僕だって吃驚だよ。

屋上ってことはつまりそういうことだろ?

「これ行った方がいいと思う…?」

僕は湊に問いかける。

「いや…行った方がいいんじゃないか?つまりはそういうことなんだろ?」

"そういうこと"は僕よりも何度も遭遇してそうな気がする湊の方が得意分野な気がするよ。


☆☆☆


なんとかだるい足をふらつかせながら壁に手を添えて屋上にたどり着く

「楓が動くのか…大丈夫か…」

なんて教室を出る前に言われて軽く怒りそうになったが実際この倦怠感で階段2回も登るのはキツい。

歩いている途中もみんなに心配されたし僕はそんなに悪い状態に見えてるんだね…

とはいえ…本当に容赦ない…

屋上の前の階段は日陰になっていて涼しいので此処にずっといたいが

屋上で待っているかもしれない水葉も可哀想だとそう思いながら屋上の扉を開けようと手をかける。夏特有の蒸し暑い空気と日光のせいで帰りたくなった。

上を見れば清々しいくらいに綺麗な青空が広がっていて夏も憎めない。

「あ、ふーくん、ここにいたんだね。」

ちょうどいまきたようで後ろから声が聞こえた。

僕は熱気を放っている屋上の扉を閉めて水葉に問いかけた。

僕が座ることで立っている水葉と大体同じ目線になるくらいに身長差があった。

「何?」

「好きな人が…できたんだけど…どう告白すればいいかわからなくて…」

俯いたまま照れて可愛らしく水葉は僕に返答した

なんかこれ凄まじく罪悪感がある気がする…

好きな人ご愁傷様です…ロリコン呼ばわりされても僕はなんも言えないよ。

ていうかなんで恋愛相談に僕をチョイスした…?

「なんで僕…?」

本当になんで僕に相談してくるのか聞きたい。

僕よりも適任なんて濂理でも藍でも恋依さんでもいっぱいいると思う。

わざわざ他クラスにいる、しかも異性の僕に相談持ちかけてくるんだ?

「ふーくん…こういうのいっぱい経験してそうだから…」

言葉を失った…

告白される側は昔から愁や湊と同類に思われたりするくらいには経験してきたが

告白する側は僕は残念ながら1回も。

だからこそ彼女の気持ちがわからなかったのだろう…

「とりあえず…水葉に恋愛は早いよ…」

「なんで?」

水葉は疑問に思うように首を傾げる。

「いや…僕だってちっちゃい子から告白受け取るとなんか罪悪感湧くし…」

体験談も混じえている。あの子の振られた時の泣き様は正直もう見たくなかった。

水葉にあんな泣かれ方されたらあの時以上に辛いと思えるし…

しばらく気分が沈んだままで湊に心配されたのは鮮明に覚えている。

「そっか…ふーくんは女の子の気持ちをわかってないんだね…」

水葉はそれ以降何も言わず、その場から立ち去ってしまった。

?僕は女の子じゃないから当然気持ちなんてわからないけども…

そもそも女の子の気持ちってなんだ…?

そこら辺考え始めると哲学だよね。水葉は哲学が好きなのか?

濂理の影響の可能性もあるが水葉が哲学に行き着く可能性は凄まじく低い…とするとなんだ…?

誰もいなくなった屋上行きの階段からゆっくりと立ち上がり窓の外に広がる空を見る。

蝉の鳴き声が外から聞こえる。煩いけれど、そういえば夏はそんな季節だった。

昔は愁と湊と濂理で甲虫とか探したっけか…

今は遠い記憶で少しだけ懐かしい感傷を思い浮かべる。

「教室に…戻ろ…」

なんか今日は何もしてないのに疲れた日だった。


☆☆☆


「おう、楓、おかえり。」

僕の机の周りに人だかりが増えていなかった。

愁や悠はまだ来てないようで。おそらく学食中なのだろう。と推測しておく。

「で?どうだった?」

「とりあえず、席座らせて…」

本当にキツい…家で寝たいくらいに睡魔がキツい。

湊はその場を直ぐにどいてくれた。

「告白じゃなかったよ…」

「そうか、振ってきたのか…」

湊は納得したように頷く、けど僕は振ってないし告白もされていない。

「恋愛相談だったよ。」

確かにあれは恋愛相談だったはずだ。相手が誰かは知らないけども。

「恋愛相談って…なんで楓に?」

それ僕も思った。湊も僕と同じ考えで僕が適任と思っていないらしい。

水葉が言った理由も理由になってなかったし

「本当になんで僕に…?」

人選ミスだと思った。

「俺に聞かれても困るんだが…」

この事情は本人のみぞ知るって言うことなのかもしれない。

僕達で考えても仕方が無い。

裏で湊が薄らと笑っているような気がした。もう何も言うまい。

「それにしても俺は今から帰るけど楓も帰りか?」

僕も帰るか…愁達は来ないし…多分部活もありそうな気はするし…

夏休みでも忙しいのだろう。

僕はごめんだなあ、夏休みはだらだらしていたい。

「先、帰るよ。またね。」

「おう、またな。」

湊にそう呟いて手を振ると僕は教室を後にした。


外に出たら意外と涼しく気分の悪さも消えたようだった。

"女の子の気持ちをわかってないんだね"という言葉は電車の中でも離れなかったけど

しばらく考えて。考えることを放棄した。

どう考えても哲学的な文面に入り果てがない様な気がするから

いちいちそんなことは気になっていても仕方が無いから。

なんか思い返してみると罪悪感が湧いてきたから水葉に謝るべきだとは思った。

心地いい夏休みを送るために僕は窓の隙間から雲ひとつない晴れた空を見た。

楓→ふう→ふーくん

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