転生
突然クラクションの音がフラッシュバックして目を覚ます。
どこだここは?
気がつくとあたり一面真っ白な壁に囲まれていた。
すると突然、3mくらいのやたら図体のデカい男が出現した。正直現れ方がグチョグチョしててキモイ。
「お疲れ様。僕は、君達が天国とかあの世とか呼んでる世界の神だよ。君はさっき死んじゃったんだ。」
神?が優しい視線をこちらに向け喋った
「あぁ、なるほど。俺は死んだのか。」
「そうだよ。とても短い人生だったね。」
確かに言われてみれば、短い人生だった。
学校では誰にも話しかけられず、何をしたわけでもなく怖がられ、避けられ、決していい人生だったとは言えないだろう。だが家族は、両親は、自分に愛情を注いでくれた。沢山の苦労を掛けた。両親共働きで汗水垂らして働いて学校に通わせてくれた。沢山大切なことを教えてもらった。でも、自分はその恩を返すことが出来ずにトラックに轢かれて死んでしまった。もうあの人達に感謝の言葉は伝えられない。しかも学生ライフ全くエンジョイしてないし、こんな後悔を残したまま記憶が無くなるのは嫌だった。
なので神(笑)に提案をすることにした。
「なぁ、出来ればでいいんだけどもう1度記憶を残したまま人生をやり直させてくれないか?」
無茶な願いであることは自分でも分かっていた。だが、どうしてもこのまま終わりたくはなかった。
「いいよ。でも君の元いた世界には戻れないよ?」
「分かった。それで構わない。」
「でも何で?」
「親不孝の償いと、失われた青春を取り戻すためかな」
「ハハハハハ。面白いね!分かった。じゃあランダムで飛ばしちゃうから、そこの世界の知識は自分で得てね。君の願いが叶う事を祈っているよー。」
「おう。」
すると自分の周りの半径2mほどの魔法陣が光り、視界が白く染まった。
こうして俺、橘 浩一は異世界転生をした。
何も見えないし、音もあまり拾えない。失敗したかと思ったけど、今は赤ん坊だから仕方が無いのか。
2ヶ月ほど何も出来ない暇な生活が続き、ようやく目と耳が機能するようになってきた。
「ほぅら、カーティスくぅぅん。パパでちゅよぉお~」
このいかにも阿呆そうな奴が父親のアルベールである。こう見えて王国騎士であると言うのが驚きである。少々子煩悩が過ぎると思うのだが、、、しかも顔が美形だという理由もあってなんかちょっとキモチガワルイ
「こらー!まだ仕事行ってなかったの!?いつまでもカーティス見てないで行きなさい!!」
「はい!すいません!今すぐ行きます!なので殴らないでくださいぃ!」
この、夫を尻に敷いてる感があるのが母親のエイダである。
とりあえず、いい親の元に生まれてきてよかった。もし育児放棄家庭だったら転生の目標がひとつ消えてしまうからな。まあしばらくは動けないのでじっとしていよう。
転生してから1年が経ち、言葉も何故か余裕で理解できた。
もしかしたらこの世界の住民はみんなそうなのかと思ったので喋ってみた。
「あの、厠に行きたいのですが行ってもよろしいですか?」
「「え!?カ、カーティスが喃語じゃなくて普通に喋った!天才なの(か)!?」」
だが、両親にはビビられてしまったようだ。ここでこっちが焦ってはダメだと思ったので冷静なふりをしてみる。
「父様母様、そりゃあ人間いつかは喋るでしょう。」
「いや、でもぉ……今じゃなくない?」
「そうですねアナタ…でも、色んなことが出来るのは後々便利ですよ!」
「ん?あ、あぁそうだな」
意外とあっさり受け入れたな!
まあとりあえず情報を入手したいな
「父様母様、本を読みたいのですが、どこにあるでしょうか。」
「それなら父ちゃんの書斎を使ってもいいぞ。ほら、鍵だ」
「ありがとうございます」
書斎の中に入ると中には膨大な本が詰まっていた。
その中で魔法の本がないか探した。実は若干、魔法使いとかに憧れていたりする。
そして計10冊ほどの魔法の書が出てきた。本によればこの世界で魔法が使える状態で生まれてくる人は100人に1くらいの割合だそう。しかもその中で10人に1人は生まれたすぐに魔力が暴発して亡くなってしまうらしい。実質1000人に1人?という事だ。
一応ダメもとで魔法適性を図る水晶を父に強請って買ってもらい検査してみることにした。するとどうだろう。魔法適性があるではないか!!
この事を2人に話すと滅茶苦茶喜んでくれた。
それは置いておいて、それよりも重要なのが、実はこの世界、ステータス制だったのである。確かに見ようと意識すればステータスが見える。では何故魔法適性をわざわざ水晶で検査させたのか………謎です……。
とりあえず自分のステータスを見てみる。
カーティス・アルトフォート
職業
年齢 2歳
体力 600 +1200
筋力 500 +1000
防御 480 +960
俊敏 950 +1900
魔耐 400 +800
恩恵 魔族
技能 翻訳、急成長、魔王の恩恵、栄光のボッチ、目付き最悪
魔法
まず、ステータスの基準がわからないのでどうしようもない。おい…ボッチが悪いかよ!!!ボッチでも必死に生きてんだぞ!!おい!目つき最悪ってなんだよ!イジメか!イジメなのか!?
ふぅ……まあいいや。頑張って友達100人作ろう!
ツッコミがひと段落ついたところで、とりあえず両親のステータスを見せてもらうことにした。
アルベール・アルトフォート
職業 王国騎士長
年齢 20歳
体力 6500
筋力 7950 +1500
防御 5000
俊敏 4900
魔耐 2000
技能 剣術 :北方剣術【最上級】南方剣術【最上級】東方剣術【最上級】西方剣術【最上級】、剣を極め者、脳筋、気配察知、危険回避、緊急回避
ただのバケモノだった…………。何故か脳筋ってディスられてる(笑)
ん?あれ?俺にある恩恵っていうのが父にはない。何故か調べてみると少々一般のファンタジー世界とは違うらしい。
まず、この世界には色々な種族がいる。まあそれは分かる。だがここからが謎だ。
月に一度、《赤ん坊にマーキングする会議》通称、種族会議が行われ、生まれてきた子供の中で有望そうな人材を見つけ恩恵を与え、その代わりに自分の娘や息子を嫁がせて自分の種族に迎え入れて繁栄を目指すというものなのだそう。まあ言ってみればプロ野球のドラフト会議みたいなものだな。
そこで俺は魔王様にドラフト指名された訳だ。まあ、納得したと言えば納得した。
とりあえず片っ端から魔法書を読んでいたら次々と「〜を習得しました」とテロップが流れるので、楽しくて半日を費やしていた。結構強くなったと思う
だけどそれ込みでも父に追いつけないので、父に剣の修行をお願いすることにした。
「父様。僕に剣術を教えてください!」
「まだお前は2歳だぞ?まだ先でも良いんじゃないか?」
「ダメです!それでは他の人達に遅れをとってしまいます。お願いします!」
頭を下げてお願いすると流石に了承してくれた。
「分かった。してやろう。でも泣き言を1回でも言ったら止めだからな。」
こうして父のスパルタ教育が始まった。