『初恋少女』
「ごめん。」
その顔を思い返しては、
少女は泣いていた。
学校からの帰り道、歩きなれた道
まるで水面を見ているかのよう、揺らぐ。
泣きたくないときほど涙は出るものだ。
少女の頬に、鼻に、口に、悲しみの雫が触れる。
私は泣いていた。
気づいたら、家路についていた。
「なんで泣いてたんだっけ」
ふと。あぁ、そうだ、初恋が終わったんだ。
「ごめん。」そう言われた。
涙をためて、教室を飛び出したのを思い出した。
「あぁ、、やっちゃった。」
明日から春休みじゃなかったらヤバかった。
初めて、初めて好きって思った。
こんなにも純粋な気持ちになったことはなかった。
顔も、声も、姿も、話し方も、笑顔も。
最初は会えるだけでよかった。
あいさつだけで。
話すだけで。
人間って欲張りだよね。
まさか告白しちゃうなんて。私も考えてなかったよ。
自分さえ制御できなくしちゃう君のこと
ほんのちょっとだけ憎たらしい。
ちょっと笑えてくるよ。
なんだ私、全然後悔してないじゃん。
「もう着いちゃった。」
少し急な坂の上の少女の家
少女は、思いっきり走って上った。
「あぁーーーーーーッ」
叫んだ。
赤くなった目から残った涙をこぼしながら。
これでもかというぐらい叫んだ。
瞬間、呼応するように風が吹いたのはきっと偶然じゃない。
少女が春を呼ぶ。
幸福の春を。